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セミナーレポート
「知的財産シンポジウム2010 in横浜」が開催

会場には中小企業経営者、中小企業支援団体関係者、金融関係者、行政関係者等150名が参加した
会場には中小企業経営者、中小企業支援団体関係者、金融関係者、行政関係者等150名が参加した
 関東経済産業局では、広域関東圏知的財産戦略本部を中心として、地域・中小企業の知財支援を実施しており、平成20年度から新たに意欲的な取り組みを進める地方公共団体と国との連携による成功モデルづくりを行うこととした。第一弾として特許庁が全国の自治体から2カ所選定し、関東経済産業局は、横浜市との知的財産支援連携モデル構築のための調査事業を2年間実施した。
 2010年10月19日に開催された「知的財産シンポジウム2010 in横浜 ~中小企業における資金調達と知的財産経営~」では、調査事業の成果報告とともに、中小企業の知財戦略について講演が行われた。

 開会挨拶には、横浜市経済観光局長の渡辺巧教氏が登壇。渡辺氏は「日本の経済活性化のためには、技術開発を中心とした中小企業のイノベーションが不可欠」と語り、政府が閣議決定(2010年6月)した新成長戦略の中でも “中小企業の知的財産は日本の成長を支えるプラットフォーム”とされていることに触れた。さらに「横浜市が取り組む企業支援事業も、今後さらなる充実を図って行きたい」と意欲を述べた。
特許庁 総務部 普及支援課 上席産業財産権専門官 課長補佐(中小企業等支援企画班長)木村真己氏
特許庁 総務部普及支援課 上席産業財産権専門官 課長補佐(中小企業等支援企画班長)木村真己氏
 特許庁 上席産業財産権専門官の木村真己氏は「産業財産権行政の現状と今後」と題して講演。知的財産権の中でも中小企業の戦略となる「特許」について説明した。

 中小企業数約420万社という数字は、全企業数の99%以上を占めており、日本の産業のイノベーションを発展させる上で中小企業の役割は大きいと言われている。しかし、2009年特許出願件数の約35万件のうち、中小企業が占める割合は約10%と低迷。知財に関し、戦略的な保護・活用がまだまだ十分ではない。

 木村氏は、知財活用のメリットとして「資金面・人材規模等の制約の大きい中小企業においては、大企業以上に知財活用が有効」と解説。その根拠として特許保有・非保有の企業について“従業員1人当たりの営業利益”を比較。「海外特許保有企業=202万円/人、特許保有企業=180万円/人、非保有企業=137万円/人(出典:中小企業白書2009)」との格差があることを示した。

 また特許庁は、平成16年度から中小企業の知財経営の推進事業を実施。地域で活躍できる人材のデータベース構築等の取り組みもなされており、このデータベースには現在、大企業知財部OB等の300名が登録。
 さらに平成23年度以降は、新たな支援体制として都道府県ごとに「中小企業等知財支援センター」を設置予定。これは、中小企業の知財に関する相談窓口を一本化することで、ワンストップサービスでの支援を可能にする。木村氏は「知財は専門性が高く相談に行きにくいとの中小企業の声をふまえ、取り組みを行っている。地域の人材を活かした実践的支援から、知財経営の“定着”を目指したい」と語った。
内田・鮫島法律事務所 弁護士・弁理士 鮫島正洋氏
内田・鮫島法律事務所 弁護士・弁理士 鮫島正洋氏
 次に「知的財産支援連携モデル構築のための調査」調査委員会の委員長であり、弁護士・弁理士の鮫島正洋氏が登壇。「横浜市は多くの技術系中小企業、大企業の研究所・工場、理工系の大学が所在する都市である。知財を推進することで、企業間の競争力のアップや街の活性化を狙っている」と語った。

 同調査の主な取り組みは2つ。1つは、日本で初めての試みとなる“知財の活用による資金調達”の推進だ。その背景には2008年のリーマンショックを境に、中小企業の資金調達(銀行からの融資等)が困難になったという状況がある。
 横浜市は、知財を活用した経営に取り組む企業を支援する「横浜価値組企業評価・認定事業」を実施しているが、“知財の活用による資金調達”は、この「横浜価値組企業」に認定された中小企業をモデルに、企業の保有する知財を競争力の裏付けとして分かり易く示す事業計画書を作成し、金融機関からの資金調達の実現性を高めるというもの。
 もう1つの取り組みは「広域知財活用モデル調査」といい、これは中小企業(横浜市内)と連携大学の研究シーズ(全国)とのマッチングを行うもの。これにより、例えば「精密機械の技術はあるが、製品化のための加工技術がない」といった中小企業の課題に対し解決をはかる。
 鮫島氏は「一見バラバラな施策に見えるかもしれないが、中小企業の悩みに密着した施策を考えていくと、ひとつひとつが重要なことだとわかる。このような取り組みを積み重ね、企業戦略をサポートするインフラを整備したい」と語った。

 セミナー終盤ではパネルディスカッションが開かれ、横浜市内の企業経営者や、金融機関の融資担当者らが登壇。「横浜価値組企業」の認定を受けた企業のモデルケースが紹介された。将来的には、資金調達について不動産や株の評価のみならず、知的財産の評価も一般的になってゆくのかもしれない。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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