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公認会計士松澤大之
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セミナーレポート
情報セキュリティ人材の育成について講演

 情報セキュリティに関する人材育成やキャリアアップ、マネジメントなどのあり方を考える「情報セキュリティ人財育成サミット」が8月20日、横浜市神奈川区の情報セキュリティ大学院大学で開かれた。

定員いっぱいとなる160人が参加して開催された
定員いっぱいとなる160人が参加して開催された
「人材は財産」との考えから「人財育成サミット」と名付けられた同イベントは、同大学院と情報セキュリティ教育事業者連絡会(ISEPA)が共催。企業などの情報の安全管理、リスクマネジメント担当者ら160人を前に、産学官の有識者がそれぞれの立場から熱弁を振るい、意見を交わした。

 基調講演には、内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)情報セキュリティ補佐官の山口英・奈良先端科学技術大学院大学教授が登壇し、産学官の人材育成の現状を説明した上で、問題点を投げかけた。

今回は官の立場から人材育成の問題点を指摘した山口氏
今回は官の立場から人材育成の問題点を指摘した山口氏
 山口氏は「企業が人材に対して重視するのはコミュニケーション能力や熱意、チャレンジ精神」などと述べ、大学等で培われる専門性の優先度が企業にとって低い点を問題視した。「大学で学んだスキルについて、企業はまったく期待を抱いていない。大学の先生が考えるプライオリティ(優先度)と企業のプライオリティも合致しておらず、何とかしなければならない」とミスマッチ解消の必要性を訴えた。

 企業内での情報セキュリティ人材育成については、教育内容を考える前に内製化や外注の是非を検討する「業務の仕訳」の必要性を強調した。
 理由については「仕訳を考えないまま業務を縮小すると社内にスキルを持つ人がいなくなり、業務を外注してしまうとノウハウが外に漏れて社内から管理できなくなる恐れがある」などと説明。仕訳を考えることで、社内で誰がどのようなスキルを持っているか、磨くべきスキルは何なのかがわかるようになるという考えを述べた。

 この後、「マネージメントトラック」「テクニカルトラック」「人財育成トラック」の3分野に分かれ、講演やパネルディスカッションが開催された。

 人財育成トラックでは、ISEPAの長谷川長一運営委員が講演し、情報セキュリティ人材に求められる能力について「業務に必要な知識、品質の高いサービスを提供できる技術、役割にあった業務経験の3つ」とする持論を披露。
 その上で「知識だけでなく技術や経験を教育する人も育てないといけない。そのためには多くの経験、ノウハウが必要であるが、個々の組織だけでは限界がある。そこで産学連携が必要になってくる」との認識を示した。

 「情報セキュリティ人財のキャリアパス/キャリアプラン」をテーマにしたディスカッションでも、企業における人材育成の問題点を軸に話が展開された。
 ISEPAの与儀大輔代表は「セキュリティ関連の資格取得が人事施策に盛り込まれた組織は少ない」と指摘した。

ディスカッションで実務と学問の融合に言及する林氏(左から2人目)
ディスカッションで実務と学問の融合に言及する林氏
(左から2人目)
 また、産学連携の現状と今後への提言をテーマとしたパネルディスカッションでは、同大学院の林紘一郎学長が実務と学問の融合について言及。「例えば実務面の良い知識を学問しかやっていない人に伝えるには翻訳しなければならないが、翻訳自体にも(実務と学問の)両方の基礎知識が必要。通訳自身が立派なプレーヤーでなければならない」と力説した。

 今回のセミナーでは、情報セキュリティの人材育成について様々な立場から発言があり、産学官の連携を訴える意見が目立った。議論が今後発展し、体制整備が進むことを期待したい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:情報セキュリティ教育事業者連絡会
(ISEPA=Information Security Education Providers Association)
情報セキュリティを担う人材育成のための支援体制整備や情報発信などを目的に、NPO法人日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)内の組織として、2007年10月に設立された。同協会会員の情報セキュリティ関連企業や業界団体などで構成されている。


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