2009年4月8日、あずさ監査法人主催の「3市場セミナー ―新規上場の主要3市場紹介とIPO(新規株式公開)の現状―」が開催された。
例年同法人主催で開催されるこのセミナーは、東証、大証、ジャスダックという主要3市場から講師を招いて講演が行われ、参加者にとってはIPOの最新動向が得られるとともに各市場の特徴を比較検討できる場となっている。
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株式上場を目指す企業オーナーをはじめ、大勢の参加者が集まった |
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2008年のサブプライムローン問題に端を発した世界株式市場の混乱、金融不安、また各証券取引所の上場審査の厳格化や内部統制報告制度の導入など、上場を目指す企業にとっては厳しい状況にある昨今。しかしながら新規株式上場の魅力は依然として強く、会場には多くの参加者が集まり、講演者の話に熱心に耳を傾けていた。
冒頭の挨拶では、あずさ監査法人公開本部長の潮来克士氏が檀上に立ち「IPOを見送る企業も多い中、逆にこの期をチャンスと捉え攻めの態勢でのぞむ企業も多く、IPOには根強いパワーを感じる」と口火を切った。
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あずさ監査法人 IPOサポート室長 堀江秀治氏 |
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株式上場の現状については、あずさ監査法人IPOサポート室長の堀江秀治氏が講演を行った。昨年、2008年の新規株式上場数は49社と、2007年の121社から約6割減少しており、さらに2009年は4月末現在で7社(2008年の同時期22社)と輪をかけて厳しい状況である。同氏は「現状をきちんと認識した上での対策が重要である」と前置きし、上場会社数減少の要因について言及した。
一番の要因を“業績の伸び悩み”として「東証1部上場企業でさえ2008年の経常増益率はわずか3%、2009年は大幅減益予想となる中、新興市場上場企業の業績も同様に厳しい」と述べ、さらに「IPO時(直前2期間)に右肩上がりの業績を示す企業数が減少、さらに業績堅調な企業でも上場後の業績が不透明である」と解説。近年、IPOを成し遂げた後わずか3ヶ月程度で業績の下方修正をする企業もあり、このような結果を避けるべく証券会社の審査も厳しくなっている旨を説明した。
堀江氏はさらに「しかしながら過去15年間のIPO環境では、3~5年くらいのサイクルで上下推移しており、長期低迷した例はない」との分析を行った。「今から上場準備を始め、2年以上先にIPOを目指す企業にとってみれば、逆に良いタイミングである」と述べ、厳しい状況下でのIPOのメリットとして「利益水準や証券会社の審査も厳しい今、それらの難関フィルタをクリアしてIPOを行った企業は、2000~2003年のいわゆる“大量上場時代”にはない評価を社会や市場から得られる」とし、他社との差別化を図るには絶好の機会であると説明した。
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東京証券取引所上場推進室 中井孝氏 |
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主要3市場からは、新興市場を取り巻く動向や、審査基準、また各市場の特徴についての説明が行われた。2008年末にジャスダックと大阪証券取引所のグループ化により、新興市場の約8割をシェアする一大株式市場グループが誕生する。また2009年春には東京証券取引所グループとロンドン証券取引所グループが新市場「TOKYO AIM(トウキョウ エイム)」を共同開設するなど、市場活性化に向けた動向が取りざたされた。
また東京証券取引所上場推進室 中井孝氏や、ジャスダック証券取引所IPOサポート部 鈴木智博氏からは、講演の中で「コーポレート・ガバナンスおよび内部管理体制の有効性に重点がおかれている」など、時代要請を受けつつ変化する上場審査項目の解説があった。続いて大阪証券取引所上場サポートグループの野口直也氏は、大阪証券取引所とジャスダックの統合について「上場企業約2000社の一大株式市場グループの登場により、国際的な存在感も高まる」と紹介した。
2009年3月決算から上場企業における内部統制報告書が提出開始となり、上場を目指す際には、上場申請期からそれらの対応にせまられることになる。経済効率性はもとより、準備期間の長期化を視野に入れた対策が、今後上場を目指す際のポイントとなる。
講演ではIPOへの課題が多く提示されたが、それらの解決が市場の活性化のみならず企業の健全な発展のために不可欠ということを認識させられたセミナーであった。
※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。