連載 次の60年へ 躍動するテレビの変遷史

2014/10/2

第8回 衛星放送のデジタル化

ケーブルテレビが登場など、多チャンネル化へ大きく舵を切った日本のテレビ放送。テレビの軌跡を追う「躍動するテレビの変遷史」第8回は衛星放送のデジタル化に焦点を当てる。

デジタル化の利点


 前回、ケーブルテレビのデジタル化への動きに触れたが、日本の放送業界で「デジタル化」へ最初に舵を切ったのは、衛星放送だ。デジタル放送の大きな特長として「伝送する際の自由度が高い」ことが挙げられる。例えば地上波のアナログ放送では、送信先から受信先まで、送信時とほぼ同じ状態で動画データの伝送が行われる。そのため、大きい伝送容量に耐える回線の確保が必要となり、伝送手段を限定しなければならなかった。


 しかし、デジタル放送では動画を圧縮することでデータを小さくして伝送を行い、元の大きさに戻して動画を再生する。そのため、放送事業者側にとっては様々な伝送放送を選べるというメリットがあった。

放送局側や視聴者にとって大きな魅力があった衛星放送の
デジタル化。写真はBS・CSデジタル放送の受信アンテナ
放送局側や視聴者にとって大きな魅力があった衛星放送の デジタル化。写真はBS・CSデジタル放送の受信アンテナ

 衛星放送がデジタル化すれば、視聴者にとってもメリットがある。ハイビジョン画質で放送することができるために「高画質」であることはもちろん、5.1chサラウンドシステムの採用により、臨場感あふれる「高音質」が楽しめるのも大きな魅力となっていた。


CS放送のデジタル化


 デジタル化にいち早く対応したのはCS放送だ。1996年、日本初のCSデジタル放送「JスカイB」が2年以内に開始することが発表される。このJスカイBは外国資本・コンテンツメーカー・家電メーカー・民放局によって資本が構成されるという従来にない形態だった。


 さたに1996年6月に日本初のCSデジタル放送「パーフェクTV」の無料放送がスタート。同年10月の本放送の開始時に、映像を70チャンネル、音声103チャンネルの視聴を売りにする。さらに1996年10月には、CS放送の「ディレクTV」が、翌年秋にCSデジタル放送を開始すると発表。このディレクTVは、米国で720万世帯に普及したディレクTVとCCC(カルチャー・コンビニエンスクラブ)が筆頭株主になり三菱電機や松下電器などが資本参加した企業だ。


 しかし、当時はCSデジタル放送を視聴するための機材が高額であることと、「お金を払って見たい番組を見る」ことが目新しかったため、お茶の間への普及も難航。その影響などもあり、放送局の再編が行われる。パーフェクTVがJスカイBと合併し、1998 年に「スカイパーフェクTV」が誕生。また加入者獲得で伸び悩むディレクTVが終了し、その加入者をスカイパーフェクTVが引き継ぐなど、合従連衡が行われる。


 一方、2000年10月には110度衛星と呼ばれる通信衛星NSAT-110が打ち上げられ、2001年秋から「東経110度CSデジタル放送」が開始されている。


BS放送のデジタル化


 CS放送がデジタル化していく一方、BS放送も競うようにデジタル化していく。BSデジタル放送に対応した受信機の動作確認のため、2000年3月に沖縄サミットと高校野球(甲子園)、9月にシドニーオリンピックの実験放送が行われる。そして2000年12月、BSデジタル放送が開始した。このとき、無料放送の民放キー局系5社(ビーエス日本、ビーエス朝日、ビーエス・アイ、ビー・エス・ジャパン、ビーエスフジ)の5社、有料放送のWOWOWとスター・チャンネルの、計8社で放送を開始している。


 BSデジタル放送は前出の「高画質・高音質」の他、リモコンも利用できるデータ放送を売りにしていた。これまでテレビは「見る」だけだったが、「使う」ものとして注目を集める。電話回線とつなぐことで、情報のやりとりができる双方向性をもち、商品を発注できるなどのメリットがあった。


 またBSデジタル放送を視聴するには、BSチューナ―や専用のアンテナのほかにB-CASカードが必要だった。放送の受信確認や双方向サービスを行うため、共通のIC(集積回路)カードを差し込んで必要な情報処理を行うといったもの。このシステムはCAS(Conditional Access System)と呼ばれている。


 1999年10月には、家電メーカーと放送事業でBSデジタル放送普及連絡会議が設立される。ここでBSデジタル放送の普及の目標を「1000日で1000万世帯」と設定。家電メーカーもBSデジタル放送が見られるテレビ・チューナーの販売に力が入る。BSチューナー内蔵型テレビ(36インチ・57万円) を三洋電機が最初に発売。これに続いて東芝、松下電器などが発売する。こうしたテレビは、32インチで40万円~50万円の価格帯が当時は一般的だった。


 高画質、高音質に加え、データ放送を軸に視聴者の関心を集めた衛星放送のデジタル化。受信アンテナの出荷台数も、ほぼすべてのBSアンテナがデジタル放送に対応した1996年に114万台(単年)を記録。その後、なかなか出荷台数が伸び悩む時期もあったものの、2004年から徐々に出荷額が増加。2008年には単年で99万台、累計で2018万台を記録するなど、次第に家庭へと普及していく。

衛星アンテナの出荷台数の推移 単年・累積(出典・総務省)
衛星アンテナの出荷台数の推移 単年・累積(出典・総務省)

 デジタル化への対応で大きく飛躍した日本の衛星放送。そして「デジタル化」の波は地上波にも押し寄せていく。次回は地上波のデジタル化への動きを追う。

(山下雄太郎)

>>デジタル化の波は地上波にも


注釈

*:5.1chサラウンドシステム
前後左右に計4つ(4ch)、テレビに内蔵している、会話や主音性が中心のスピーカーが1つ、重低音再生用のウーハーが1つ(0.1ch)のスピーカーを設置するシステムのこと。アナログ放送では2チャンネルステレオまでが限界だった。

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