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社会構造とコミュニケーション
2012/5/21  2/3ページ

 立正大学心理学部の西田公昭教授は「TwitterなどのSNSにおいて、自分のつぶやきがどの範囲にまで情報が広がるのか、というリアリティを持っていない」と心理的な背景について説明した。多くの安易なつぶやきがされる原因は、書きこみが全世界に向かって公開されていることに書き込む本人が“ピンと”きておらず、せいぜいフォロワー内の仲間内のチャット程度の感覚で書きこんでいることにある場合が多いようだ。そもそも発言が常に注目される有名人でもない限り、一般人が、自分の発言が他人に知られることに鈍感なことはめずらしくない。


 「6次の隔たり」と呼ばれるものがある。知り合いの知り合い、と人間関係をつなげていくと、6人目で必ず世界中の人と繋がることができる、という説だ。このように人間関係は、人間が考えているよりも狭く、ましてや「知り合いの知り合い」を辿ることが容易なSNSのようなツールの発明で、人間関係はより狭くなっており、情報の拡散がより容易になっている。さらには、トラブルになるような発言をしない限りその広さを実感する機会はまずないため「しまった」となって初めてそれに気がつくのだ。


 また西田教授は「そういうきわどいネタほど面白いので、周りも求める。周りに求められて、ついつい言ってしまう」とも話す。「エキセントリック」「特徴的な」「勇ましい」「非常にクリティカルでリスキー」な意見は注目を浴びやすい。橋元教授が述べていたように、SNSの魅力のひとつに「注目を浴びやすい」という面があり、それを望む利用者の発言は極端なものにシフトする傾向にあることが、これら失言の原因となっている。


 橋元教授は、ほかにSNSでのコミュニケーションの特徴に「エコーチェンバー現象」というものを挙げている。エコーチェンバー現象とは、人は自分の考えることと同じもの、似たもの、賛同できると言う人にアクセスする傾向があるため、結局自分が興味を持つ範囲、考え方が同じ自分が賛同する範囲においての情報共有になるということ。SNSは自分と似た考え同士で集合することが容易なため、その傾向を助長する。


 こうして見てみると、SNSの導入は利便性や発言力において既存のコミュニケーション手段に勝る一面を持つ一方で、意見が偏りやすい、極端になりやすいという傾向がわかってきた。

根底には「コミュニケーション手段」という原点があるため、SNSはIT技術でありながらその解説には様々な言葉を尽くす必要がある(橋元教授の資料を基に作成)
根底には「コミュニケーション手段」という原点があるため、SNSはIT技術でありながらその解説には様々な言葉を尽くす必要がある(橋元教授の資料を基に作成)

マスメディアとの対比


 SNSはしばしば「ソーシャルメディア」とも呼ばれ、テレビ、新聞といった「マスメディア」と比較の対象にされる。橋元教授は「リーチ」「コンテンツへの理解度」「情報の責任の所在」の観点から、双方を比較している。「ソーシャルメディア」と「マスメディア」としての相違点について比較してみよう。


 まずは、ある特定の人物に届くかどうかという「リーチ」がどの程度か。視聴数で比較をすると、ソーシャルメディアを利用している人数は現在日本国内では2000万人程度。テレビの視聴率10%は500万世帯に相当し、現在の全国平均世帯数は2.5人程度であることを考えると、世帯全員がテレビを見ていたとして視聴率10%の視聴人数は1250万人になる。


 またテレビが即時1対多の一方的な放送であるのに対して、ソーシャルメディアはひとつの発信からグリッド的に拡散していく。結果的に発信した後も拡散を続ける。もちろんSNSの情報の接し方とマスメディアでの情報の接し方はかなり異なるため、単純な比較は難しいが、ソーシャルメディアのリーチが、マスメディアと比較してそん色がない程になっているのは確かなようだ。


 ひとつのコンテンツに対する「理解度」に関しても、マスメディアはコンテンツが散漫で見逃される場合や、仮に見ていても「ながら見」つまりバックミュージック的に視聴するため、低い意識で情報に接している可能性が高い。ソーシャルメディアは関心のある人がアプローチするので深く理解された形で伝達する場合が多い。


 このようにリーチや理解度に関してはソーシャルメディアの方が優秀な面があるが、ソーシャルメディアは人から人へとリツイートの様な伝聞形式を取る為に、責任を拒否することができる「責任の所在」に関する課題点もある。発信主体があいまいというメディア特性により、情報に対しての責任の所在が不明確であり、情報の検証・把握が容易ではない。近年は検証サイトなどにより、情報の修正作業が行われ一時ほどデマばかりということもなくなったが、責任所在という意味では発信点がはっきりしているマスメディアの方が、はるかにアドバンテージがある。

>>Twitterでなぜ革命が起こるのか?

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