非常時におけるインフラとしてのIT~震災でも“つぶれない”ITを築くために~ 西和彦 尚美学園大学大学院教授
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2011/5/26  1/3ページ

2011年3月11日に起きた東日本大震災でインターネットなどのインフラはどのように機能したのか。震災時のような非常時に、インフラとしてのITはどう機能する必要があるのか――ビル・ゲイツ氏などと一緒に米マイクロソフトの立ち上げに参画し、アスキーを創業するなど常にIT業界の第一線で活躍し、また教育者でもある尚美学園大学大学院教授の西和彦氏にお話を伺った。

インフラとして機能しなかったIT

―3月11日におきた東日本大震災において、インターネットに代表される「インフラとしてのIT」についてどのようなお考えをお持ちでしょうか?

尚美学園大学大学院教授 西和彦氏
尚美学園大学大学院教授 西和彦氏

西氏:まず、携帯電話の「電話機能」がいかに役に立たないかということを痛感させられました。震源地以外の東京でも繋がらなかったわけです。つまり、今の携帯電話のシステムというのは“みんなが同時に使うシステム”になっていないということです。さらに面白いことにはEメールは繋がっていた。ですから携帯電話ではなくて、「携帯Eメール機」になってしまっているわけです。


―携帯のEメールは一時繋がりにくかったこともあったようですが…。


西氏:それは単なるメールの送受信の遅い・速いの問題なので大した問題ではありません。メールについてはインターネットの自律システム(=AS:Autonomous System)が機能するようになっています。つまりインターネット全体を単一の経路制御システムで管理するには規模が大きすぎるために、効率的な管理をするよう、障害が発生してもAS内にとどめることができるのです。


 また、インターネットのバックボーン(大容量の基幹通信回線)というのは、メールセーフになっているので、どこかで送信が切れると必ずリルート(届け先のルートを変更)してくれる仕組みになっています。


被災地のITインフラの状況


 一方、地震で被災した地域に目を向けると、携帯電話の基地局が甚大な被害を受け、復旧が非常に大変でした。ただ、そのような状況においてもNTTドコモやauのような規模が非常に大きい企業は、何とか復旧を試みていました。おそらく非常用の基地局がけっこうあったのではないでしょうか。


 東北地方を中心にこれからもう1回インフラを作り直すことになりますが、それにしても電話の基地局が震災対応されていなかったということが、よくわかりました。


 インターネットについても、NTTやその他のインターネットキャリアがずっと繋がっていたのかは疑問です。インターネットはいわゆるネットワークの遮断に強いという歴史がありましたが、決してそうではなかった。東北におけるインターネットの幹線が動いていなかった。つまり今回の地震で、インフラの脆弱性というのが浮き彫りになったわけです。


 やはりインターネット回線のような非常に重要なものは、地震が来て電源がなくなっても1週間くらい独立して機能するような、そういうシステムを設計するべきだと思います。

>>非常時に必要なものとそうでないものとは?

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