連載 次の60年へ 躍動するテレビの変遷史

2014/9/11

第7回 ケーブルテレビの展開

衛星を使った中継を活用し、大きな発展を遂げた日本のテレビ放送。テレビの軌跡を追う「躍動するテレビの変遷史」第7回は多チャンネル化時代の到来を印象付けたケーブルテレビ(CATV)の普及への取り組みを追う。

ケーブルテレビ登場


 「ハイビジョン」を武器に衛星放送の普及を推し進める日本の放送業界。これまで地上波のみだったチャンネルに衛星放送が新たに加わることで、「多チャンネル化」への階段を上り始めていた。その「多チャンネル化」の普及を後押しすることになったのは、ケーブルテレビ(CATV)の登場である。


 ケーブルテレビがまず普及したのは米国だ。米国では1941年に地上波テレビ放送が開始しているが、広大な国土のため地上波局がない地域も多かった。そうした地域でテレビ番組を視聴するため、ケーブルテレビ局が設立される。1950年代末にはMSO(Multiple System Operator:複数のケーブルテレビ局を所有する運営会社のこと)が誕生している。


 1960年代の後半から、米国ではケーブルテレビ局の買収・統合が行われるようになると、1980年代の後半には、米国内でのケーブルテレビの普及率が60%に近づき、次第に海外に新しい市場を求めるようになっていた。


 そこで日本にもケーブルテレビを運営するMSOが誕生する流れとなる。1995年1月、東芝、伊藤忠商事、タイム・ワーナー、USウエストの4社が、日本全国を対象とした初のケーブルテレビ運営会社(MSO)、タイタス・コミュニケーションを設立。さらに、同年、全米最大のMSOであるTCI(Telecommunications INC.)と住友商事が合弁会社を立ち上げ、積極的なM&Aを行い日本最大のケーブルテレビ局を設立する。それがジュピターテレコム(J:COM)だ。

ケーブルテレビ普及を後押ししたジュピターテレコムのセットトップボックス(受信機)
ケーブルテレビ普及を後押ししたジュピターテレコムの
セットトップボックス(受信機)

 この設立を後押ししたのは郵政省(現・総務省)が1993年12月に発表した「ケーブルテレビの発展に向けての施策」。加入者が伸び悩んでいたケーブルテレビの普及を目的とした規制緩和策だ。それまでの「事業主体は地元の企業を中核とする」とする通達などを廃止し、より広域の事業展開ができるようにした。またケーブルテレビ事業者が通信事業に参入することを「現行の法律で可能」とし、事業者にケーブルテレビの伝送路を利用した通信事業への進出を促した。


進んだ規制緩和


 この規制緩和は細川護煕内閣の時に加速する。1994年6月には放送法が改正され、映像を利用して海外へ情報を発信する制度が整備された。ケーブルテレビについても1999年に外資規制(外国人株式保有規制)を完全撤廃するなど、大幅な規制緩和が行われる。


 こうした規制緩和には「通信・放送が将来の経済発展につながる重要な産業」として位置付けられたという背景がある。結果、CS放送やケーブルテレビなど新しい放送メディアが飛躍するきっかけとなる。


 もともと日本で最初に多チャンネルサービスを行ったのは「多摩ケーブルネットワーク」(1987年4月)。その後、同様の都市型ケーブルテレビ局の開局が続くものの、加入者数の伸び悩みによって経営不振に陥る局も多かった。理由としては既存の局が依然として地元資本中心で構成されており、合併には消極的だったことが挙げられる。そのため、ケーブルテレビ局の事業対象地域も広がらないままだった。規制緩和にはこうした状況を打開する効果もあった。


普及にむけた展開


 その後ケーブルテレビの伝送路を利用したインターネットサービスの開始が普及への追い風となる。ケーブルインターネットは米国と同時期の1996年、武蔵野三鷹ケーブルテレビによって日本でも初めて開始されている。以降、インターネットへの接続サービスを行うケーブルテレビ事業者が増加。1999年3月から2000年3月までの1年間で、実施事業者は90社にまで増え、加入者数も約21万6000人にまで伸びる。

自主放送を行うケーブルテレビの加入世帯数
(出典:郵政省発表の資料より)
自主放送を行うケーブルテレビの加入世帯数の推移
(出典:郵政省発表の資料より)

 さらに普及へのカギとなったのは「ケーブルテレビのデジタル化」だ。1996年6月、郵政省における「放送高度化ビジョン審議会」が開かれ、ケーブルテレビも衛星放送と同じように「デジタル化」していくことが示される。そして1998年には鹿児島有線テレビジョンが一部デジタル化による配信を行うようになる。


 この「デジタル化」は放送業界の大きな発展に欠かせないキーワードとなる。次回はデジタル化への進展に触れていく。

(山下雄太郎)

>>デジタル化への移行が加速


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