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クラウドコンピューティングとIPv6の展望について講演

 2009年度2回目の「関東テレコム講演会」(総務省関東総合通信局、テレコムサービス協会関東支部主催)が10月22日、東京都港区のメルパルク東京で開かれた。
 情報通信関連企業の関係者ら112人が参加。企業等で急速に導入が進むクラウドコンピューティング(クラウド)と、普及促進の動きが進むIPv6の今後の展望について、有識者2氏が講演した。

江崎氏は環境問題などを絡めながらクラウドの展望を語った
江崎氏は環境問題などを絡めながらクラウドの展望を語った
 東京大学大学院情報理工学系研究科教授の江崎浩氏は「クラウドコンピューティングの動向と今後のインパクト」と題し、CO2削減などの環境問題と絡めながらクラウドについて語った。

 江崎氏は、クラウドの急速な普及で、クラウド事業者などがサーバを収容するデータセンターの役割がますます重要になってくると指摘。情報セキュリティや経営の効率化という面に加え、環境やエネルギー対策の面でもデータセンターの必要性が増してくると力説した。

 環境・エネルギー面についての説明で同氏はまず、オフィス内の事務フロアにサーバを設置している場合、夜間・休日に人がいないのに空調を稼働させたり、送風経路や窓などに設計上の問題があったりする影響で、空調効率が悪くなることを指摘した。
 これがデータセンターだと「サーバ収容専用の建物であり、こうした問題を解決して設計されるので、最も少ないエネルギーでサーバを稼働できる」とする見解を披露。
 同様に、旧式で空調効率の悪いオフィスから、サーバを最新の空調機器を備えたデータセンターに移したり、個々の企業が別々に所有していたサーバがクラウドによってデータセンターに集約化されたりすることでも、大幅な電力削減が期待できるとする考えを示した。

 その上で江崎氏は、クラウドの環境面での方向性について「快適で効率的な社会基盤を構築することで、結果的に省エネを実現する。スマートな都市、スマートな地球の設計と構築にとって、データセンターは必須のコンポーネント(構成要素)だ」と力を込めた。
IPv6の普及促進には関係者全体での対応が重要と訴えた荒野氏
IPv6の普及促進には関係者全体での対応が重要と訴えた荒野氏
 インテック・ネットコア社長でIPv6普及・高度化推進協議会常務理事の荒野高志氏は、2011年中にもインターネットプロトコル「IPv4」のアドレスが枯渇するとされる問題と、次の規格「IPv6」の展望について講演した。

 荒野氏はIPv4アドレス枯渇時に発生する事態について「今までのインターネットが動作しなくなるわけではないが、ネットの拡張はできなくなる」と指摘。「ISP(インターネット・サービス・プロバイダ)側の立場から言うと『顧客をどのアドレスに収容するのか?』ということになり、パン屋が小麦を手に入れられなくなるのと一緒だ。リスク管理の問題と捉えた対策が必要になる」と訴えた。

 枯渇対策については、1.IPv4アドレスの回収・再利用、2.IPv4アドレスの節約、3.IPv6の導入――の3点に言及した。  ただ、IPv4アドレスの回収・再利用については「今後の需要をすべてまかなえないのは明らか」、節約についても「セキュリティの問題がありコストがかかる」とし、一時的な解決にとどまると話す。
 そのためIPv6導入が「長期的には最も有望」としたものの、事業者の対応に温度差が生じることでコストが高くなるという問題や、IPv4とIPv6が混在することでの相互接続性が喪失するという、技術面での課題なども語った。

 その上で荒野氏は「公共的色彩を持つ問題なので、皆で取り組まなければならない」と業界を挙げた対応の必要性を主張。「ネットワークの対応がきちんとしないと、その上で展開されるビジネスが崩壊するリスクがある。事業者の自主性だけにまかせるべきではない」と危機感を露わにした。

 クラウドの導入では経営の効率化という面からの議論が多いが、環境面から捉えた考察についても、今後注目してみたい。IPv6への移行については、円滑に進むよう業界を挙げた努力を期待したい。


「平成21年度最初の関東テレコム講演会」セミナーレポートはこちら



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:IPv4アドレス枯渇問題とIPv6
IPv4の空間にはIPアドレスが2の32乗=約43億存在するが、2009年2月の時点で5億4千万程度しか在庫がない。近年のIPアドレス消費の状況から2011年~2013年ごろに、なくなってしまうことが予想されている。IPv6のアドレスは2の128乗=約340澗(かん、1兆の1兆倍の340兆倍)と実質無限にあり、PCだけではなく家電などにも無数にアドレスを割り振ることが可能になる。


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