特集 ICカードと電子マネー
すべてが済む「この1枚で」はできるのか?
2013/6/3  1/3ページ

財布を開けてみよう。必ず1枚はICカードが入っているはずだ。キャッシュカード、クレジットカード、定期券、会員カード、ポイントカード、社員証、免許証、住基カード…。1枚のカードに重要情報を詰め、半永久的に動作するICチップが埋め込まれたこの「ICカード」は、現代のIT社会を象徴するプロダクトの1つだろう。

 ところが、溢れていないだろうか? 財布は太っていないだろうか? 本来「便利な1枚」となるはずのカードを複数枚、持ち歩いていないだろうか? 今回は、ICカードの歴史と「いつか1枚で済む日が来るのだろうか?」といった疑問を含む、今後の展望などについて調べてみた。

ICカードとFeliCaの歴史


 ICカードは大きく接触型と、非接触型に分かれている。接触型は主にキャッシュカードなどで利用されている。お手持ちのキャッシュカードを見ていただくと、表面に四角い金色の金属部分があるのがわかるだろうか? これがカードを挿入した機器と接触し、情報を交換するタイプなので接触型となる。しかし、この接触型はスマートなやり取りに難がある。現在、多くの鉄道・バスなどの公共交通機関や店頭で電子決済を行うICカードは、金属端子を接触させたりしない。読みとりを行う専用の機器に近づけるだけで情報を交換できる「非接触型」のICカードが利用されている。


 そして、この非接触型ICカードのうち、国内を主に使われている通信技術がソニーの開発した「FeliCa」だ。免許証や住民基本台帳カードなど、国側が運営しているものを除き、民間のICカードの通信技術はほぼFeliCa方式が利用されている。


 FeliCaは、1980年代後半に最初、物流タグ用の非接触通信技術としてソニーが開発を開始した。ところが試算をしてみたところ、タグ1つの値段が1000円以上になり、タグとしては非常に高価なものとなってしまうことが判明した。そのため、ソニーはそれまでの物流タグという路線を改めるべく、1988年、次世代型の改札を研究していた鉄道総合技術研究所(鉄道総研)に、この非接触通信技術を使った新型改札の共同開発を持ちかけた。

ソニー FeliCa事業部副事業部長 坂本和之氏
ソニー FeliCa事業部副事業部長 坂本和之氏

 この時、考えられていた使用方法は「いまのように『かざして使う』ものではなく『改札に近づくだけで自動的にゲートが開く』という方法を想定していました」(ソニー FeliCa事業部副事業部長 坂本和之氏)。そのため、仕様としては2.4GHzの周波帯を使い、カードにバッテリーを積み、通信距離は30センチほどというスペックで開発が進められていた。ところが、1990年に鉄道総研との共同開発とは別に、東日本旅客鉄道(JR東日本)が磁気式の切符、イオカードなどに代表される「磁気カード」を採用。自動改札に挿入して、読みとる方式を採用した。


 再び「非接触通信技術」の開発は宙に浮いたが、今度は香港で公共交通システムに、非接触の通信技術を導入する話があり、香港の鉄道会社システム入札に向けて開発を開始する。香港の鉄道側の条件は「通信距離10センチ」「バッテリーなし」。そのため、これまでの「2.4GHz帯」「バッテリーあり」「通信距離30センチ」を改め、電波を受け取ることで発電ができる「13.56MHz帯」を使用することで「バッテリーの搭載なし」という要件を満たした。

FeliCaによる非接触通信が行えるICカードの内部構造
FeliCaによる非接触通信が行えるICカードの内部構造

 こうして1997年、香港の交通用ICカード「オクトパスカード」として採用され、非接触通信技術は約10年の潜伏期間を乗り越え、日の目をみることとなる。2001年になると磁気カードのさらに次世代の改札用ICカード「Suica」としてJR東日本に採用され、その後は国内の様々なICカードを決済手段とした主に電子マネー向けの非接触通信技術として採用されていく。採用後も改札用のみだったSuicaは店舗でも使えるなどかなり幅広く利用できるようになり、ユーザの気がつかない間に利便性を計る改良が続けられている。

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