住基カードの利活用推進について講演:イベント・セミナーレポート:HH News & Reports:ハミングヘッズ

ITをもっと身近に。新しい形のネットメディア

- Home > コラム > イベント・セミナーレポート > 住基カードの利活用推進について講演
 コラムトップページ
 インタビュー記事 ▼
 イベント・セミナーレポート ▼
公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

セミナーレポート
住基カードの利活用推進について講演

 2003年8月に交付が始まり、全国の市区町村にて徐々に多目的利用が開始され始めている住民基本台帳カード(住基カード)。全国の市区町村でその利活用を進め、さらなる普及促進を図ることを目的とした「住民基本台帳カード利活用推進セミナー」が10月13日、東京都千代田区の全国町村議員会館で開かれた。
 同セミナーは総務省市町村課と地方自治情報センター(LASDEC)が主催し、今回を含め全国6会場で開催。東京会場には地方自治体、民間企業などから202人が出席し、今年度中に先行実施団体で始まるコンビニエンスストアでの証明書交付(コンビニ交付)や、住基カードの将来像などに関する講演に耳を傾けた。

 コンビニ交付については、LASDEC研究開発部の井上賀博上席研究員が講演し、交付までの流れやシステム面での工夫について説明した。
 それによれば、コンビニ交付は2009年度中にまず3つの自治体が参加して関東地方で開始され、2010年5月頃にはこの3自治体の証明書を全国で受け取ることを可能にする計画となっている。
コンビニエンスストアでの証明書交付サービスの概要を説明する井上氏
コンビニエンスストアでの証明書交付サービスの概要を説明する井上氏
 住民は店内のキオスク端末*1で、住基カードを利用して発行を申し込む。新たに設置される証明書交付センターを経て、全地方公共団体を結ぶ既設ネットワーク「LG-WAN」を介して該当する市区町村に申請が送られる。
 自治体側はPDF形式で証明書を作成し、同センター経由でデータを送信。住民がキオスク端末で住民票などの証明書を受け取る仕組みになっている。

 偽造防止対策としては、証明書交付センター内のサーバで証明書の裏面に改ざん防止処理を施す。裏面をスキャンしてデータを同センターに送ることで、素早く証明書の真贋を示す仕組みも構築する。

 同センターは当面の間、LASDECが運営する。井上氏は「うれしい悲鳴が上がるくらい、多くの団体に参加してほしい」と会場に呼び掛けた。

 総務省市町村課の山崎敏明理事官は、コンビニ側へ支払う委託料を1件あたり120円とし、2010年度と2011年度に市町村が負担する金額を、規模に応じて年間100万円~1000万円に設定する検討案を紹介。この負担金はコンビニ側の回線経費やシステムの保守費などに充てられることなども述べた。

 このほか、基調講演に立ったLASDECの小室裕一理事長は国の政策など最近の動向を報告。国の行政手続き時に住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)で本人確認を行った件数が、2008年度に約1億1000万件を超えたことや、住基ネットの適用対象に外国人を加えることなどを盛り込んだ法改正が行われたことなども挙げ「住基ネットは新たなステージに入った」と強調した。
大山氏は住基カードと、国が導入を検討している社会保障カード(仮称)の一体化の実現を訴えた
大山氏は住基カードと、国が導入を検討している社会保障カード(仮称)の一体化の実現を訴えた
 東京工業大学像情報工学研究施設の大山永昭教授は、国が導入を目指す国民電子私書箱(仮称)*2社会保障カード(仮称)*3の検討状況に言及。電子私書箱で住基カードの利用が想定されていることから「住基カードと社会保障カードが一体化すれば、経費削減とともにより便利なカードが実現すると期待される」と力を込めた。

 また、那覇市情報政策課の名嘉元裕課長が、同市と隣の南風原(はえばる)町で2006年度に始まった広域自動交付機による証明書交付サービスの事例を紹介。交付機の利用がすべての証明書発行件数のうち10%程度にとどまるという状況を示した上で、住基カード交付のさらなる促進策や、発行手数料の取り扱いを参加団体間でどう定めるかなどが課題になっているとした。

 身近な場所で公的証明書を入手できるようになれば、自治体の住民サービスは大きく向上する。コンビニでの交付サービスが円滑にスタートし、多くの自治体が参加することを期待したい。

低い交付率にとどまった住基カードを解説(2015/1/5)



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:キオスク端末
タッチパネルなどを簡単に操作することで、必要な情報にアクセスしたり、様々なサービスを利用したりできる端末装置。

*2:国民電子私書箱(仮称)
引っ越しや退職、出産などのライフイベントや医療福祉にかかわる個人情報の入手、管理を一元的に行える公的機関提供のネット上の専用口座。IT分野の中長期戦略を掲げた国の「i-Japan戦略2015」には、2013年度までの整備を目指すことが盛り込まれている。

*3:社会保障カード(仮称)
年金手帳、健康保険証、介護保険証を集約したICカードのこと。事務処理手続きの効率化促進や、自身の健康情報やレセプト、年金記録といった情報基盤のアクセス・管理をするキーカードとして活用が期待されている。厚生労働省は、2011年度の導入を目指して検討を進めている。


お問い合わせ

  コラムトップページへ▲