混み合う回線 スマホの未来
~普及するLTE対応端末とこれからの注目点~
石川温 ケータイ・ジャーナリスト
2012/2/23  1/3ページ

近年、急速に普及しているスマートフォン(スマホ)。その一方で第3世代移動通信システム回線の混雑が課題として指摘されている。米国ではふくれあがる通信容量への対抗策としてデータ通信料の定額制を見直す動きも出てきている。日本国内ではどのような動きがあるのか。「ケータイ・ジャーナリスト」として活躍されている石川温氏にお話を伺った。

スマートフォン普及で懸念されること

―2011年はiPhone4Sの発売、Androidを搭載したスマートフォンの普及など、「スマートフォン」がモバイルの主流として台頭してきました。しかしその普及の影響で第3世代移動通信の回線が混雑するという指摘もされています。

ケータイ・ジャーナリスト 石川温氏
ケータイ・ジャーナリスト 石川温氏

石川氏: 第3世代のモバイルでは「コンテンツやアプリケーションなどのファイルサイズはいくつにしましょう」といった契約規定がありました。しかしスマートフォン時代になって、キャリアの意思とは無関係にアプリが作成できるようになり、そういった規制は通用しなくなり、容量の大きなコンテンツ・アプリケーションが次々と作られました。さらにYouTubeの長時間にわたる視聴や、Twitter、フェイスブックなどのソーシャルサービスによって、キャリアのコントロールを超え、トラフィックが膨大になってきています。


 キャリアとしては、これだけ増えてきているトラフィックをどう処理するのか、非常に悩ましいような状況になってきています。各キャリアが、これからいかに知恵をしぼっていくか、重要になってくるでしょう。


―米国内では、2011年7月に大手通信会社AT&Tが「上位5%のヘビーユーザの通信回線を制限する」という発表を行うなど、定額制を見直すという動きも出てきています。

石川氏:現在の米国は、何ギガで何十ドルというような従量課金へ移行しつつあり、一部のヘビーユーザによるトラフィックの増大を防ごうとしています。日本でも上位数%のヘビーユーザの通信が全トラフィックの3~4割を占めており、問題が指摘されています。そういった問題を回避するために、定額制の存続は検討課題として挙がっています。


混雑するトラフィック

―トラフィックに関する問題は、あらかじめ懸念されていたのでしょうか。

石川氏:ソフトバンクは別として、NTTドコモやKDDIは当初スマートフォンに対して積極的ではありませんでした。それはスマートフォンを普及させるには、スマートフォンに対応できるネットワーク・システムの再構築が必要であり、それによりキャリアのコントロールを外れてしまう可能性を危惧していたということが背景にあります。


 しかしiPhoneの発売でスマートフォンブームに火が付き、NTTドコモやKDDIも追従する形でスマートフォンを導入せざるを得ませんでした。やむを得ない形でスマートフォンへ移行したため、当初の予想をはるかに超えたトラフィックが発生しています。2012年1月25日にはNTTドコモが大規模な通信障害を発生させるなど、インフラの整備が追い付いていない面を露呈しました。とはいえ、キャリアにとってユーザに浸透している「定額制」をなくすことは、ユーザが定額制のある他のキャリアに流れてしまう危険性もあります。そのため目下、各社様々な手段を使って何とか混雑を避けようと懸命になっているわけです。


―NTTドコモは2011年末頃より、「Xi(クロッシィ)」というサービス名で3.9世代(3.9G)回線と呼ばれている「LTE*1」と対応端末の普及に力を入れています。ところで3.9世代であるLTEの普及にあたり、第2世代(2G)から第3世代(3G)へ移行する際に起きたような混乱は予想されるのでしょうか。

石川氏:3Gから3.5G、3.9 Gに対応する流れとなりますが、スマートフォンの中にあるチップセット自体は3.5Gも3.9Gも同じですし、それこそ同じ基地局で対応していますので、2Gから3Gに行くときの混乱に比べるとスムーズにいくように思います。


―LTEの普及のエリアは、現状ではまだ都市部が中心なのでしょうか。

石川氏:NTTドコモのLTEは、政令指定都市でようやく整備している印象があります。全国的には2013年頃となる予定です。KDDIは2012年12月にサービスを始めるとは言っていますが、すでに相当数のLTE基地局を建てていて、準備万全な状態です。NTTドコモのサービス開始時よりも、広い範囲でのサービスが展開されるという話もあり、KDDIのサービスが開始すればNTTドコモも腰を据えて対応せざるをえない状態になってくるでしょう。


―さらに将来、3.9世代からLTE-Advanced*2WiMAX2*3という第4世代に移るときにはいかがでしょうか。

石川氏:同じように混乱する可能性もありますね。ただ2Gから3G以降のときの轍を踏まないようにスムーズに移行できるように準備は万端に整えてくるでしょう。またWiMAX2に関してはWiMAX*4との互換があり、そこは問題ないと思います。2Gから3Gに移るときは通信業界としては大変だった経験があったので、今後はそういったことが起きないように業界としてもかなり意識してくると思います。

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