Bookshelf ~今月の本

『マネー・ボール』

マネー・ボール_著:マイケル・ルイス_訳:中山宥

著:マイケル・ルイス、訳:中山宥
RHブックス・プラス

\798/461ページ
発売日:2006年3月1日

2012/1/30

低予算で好成績!? 従来の概念を覆す敏腕GMに注目!


 低予算を強いられていた米国メジャーリーグ球団・アスレチックス。1997年にゼネラルマネジャーに就任したビリー・ビーンは、他球団が “ガラクタ”とみなす選手たちを独自の指標で評価し、低年俸で獲得。2年連続でシーズン100勝を達成するなど、金持ち球団に引けを取らない好成績に導いた。

 本書はビーンの手法を明らかにしたノンフィクションだ。選手を評価する主なデータは「出塁率」と「長打率」。四球は「シングルヒットと同じ」とする一方、犠牲バントは「安易にアウト1つを与える行為」、盗塁も「ギャンブル性が高い」と断じるなど、その考え方は従来の野球観を根底から覆すものだ。

 なぜビーンがそれに注目するに至ったのか、本書が綴る本人の過去にまで起因する理由はとても興味深い。新しい考え方を否定する球団関係者とのやり取りや、トレード交渉時の手に汗握るやり取りなどもスリリングに描かれる。野球好きにはもちろん、あらゆる場面で新しいことを始めようとする人にもお勧めしたい。

 アスレチックスの成功からこの手法は徐々に注目を集め、2011年には本書が映画化されるまでになった。ただ、資金力に優れる球団までこの考え方を用いるようになり、皮肉にもその後アスレチックスは低迷。近年では『マネー・ボール』時から発展させた手法で下位脱出を目指しているという。

(薬師寺敏雄)