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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
は“個人の意識”
(動画あり)

セミナーレポート
危機管理演習・セミナーが開催

 危機管理対策機構(CMPO)が、設立10周年を記念して2009年4月16日・17日の2日間にわたり、「危機管理演習」および「危機管理セミナー」を東京・渋谷区の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催した。

危機管理演習の前提条件 お互いがこの日初顔合わせの模擬「対策本部」。会場から次々と舞い込む情報に対し、どのような指示を出すか検討する
上記は訓練の前提条件。架空の会社概要・経営状況・事件全容をはじめ、社内の情報システム構築の現況や緊急時の連絡方法(ex.支店や取引先とはメールのみ)など、詳細にわたった条件が設定されており、参加者はその条件下での対処方法を考える (クリックすると拡大します)   お互いがこの日初顔合わせの模擬「対策本部」。会場から次々と舞い込む情報に対し、どのような指示を出すか検討する
 CMPOは、1995年に発生した阪神淡路大震災を機に設立されたNPO法人で、企業や地方自治体などに対し、BCM(事業継続マネジメント)*1などのアドバイスを行っている。
 1日目の危機管理演習では、実際の災害場面を想定した模擬演習が行われた。訓練はモックディザスタ(災害模擬演習)と呼ばれるもので、状況が次々に変化し、あたかも災害に見舞われたという設定で対応策を検討していく手法だ。「具体的な対応をする防災担当者ではなく、経営陣として会社全体の視点から対応することが重要です」とCMPO事務局長の細坪信二氏がアナウンスした後、訓練がスタートした。

 参加者は各チームに分かれて架空の食品メーカーの専務、あるいは人事部長などの役員となり、自社の原材料偽装問題への対応や、突発的に発生した地震に対処するための災害対策本部詰めになっているという設定だ。

演習の最後に行われた模擬記者会見の様子。参加者が質問を投げかけた
演習の最後に行われた模擬記者会見の様子。参加者が質問を投げかけた
 時間の経過とともに、支社や取引先、筆頭株主やメディアなど、社内外から寄せられる情報や問い合わせを受けながら、各チームは様々な応対をした。あるチームは、地震という緊急事態のため、まずはステークホルダーに連絡することが先決と、予定していた記者会見を見送った。逆に、偽装問題を地震発生の「どさくさ」に紛れこませるために予定通り会見を行うチームも見られた。

 演習が行われた翌日のセミナーでは、細坪氏が「企業危機管理のベストプラクティス」と題して講演。企業の危機管理を、損害を小さくするだけでなく損失分を取り返すものと位置づけた。また、災害に見舞われた後の事業の優先順位付けを、“何を切り捨てるか”が重要としたうえで「災害などが発生した場合は、緊急対応とともに、ビジネス継続対応、危機広報対応などを並行して行うことで、時間や費用が軽減される」と強調した。細坪氏は今後10年間のCMPOの目標として、危機管理のリーダー育成に取り組むことや、事業が危機に見舞われても最後にはプラスに転じるような、対応策としての成功例の創出を目指すことを掲げた。

2日目に行われたパネルディスカッションの様子
2日目に行われたパネルディスカッションの様子
 最後に行われたパネルディスカッションに参加した長岡技術科学大学大学院の渡辺研司准教授は「危機管理対策に取り組める人材を育てるには時間がかかる。今がスタートだ」とした。富士通総研BCM事業部長の伊藤毅氏は「組織的な危機管理能力を持てなければ、企業自体生き残ることができない。自社のBCP(事業継続計画)*2を使って、様々な事業部で訓練を実施したが、斬新なアイディアが出せて、なおかつ結果が出ている部署は訓練結果が素晴らしい。逆に保守的な部署は訓練成績が悪かった」と、危機管理とビジネスのつながりを指摘。細坪氏も「危機管理対策の意識を経営層に加えて現場の社員も身につけることによって、危機発生時に柔軟な対応ができる」と述べ、ディスカッションを終えた。

 危機管理については、セミナーだけでなく実際に訓練することで、平時には思いもよらなかった反省点に気付くことができる。また、危機管理を体で覚えることによって、日常の業務でも現状維持にとらわれないビジネスが可能であることを示唆した2日間となった。危機管理が不況を乗り越えるカギになるかもしれない。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



注釈

*1:BCM(Business Continuity Management)
事業継続管理。自然災害や事故、不祥事などの緊急事態が発生した時に事業を継続するための計画策定や、計画導入・運用・見直しなど、包括的なマネジメントのこと。

*2:BCP(Business Continuity Plan)
事業継続計画。緊急事態発生時に最低限の事業活動を継続させる、もしくは目標復旧時間内に事業が再開できるようにするための行動計画。



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