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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

セミナーレポート
官民がCSR、内部統制についての現状を報告

 東京ビッグサイトにて、7月15日から17日の3日間にかけて「CSR/内部統制ソリューション」が開催された。社団法人日本経営協会と東京都商工会議所が共催し、「CSR」(Corporate Social Responsibility=企業の社会的責任)と「内部統制」に関わる、ツールなどを展示・実演をする一方、官民から識者・関係者が集い最新の情報提供や講演なども多数行われた。
 2001年に米国で発生したエンロン不正会計事件より、企業に対して、株主は内部統制を求め、社会はCSRを求めるようになった。いずれも企業にとっては“負担”として受け取られる傾向があるが、今回のフォーラムでは、それらを正しく活用すれば強力な武器となることを、各講演者が様々な立場から主張した。

広い会場内に設けられたフォーラムスペースには企業経営者やCSR担当者などが多数詰め掛けた
広い会場内に設けられたフォーラムスペースには企業経営者やCSR担当者などが多数詰め掛けた
 「内部統制」に関して、2008年度はJ‐SOX法が適用される最初の年となったことから、2009年4月以降、次の年度に向けたJ‐SOX関連の情報が飛び交い、改めて問題点や課題点が浮き彫りになった。
 金融庁企業会計調整官の野村昭文氏は、2009年7月7日に金融庁から発表された「平成21年3月決算会社に係る内部統制報告書の提出状況について」という資料を引用。内部統制報告書の中でも特に報告書に「重要な欠陥がある」という記載について解説した。
 「重要な欠陥がある」という情報を開示しても、それによって即座に財務報告書は不適正とされるわけでない。内部統制報告書には、重要な欠陥の是正に向けての方針や計画を併記できる。同氏は「改善をする課題があることを開示することに意義がある」として、報告書を業務改善促進のツールとして利用することを訴えた。

 会社の情報セキュリティに関するガバナンス機能の監査「情報セキュリティ監査」を行っている日本セキュリティ監査協会の主席監査人、永宮直史氏は、「企業経営に生かす情報セキュリティ監査」と題して、情報セキュリティ監査の現状と利用方法について講演した。
 企業が下請けに仕事を依頼する場合、発注企業と同程度のセキュリティを下請けに確保するのは難しい。ところが下請けで漏洩があった場合、その責任は発注元に問われるケースが多い。そのため下請けを多くもつ大企業等は、発注先に対して情報セキュリティ監査を依頼することで、情報セキュリティ分野の内部統制を確保している。
 同氏は「リスクの大きい部分に保証型監査を行うことで信頼できる委託先を明確化することができ、結果として、委託管理の効率化・負担軽減などのメリットも得られる」とした。

経済産業省の平塚氏は「CSRレポートも国ごとに重視する項目が異なる」と語る
経済産業省の平塚氏は「CSRレポートも国ごとに重視する項目が異なる」と語る
 「CSR」に関しては、企業活動がグローバル化した現代においては、日本国内の法律遵守だけではなく、国際動向を含めた“社会”を意識する必要がある。実際、国際的な大手スポーツ用品メーカーが、海外工場における搾取や児童労働問題を起こし、米国で不買・訴訟運動に発展したこともある。
 経済産業省企業行動課企業制度担当企画官の平塚敦之氏はこのような国際社会の「道徳的」な要求の高まりを挙げ、海外への展開を考慮した場合、CSRなくしては製品が売れないことを述べた。

 新日本有限責任監査法人の大久保和孝氏は、アフリカで毎年多くの人が命を落としているマラリアを予防するため、病原体を媒介する蚊に効く特殊な殺虫剤を編みこんだ「蚊帳」を輸出することで利益を得たメーカーを例に出し、売り手、買い手、社会すべての益になるような戦略こそCSRであるという考え方を示した。同社は「蚊帳」の販売で潤い、アフリカはマラリア感染者が劇的に減るというWIN-WINの関係が築けている。
 大久保氏は、このような社会貢献とビジネスを一致させることこそCSRだと語り「会社の業績が悪くなれば、経費節減として真っ先に切られるような植林や環境事業と言った活動は寄付とは言えてもCSRとは言えない」と訴え、社会問題の解決をビジネス上の機会として組み込む必要性を論じた。

 3日間のセミナーでは、CSRも内部統制も、企業の負担ではなく、企業を成長させるためのツールとして強調されていたのが印象的だった。2008年の不況以来、企業は出口を求めているが、CSRや内部統制の構築に1つの答えがあるかもしれない。

大久保和孝氏「激変する時代を生き抜くための企業活動とは」インタビュー記事はこちら



※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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