インターネットコンテンツ審査監視機構(以下、I-ROI)が主催するセミナー「青少年インターネット環境整備法と健全性認定制度」が2009年1月28日、千代田区の山王健保会館で行われた。I-ROIは2008年の6月に発足したばかりの有限責任中間法人で、今回が初めてのセミナー開催となる。
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2009年4月から施行される「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」、いわゆる青少年インターネット環境整備法は、ISP(インターネットサービスプロバイダ)、PCメーカー、携帯電話会社にフィルタリングを義務付ける。「殺人サイト」などの違法行為、わいせつな描写、殺人、虐待などの陰惨な描写を「青少年有害情報」と認定し、これらを18歳未満の青少年が閲覧できないようインターネット関連企業に努力義務を課すものだ。
青少年インターネット環境整備法を解説する内藤氏
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この法律について、内閣府のインターネット青少年有害情報対策・環境整備推進準備室・参事官補佐の内藤新一氏が、同法制定のきっかけや携帯電話各社のフィルタリング実施状況などを紹介した。また、情報を削除する項目を契約約款の禁止行為に含めることで、コンテンツ削除にあたっての民事訴訟に対応する方法も紹介した。
ただ、やみくもに有害情報の削除を行うと一般利用者が閲覧できないという弊害のほか、ブログやBBSでは、サイトに年齢確認を含めた会員制の導入が難しいという問題点も発生する。こうした課題を踏まえ、内藤氏は同法の施行とともに、共通の年齢認証基盤やレーティングの活用などを民間で発展させることが望ましいとした。
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続いてヤフー法務本部渉外マネージャーの吉田奨(よしだすすむ)氏が、自社内でのフィルタリングに対する取り組みについて紹介した。ヤフーの基本的な取り組みとして、電子コミックでの有害図書の掲載禁止や暴力的なコミックの立ち読み機能防止、ヤフーテレビでアダルト番組の番組表提供を控えることなどを挙げた。
- I-ROIのレーティングについて語る相磯氏
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内藤、吉田両氏の講演後、I-ROI代表理事の相磯秀夫(あいそひでお)氏がI-ROIのレーティングについて説明した。「全年齢」「12歳以上」「15歳以上」「18歳以上」の4段階の年齢区分を設定、認定されたコンテンツは年齢マークを表示するというものだ。
また、I-ROIの認定のプロセスについての解説も行った。コンテンツ提供者はI-ROIのセルフレーティング研修を受けた後、自分の提供するコンテンツについて自己診断を行う。I-ROIの設定した9カテゴリのセルフレーティングチェックシートに記入して申請する。I-ROIは、提出されたチェックシートとコンテンツを確認し、仮マークを発行、その後もう一度運用状況を審査して正式に認定、という流れになる。
相磯氏は、レーティングの年齢区分に関して「18歳で一律に区切ればよい」「もっと細かく分けるべき」などが議論になったこと、コンテンツのチェック項目から政治と宗教についての項目を一旦外していることなど、認定プロセス策定までの経過も語った。
出席者との質疑応答も活発に行われた
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セミナーでの質疑応答では、相磯氏に対して「I-ROIの認定は、例えばドコモにかかっているフィルタリングが外れる保証となるのか」という質問が出た。相磯氏は「今までI-ROIはレーティングの概要を策定してきた。これからは携帯キャリアなどとの連携を具体的にすべく現在交渉中」と回答した。
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青少年インターネット環境整備法では、努力義務のみで違反したときの罰則規定はない。しかし、青少年出版社のデジタルコミック部門担当関係者を交えた議論が活発に交わされるなど、インターネットコンテンツへのレーティングに対する関心の高まりを感じさせるセミナーとなった。
関連リンク
I-ROI代表理事・相磯秀夫氏のインタビューはこちら
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※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。