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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
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セミナーレポート
日韓の電子商取引事情について関係者が講演

 韓国の電子商取引やID管理の現状はどのようになっているのか。2009年7月17日、東京都港区の機械振興会館で「日韓デジタルエコノミー推進協議会フォーラム」が開催され、韓国政府関係者などが解説を行った。

 第1部のテーマ「サプライチェーン高度化への取り組み」では、日本の経済産業省に当たる韓国知識経済部の情報通信活用課課長・キム・ジョンファ氏が「韓国のRFID/USN政策及び産業への適用状況」と題して講演を行った。
キム・ジョンファ氏は韓国内のRFID市場の見通しを語った
キム・ジョンファ氏は韓国内のRFID市場の見通しを語った
 同氏はまず、現在使用されているバーコードに代わる商品識別・管理技術のRFID*1、そしてUSN*2 に関する韓国国内のマーケット事情について言及した。Tマネー*3などを含めたRFID、USNそれぞれの市場規模は、2006年は2816億ウォン(1円=12ウォン、約218億円。レートは2009年8月現在)だったのが、2008年にはほぼ倍の5547億ウォン(約429億円)に成長しているという。

 しかしジョンファ氏は、「バーコードなど既存のシステムの交換による初期投資のコストの高さがRFID、USN市場拡大の足かせになっている。また、RFID導入事例が交通カード、在庫把握、立ち入り管理などに限られており、わかりやすい導入効果を示せていない」と問題点を指摘。RFID・USN普及に向け、その導入による有効性を実証することが当面の課題であるとした。

 なお質疑応答では、「RFIDが法律で義務付けられていることはあるか」との問いに対し、ジョンファ氏は「法律で政府がRFIDを強制しているということはない。ただ、医薬品に関しては生産・流通経路など詳細にわたり、決められたルールに基づいて管理している。こうした商品を安全に管理する際、トレーサビリティなどにおいてRFIDが便利である、と企業が認識すればRFIDの市場は拡大していくだろう」と述べている。
韓国の住民登録番号について解説するキム・ジンウォン氏
韓国の住民登録番号について解説するキム・ジンウォン氏
 続いて第2部の「eIDと電子署名」では、韓国で幅広く使用されている住民登録番号について韓国情報保護振興院(KISA、韓国情報通信部の外郭団体)のキム・ジンウォン氏が講演を行った。

 韓国では1960年代に全国民へ住民登録番号が割り振られ、1990年以降段階的に納税、自動車登録、健康保険などの公共サービスのほか、民間でもマイレージサービスや成人認証の手段などに活用されてきた。

 しかし、2006年に住民登録番号などの個人情報が中国人ハッカーにより流出するなどの事件が相次いだ。生年月日や出生地、性別などの個人情報が組み込まれた住民登録番号の漏洩は、漏洩後の二次被害が懸念される。
業界関係者らが、韓国の電子取引事情に耳を傾けた
業界関係者らが、韓国の電子取引事情に耳を傾けた
 こうした問題点を解決するため、オンライン上での住民登録番号の代替番号として、2006年に韓国情報通信部がi-PINの導入を始めた。i-PINは、金融機関など韓国政府が認めた「本人確認機関」が、申請者の身元を確認して発行される。2009年3月時点でのi-PIN発行数は約110万件、公共・民間を含めたi-PINを導入しているサイトは1000件となっている。同氏は2015年までにネット上で住民登録番号による認証が不要になるよう、推進していく考えを示した。

 電子商取引への取り組みや住民登録番号の利便性とデメリットなど、普段耳にすることがない韓国のIT事情を垣間見ることができた貴重な講演であった。

※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:RFID(Radio Frequency IDentification)
無線を利用した非接触の自動認識技術の総称。電子タグはRFIDを利用した製品。

*2:USN(Ubiquitous Sensor Network)
USNは、衣料品や食品などに電子タグをつけて、ネットワークを通じてリアルタイムに情報を管理・活用する技術のこと。在宅患者の健康管理から、家電のコントロール、農作物の施設管理などへの活用が考えられている。

*3:Tマネー
2003年から韓国国内で流通が始まった電子マネー。当初は交通機関のみ利用可能だったが、加盟しているコンビニエンスストアなどでも使用できるようになった。


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