Bookshelf ~今月の本

『暗号解読』

暗号解読_著:サイモン・シン 訳:青木薫

著:サイモン・シン 訳:青木薫
新潮社

\2,730/510ページ
発売日:2001年7月31日

2012/3/5

暗号を知るための“水先案内書”


 『暗号解読』は、古代から現代まで、世界で使われてきた主な暗号を網羅したもの。同書は、『フェルマーの最終定理』で世界的なヒットを飛ばした英国BBCのジャーナリスト、サイモン・シン氏によるものだ。本書は連載コーナーの「暗号と暗号史」でお世話になった書籍でもある。

 古代ギリシャで使われていたというスキュタレー暗号から第2次世界大戦でドイツ軍が利用したことで有名になったエニグマ。それぞれの暗号のアルゴリズム(作り方)や利用者たちの逸話、アルゴリズムの解読方法を丹念に記している。現代暗号では開発者たちの声を織り交ぜながら、2000年以上にわたる暗号の歴史街道を案内してくれる。

 「ヨーロッパで作られた暗号の解読方法がイスラム圏で体系化されていた」「英国(イングランド)は500年以上も前からスパイ組織網を持っていた」「未だに解読されない『ビール暗号』」など、それぞれのエピソードは読む側を飽きさせない。

 物語は暗号のみで固められているわけではなく、「文字として書かれているが、誰も読み方が分からない」というところが暗号と共通している古代文字「ヒエログリフ」と「線文字B」の読解エピソードも挿入されている。

 翻訳者の青木薫氏は科学ジャンルを中心にした洋書を翻訳しているため、特に理論が込み入りがちな「暗号」をテーマにした本書も、分かりやすく物語の中へ入っていくことができる。

(中西 啓)