2009年4月2日、モバイルコンテンツ審査・運用監視機構(Content Evaluation and Monitoring Association、以下EMA)は、港区にあるホテルフロラシオン青山で公開シンポジウム「官民が目指す青少年のインターネット環境整備の方向性」を開催した。
今回の公開シンポジウムでは、2009年4月1日に施行された「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律(通称:青少年インターネット環境整備法)」を受け、EMAが自らの組織と活動内容、また同法の施行についての啓発が行われた。
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インターネットを介した児童の犯罪被害の件数推移(内閣府資料より引用)(クリックすると拡大します) |
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内閣府 青少年インターネット環境整備推進室の内藤新一氏はシンポジウムの冒頭で「青少年の携帯電話やPCによるインターネットの利用状況は年々高まってきている」とした上で、近年のネット利用環境について指摘した。
2007年3月に行った内閣府の調査では、携帯電話によるネット利用は小学生で30%、高校生になれば95%以上にも及び、これに伴いインターネットの掲示板や出会い系サイトなどを通じて、青少年が犯罪に巻き込まれる事件が頻発している。
2003年には「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律(通称:出会い系サイト規制法)」が制定・施行され、出会い系サイトの規制とともに、プロバイダ・保護者にフィルタリングの提供・利用の努力義務も盛り込まれた。
しかし昨今では出会い系サイト以外での児童被害も増加傾向にある。警察庁の調べによると2008年には出会い系サイトの被害件数を、出会い系サイト以外の被害件数が上回る事態になり、インターネット全体での対応が迫られるようになってきた。
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EMA代表理事 堀部氏は「インターネット上の違法・有害情報への対応に関する検討会」とEMA設立の経緯について語った
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このような背景から4月1日に施行された「青少年インターネット環境整備法」ではPC・モバイル端末ほかゲーム機などハードの形体を問わず、インターネットに青少年が接する機会のある端末を販売する際、小売店がフィルタリングの提供をすることが義務付けられた。
ただし違法情報はともかく、いわゆる有害情報に接する基準を政府が一律に決めるのは、発育やインターネットリテラシーに関する教育などにも大きな差異がある青少年の場合、必ずしも望ましいとは言えない。
EMA代表理事 堀部政男氏も「違法な情報については表現の自由との兼ね合いを比較・検討した結果としての違法分類だが、有害情報はあくまでも表現の自由の範囲内と推定されるため、規律の扱いには言論の委縮などに配慮が必要である」と有害情報の扱いについて言及している。
そのため、青少年のモバイルインターネット利用に際して、各携帯端末にかける違法・有害情報フィルタリングの詳細を検討する機構として、第三者機関であるEMA設立の経緯が説明された。
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地方の教育関係者なども詰めかけ、切実な問題となっているインターネットリテラシーについて議論が交わされた |
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EMAで現在行われている、有害サイトに対するフィルタリングの方式は「オカルト」「成人嗜好」「主張」「ギャンブル」などカテゴリごとの規制になっている。
しかし、例えば「ギャンブル」という分類について、競馬などへの青少年の投票行為が違法であるためアクセス制限になることは理解しやすいが、競技そのものに関する知識や、競技をテーマにしたゲームまでもが著しく青少年に有害とは言い難い。
ほかにも「オカルト」は単に科学的に説明できない情報という点だけでは青少年に有害とは思われないが、超常現象を利用し青少年の未熟な判断力に付け込み不安を煽るサイトがあるため、現段階ではアクセス制限としている。
これについてEMA事務局の吉岡良平氏は「アクセス制限を課しているカテゴリ内でも、青少年にとって著しく有害とは言えないサイトを別カテゴリにすべきという意見もある」と現状の議論について述べた。
利用者(児童)の発育を考慮せず、一方的にフィルタリングをすべて受け入れて情報を遮断することは、青少年のインターネットリテラシーの育成を阻害する要因にもなりかねない。「青少年の発達段階に応じた主体性を確保しつつ、違法・有害情報から保護する」というEMAの設立趣旨にもあるように、児童の発育段階に応じてフィルタリングの最終的な決定権を持つ保護者らが適宜フィルタリング要件を変える“主体性”も重要となるだろう。
今後ますます進むであろうインターネット普及の低年齢化を見越し、犯罪被害を防ぐと同時に、インターネットリテラシーを教育していくためにも、より適切なフィルタリング利用と啓発の必要性を感じさせられるシンポジウムとなった。
関連リンク
内閣府 青少年インターネット環境整備推進室 内藤新一氏のインタビュー記事はこちら
※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。