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スマートグリッドの推進に関するワークショップが開催

 IT技術を活用して電力需要の情報を双方向通信で把握し需給バランスを整える次世代型電力供給システム「スマートグリッド」――。太陽光など再生可能エネルギー*1の大規模導入時に必要とされるというこのシステムの推進について意見を交わす「スマートグリッドワークショップ2009 in JAPAN」が9月15日、東京都江東区の東京ビッグサイトで開催された。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が主催。電力関連企業や研究機関などから約500人が集まる中、国内外の現状、最新の動向と今後の方向性、日米共同研究の概要などをテーマに、NEDO関係者や研究者らが熱弁を振るった。

ワークショップには約500人が来場し、熱心に聴講した
ワークショップには約500人が来場し、熱心に聴講した
 東京大学大学院新領域創成科学研究科の横山明彦教授は、スマートグリッドの共通概念について「従来からの集中型電源*2 と送電系統との一体運用に加え、情報通信技術の活用により、太陽光発電などの分散型電源*2や需要家(企業や消費者など電気を利用する側)の情報を統合・活用して、高効率・高品質・高信頼度の電力供給システム実現を目指すもの」と説明した。
 現状については、欧米では電力ネットワークが複雑で、インフラ整備が不十分であるため、安定した供給システムを作るべく、そのニーズが高まっていると指摘。
 日本では電力供給の安定性は世界最高水準であるものの、再生可能エネルギーの導入が進んだ際に、既存の火力、水力発電などとの間で発電量のバランスを調整したり、周波数や電圧を制御したりする必要がある。また、電気自動車やヒートポンプへの電力供給量を調整する際に、どのように相互に情報をやり取りするかが課題となるため、スマートグリッドの整備を進める必要があると述べた。

“日本型”のスマートグリッド構築の必要性を訴えた横山氏
“日本型”のスマートグリッド構築の必要性を訴えた横山氏
 今後の留意点について横山氏は「欧米と異なる日本独自のスマートグリッドを構築しなければならない。事業者と需要家の双方の便益が最大化するようなシステムを目指すべき」と主張。
 具体的な研究内容として、天候や曜日などで需給バランスが大きく変化する太陽光発電の出力制御や、余剰電力の吸収・放出を調整するシステム、火力発電などによるバックアップの仕組みづくりなどを挙げた。

 電力中央研究所システム技術研究所の栗原郁夫所長も「地球温暖化問題への対応、そのための電力利用の高度化・効率化、設備の高経年化などを考えると、次世代の電力システムに向けた取り組みが望まれる」と強調した。
 NEDO新エネルギー技術開発部の市村知也部長は、ここ数年のNEDOと企業、大学などとの共同研究の成果を紹介。
 その上で「世界的な電力系統技術のパラダイムシフト(考え方・価値観の劇的変化)の象徴的キーワードがスマートグリッド。これまでの研究を通じて日本の企業や研究者は経験・技術を得ているので、蓄積を生かして世界展開へ勝負すべき」と力を込めた。

 スマートグリッドの国際標準化に関する話もあり、経済産業省基準認証政策課の中西宏典課長は欧米の動向に触れながら「標準化は国や企業間で技術を争う部分と協調していく部分を分けることであり、日本企業の優れた技術が効果的に海外市場に進出できるよう、戦略的に対応することが重要」と力説。
 さらに「各国が動き始める中、わが国も日本企業の国際事業展開を推進する競争環境を整備するため、積極的に国際標準化に取り組むべき」との考えを示した。

 このほか、米国・ニューメキシコ州がNEDOの協力も得て大規模に行っているスマートグリッド研究の概要を同州政府関係者が披露し、日本とのさらなる関係構築にも期待を寄せた。

 国内では太陽光発電の導入を2020年までに2005年段階の20倍にあたる2800万キロワットまで進める目標が掲げられており、産学連携のスマートグリッド実証研究も2010年から始まる予定となっている。再生可能エネルギーの導入が円滑に進み、一般消費者にとってもメリットが高い仕組みとなるような研究の進展を期待したい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*1:再生可能エネルギー
太陽光や風力、地熱、バイオマスなど自然界に存在し、ほぼ永続的に得られるエネルギーのこと。

*2:集中型電源と分散型電源
火力、水力、原子力発電所といった大規模施設で発電を行うのが集中型電源。日本国内ではほとんどが集中型電源から電力が供給されているが、集中型で石油に頼らない発電を目指そうとする際、原子力に頼る以外は難しいとされている。分散型電源は、再生可能エネルギーや燃料電池などを用いて需要地近くに小規模な施設を多く設けて発電するもので、環境面などから注目されているが、本格導入するためには安定した電力供給システムを構築することが課題となっている。


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