IT業界におけるスキルアップとキャリアパスを明確にするため、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)では「ITスキル標準」というスキルの基準を策定している。プロジェクトマネジメント・ITスペシャリスト・コンサルタントなどの分野に大別し、分野ごとに最大7段階のレベルを設定。それぞれのレベルに到達するための実務経験・必要資格などが記されているものだ。
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参加者は人材育成の指標となるITスキル標準の動向に耳を傾けていた |
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このITスキル標準をより現状にあったものにするため、IPAのITスキル標準センターには分野別に8つの委員会が設置され、年度ごとに内容の見直しなどを行っている。7月3日、東京都港区の明治記念館で行われた「IPCF2009」では、各委員会が2008年度の活動を報告した。
報告に先立ち、経済産業省・商務情報政策局情報処理振興課長の八尋俊英氏は「ITはアジアでのニーズも高まってきている。IT戦略本部で2009年3月に策定された政府の3ヶ年緊急プランにも、電子政府・電子自治体、医療に加えて『教育・人財』が重点プロジェクトに組み込まれている。これまではITスキル標準の作成が活動のメインであったが、今後はこれを活かして人の育て方を考えていきたい」と挨拶した。
八尋氏はITスキルの海外事情も紹介。それによると、現時点では国際的なITスキルの統一的な基準はないものの、プロジェクトマネジメント手法に関して2007年より英国・米国主導でISOの会議が立ち上がっており、国際標準化が進められている。日本も微力ながら参画している。
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ITスキル標準が定めるキャリアフレームワーク
出典:ITスキル標準センターホームページ資料をもとに作成
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プロジェクトマネジメント(PM)委員会の報告では濱久人主査が、PMの中にある4つの専門分野(システム開発・ITアウトソーシング・ネットワークサービス・ソフトウェア製品開発)の共通項目にセキュリティマネジメントを加えることを、新たな改善提案としてまとめたと説明。
変更理由については「セキュリティの必要性がこれだけ叫ばれている時代に、セキュリティ項目がシステム開発にしか存在しないのは不自然であるため」と述べた。
また、互いの関連性は薄いものの、複数あるプロジェクトを並行してマネジメントする処理能力についても検討し、各専門分野のレベル5を満たす必要条件として追加することも提案した。
これらの経過を述べた上で濱氏は、PMのコンピテンシー(優れた業績を発揮する際の特性)について「失敗や他人との関わりなど外的刺激で個人が習得していくもの」と指摘し、PMの研修体系の見直しなどを含めた改善提案を来年度も引き続き行うとした。
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コンサルタント委員会メンバーの石田氏 |
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コンサルタント委員会からは石田英理(えいり)委員が登壇し、ITスキル標準を外部の人間が理解しやすい表現にすることが今後の検討課題と述べた。
石田氏は、ITアーキテクトなどの職種の人にコンサルタントへ対する認識不足があることを指摘。「両者はビジネス戦略の実現という目標は共通で持っている。しかし、コンサルタントはお金を稼ぐこと、ITアーキテクトは100%動くものを作ることを意識している」と述べ、視点の違いから生まれるギャップを埋める活動も行っていくことを強調した。
ITに依存している現在の社会には、実践的なIT知識・技能を持つ人材は必要不可欠である。行政も力を入れているIT人材の育成に貢献するような活動を、IPAに期待したいところだ。
関連リンク
IPAのITスキル標準センターホームページはこちら
※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。