Bookshelf ~今月の本

『ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録』

ザ・ラストバンカー_著:西川善文

著:西川善文
講談社

\1,680/317ページ
発売日:2011年10月14日

2012/2/27

戦後日本金融史と共に歩んだ“ラストバンカー”


 「日本株式会社の総力戦」と言われた安宅産業の破綻処理にはじまり、イトマン事件、巨額の不良債権処理、金融ビックバン、郵政民営化――。住友銀行、三井住友銀行の行員~頭取として、日本郵政社長としてこれらに関わってきたのが著者の西川善文氏だ。

 例えばイトマン事件をきっかけとする“住友銀行の天皇”・磯田一郎氏の追放劇。同事件を引き金に住友銀行のイメージが低下することを「許せない」と感じた西川氏は、磯田氏を退任させるべく画策する。一方で西川氏が同銀行に入行するきっかけを作ったのも磯田氏といい、本書ではそのあたりの微妙な心情も垣間見える。

 記憶に新しい郵政民営化を巡る政府・自民党とのやり取りも注目だ。当時の小泉純一郎首相に請われて日本郵政社長に就任した西川氏。住友銀行、三井住友銀行時代の手法で矢継ぎ早に改革案を打ち出すが、小泉氏が首相を退くと批判の声も噴出し始める。麻生太郎政権下で鳩山邦夫氏が総務大臣に就任すると、激しい攻防が展開される。

 西川氏は会合や会見でも原稿に頼らず、自分の言葉で考えを述べることが多かったという。大事にしていたのはスピード感と、自らが先頭に立つ姿勢だ。戦後日本金融史の重要局面を渡り歩いてきたと言ってよい氏の生き様は、トップの哲学を知る上でも、現代史を紐解く上でも、大変興味深い。

(薬師寺敏雄)