特集 ICカードと電子マネー
すべてが済む「この1枚で」はできるのか?
2013/6/3  3/3ページ

今後は統一されるのか?


 こうして様々な分野にICカードが利用されるようになり、財布の中には、ICカードがどんどん増えている方も多いのではなかろうか。「同じFeliCaというハードウェアを使っているんだから統一できないものなのか?」そういう疑問を抱く方もいるかもしれない。


 ここ数年、ICカードを使った電子マネーの市場は伸びてきており、決済額は数兆円規模になっている。しかし、同じようにカードで金銭を取り扱う「クレジットカード」と比較するとその業界規模(約70兆円)には遠く届かない。ある業界関係者は「クレジットカードがどの店舗でも大抵の会社が使えるのに比べて、電子マネーは使える店舗が分けられていることがネックになっている」と話す。「あらゆる店舗であらゆる電子マネーを使えるようになる」。そういうことも業界規模の伸長を考えれば、将来、規模拡大の延長線上にぼんやりと構想としてはあるようだが、確定事項としてはどの発行元からも進んでいないのが現実のようだ。


 JR東日本の発行する「Suica」は、ICカードに蓄えられている電子マネーによる、駅ビル内での店舗利用、全国展開しているコンビニエンスストアなどでの利用ができるようになっている。2013年3月には全国に展開している10種のICカードによる相互利用サービスが開始され、「Kitaca」(JR北海道)、「TOICA」(JR東海)、「ICOCA」(JR西日本)、「SUGOCA」(JR九州)、「PASMO」(首都圏の交通各社)、「manaca」(名鉄・名古屋市交通局)、「nimoca」(西日本鉄道)、「はやかけん」(福岡市交通局)、そして関西圏のポストペイ(後払い)式ICカード「PiTaPa」との間で相互利用が可能になった。

相互サービス開始により店舗数は20万店近い。PiTaPaは店舗の相互利用ができないので含んでいない
相互サービス開始により店舗数は20万店近い。PiTaPaは店舗の相互利用ができないので含んでいない

 相互利用サービスの範囲内はシームレスな利用が可能であり、乗車券としての機能だけではなく、電子マネーとしての機能も相互利用できるようになっている。例えばSuicaで出張先の大阪の売店で買うことも、Kitacaで旅行先の福岡の駅ナカでお土産を買うこともできる。ただしPiTaPaは、ポストペイ式のため、電子マネーとしては相互利用の対象外となっている。


 Suicaは電子マネーの利用と交通利用が両方可能であることで、シェアはかなり広いと言えるだろう。「Suica機能を搭載したビューカードや携帯電話やスマホでSuicaサービスを提供するモバイルSuicaなどもございますし、JR東日本としてはSuicaのさらなるサービスの向上を目指しております」(前出の折笠氏)。セブンアンドアイホールディングスではnanacoの普及について「まずはまだ利用が出来ないグループ内や、電子マネーの利点が享受しやすい、例えばスキー場などでの広がりを考えています」(広報センター)と話す。


 いずれにしてもシェアは拡大し続けているが、まだ「現状では足場を固めつつ、少しづつ次のステップへ」という段階にいるようだ。残念ながら「これ1枚ですべてが済む」というICカードの登場にはまだ時間がかかりそうだ。膨れ上がる枚数を少なくするためには、現状自分が使うだろう範囲の1枚を吟味するしかない。


 ただ将来ICカードは、カードである必要もなくなるかもしれない。


 こうした電子マネー・ICカードの核となっている「FeliCa」技術は飽くまで非接触の通信技術や、それに搭載されるプロトコルなどの総称であり、決してICカードの利用に限定された技術ではない。事実2004年には携帯電話に搭載された「おサイフケータイ」の機能もこのFeliCa技術によるものだ。FeliCa開発元であるソニーも、ワンタッチによる認証や通信の手段として開発しているため、ICカードに縛られない幅広い用途を想定しているようだ。もしかしたら、いまICカードとそれに搭載する電子マネーして使われているものは、近い将来もはやカードですらない、全く別の形として提供される未来も見える。

(井上宇紀)

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