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公認会計士松澤大之
内部統制で変革すべき
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セミナーレポート
電子署名の活用について講演

 インターネットを介した商取引や官公庁への申請の普及が進み、なりすましや改ざんといったリスクを排除するため、電子署名普及の必要性が訴えられている。
 そうした中、経済産業省と日本情報処理開発協会は12月22日、2010年度の「電子署名・認証業務普及セミナー」を横浜市内で開催した。「広がる電子署名の活用分野」をテーマに、全国5ヶ所の初回となる横浜会場では、同省と関連企業、同協会関係者が電子署名の制度や申請業務、重要文書保存等への活用などについて講演した。

定員200人のところ会場はいっぱいとなり、電子署名への関心の高さがうかがわれた
定員200人のところ会場はいっぱいとなり、電子署名への関心の高さがうかがわれた
 最初に講演に立った経済産業省情報セキュリティ政策室の池西淳氏は、2001年4月から施行されている電子署名法の内容と、電子署名の活用などについて講演した。

 同法では電子署名を「誰が情報を作成したかを示す」「情報が改変されていないことを確認する」ものと定義。PKI(公開鍵認証基盤)に基づく電子証明書を発行する第三者機関を設け、署名の有効性を証明できるようにする仕組みも設けている。

 電子署名の重要性が増している背景について同氏は、インターネットを利用してB to B(企業間取引)やB to C(企業と一般消費者間の取引)を行っている企業が、2009年末で企業全体の55.3%と半数以上になるなど、ネットを介した商取引の普及が年々進んできていることを説明。
 その中での契約・手続き上のリスクとして、同氏は「電子文書やメールの送受信で作成者の特定が困難でなりすましの危険があり、紙と違って文書改ざんの痕跡も残らない。文書を送信したことを否認されるのを防ぐのも難しい」と述べ、それらのリスクを回避するために、電子署名が必要となることを指摘した。

 電子署名の活用は、官公庁での「電子入札」や「電子申請」、企業間の「電子契約」、文書を紙から電子化する「電子文書の保存」などで行われている。このうち、入札や申請業務の電子化の進展について、「手数料を紙申請の半額になるようにするなど経済的インセンティブの向上、システムの使い勝手向上、業務の効率化・ペーパーレス化徹底などが必要となってくる」と述べた。

 ビジネス・サポートエム代表取締役の御田村瑞恵氏は、電子署名がビジネス支援のソリューションになりうる点をテーマに語った。
 入札や申請等を電子化して行うメリットについて「いつでも、どこでも手続きが可能になり、記入ミス等の防止、時間とコストの節約にもなる」と指摘。
 e-Tax(国税の電子申請システム)やeLTAX(地方税の電子申請システム)を例に、申請書類の作成が楽になり、各種添付資料の提出を省略あるいは簡略化できるなどの利点を挙げ、紙代や印刷代、郵送代等のコスト節約、郵送事故等のトラブルも回避できると説明した。

 一方で同氏は「従来のすべての取引がオンライン化できるわけではなく、あらゆる分野に活かせるわけでもない。利用者はメリットを見極め、自社にとって効果が高い部分に導入すべき」と強調。慎重に判断した上で、申請や取引の電子化に取り組むべきと訴えた。
書類の電子保存には真実性、可視性、機密性の確保などが必要と訴えた西山氏
書類の電子保存には真実性、可視性、機密性の確保などが必要と訴えた西山氏
 セコムトラストシステムズ担当部長の西山晃氏は、口座振替依頼書や請求書類、顧客からの申込書類など、紙の重要書類を電子化した事例を紹介した。
 いずれも書類に電子署名を付与することで電子文書を原本として取り扱うことが可能となり「印刷や発送、ファイリング等にかかるコストが削減され、(ワークフローが簡略化されるなど)業務の効率化が達成された」という。
 また、2005年4月施行のe-文書法に基づく、国税関係書類の電子保存にも言及。
 同氏は保存の技術的要件として「電子署名やタイムスタンプ(認定機関に認められた作成・更新の日時情報)を付与することによる真実性の確保、年月日や金額による検索機能などでの可視性の確保、アクセス制御や不正侵入検知などの機密性の確保などが求められる」と強調した。

 このほか、同氏は医療関連の文書(診断書や処方情報など)や会社法関連文書(定款や株主名簿)の電子化にも触れ、保存期間が長期にわたることなどから「電子署名に加えタイムスタンプも付与し、長期にわたって署名の有効性を検証できる長期署名方式を用いることが求められている」と指摘した。

 日本情報処理開発協会主席研究員の木村道弘氏は、「電子記録マネジメント視点からの電子署名」と題して講演。電子化された書類の管理をマネジメント(ここでは「自ら仕組みを作って目標を達成すること」)として捉えることの必要性を強調した。

 同氏は「今や、企業等で発生する文書の大半は電子文書になっている」と指摘。このため、記録に裏付けられた迅速な業務遂行を実現したり、記録を系統立てて正確に説明し業務を改善したり、記録を事業創出や新商品開発の糧とするためにも「目的に合致した電子記録マネジメントが不可欠だ」と訴えた。

 官公庁、企業ともに業務の電子化が進むことで、住民や顧客の利便性が高まり、業務の効率化も進展する。電子化に不可欠な電子署名の普及がさらに進むよう、より一層の啓発が求められる。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。




注釈

*:e-文書法
税法や商法などの法令で民間企業が作成・保存を義務付けられた書類を、紙だけでなく電子化された形でも保存できるようにした法律。紙の文書をスキャンして電子化したものも、一定要件を満たせば正規文書として認められる。企業決算にかかわる一部の重要書類は対象外。正式には「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」とその整備法の通称で、2004年11月制定、翌年4月施行。




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