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LED照明の普及発展に向けシンポジウムが開催

 東京スカイツリーのライトアップへの採用をはじめ、世間の認知度も注目度もますます高まりを見せている「LED照明」。発光効率の技術進化もめざましく、地球環境保護の観点からも期待が高い。
 しかし一方では、コスト面をはじめ一般普及に向けての課題も多く、対策が模索されている状況だ。2010年9月7日、LED照明推進協議会主催のもと「LED照明 飛躍の幕開け」と題したシンポジウムが開催され、成長戦略・最新事例・市場動向といった幅広い観点から識者が登壇。LED照明の普及発展に向けての講演がなされた。

「LED照明の成長戦略」について講演する経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器課長 吉本 豊氏
「LED照明の成長戦略」について講演する経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器課長 吉本 豊氏
 2020年には照明の世界市場は10兆円以上に拡大、LED照明のシェアはその9割以上にも達するとの予測(出所:フィリップス社)がされている巨大マーケットである。日本の経済成長の糧とすべく、経済産業省 商務情報政策局 情報通信機器課長の吉本豊氏は「LED照明の成長戦略」と題し、その動向について解説した。
 吉本氏は、LED照明の政策課題としてまず「既存照明と比較すると高価格であること」、「技術や市場も発展途上であること」を明示。さらに経済産業省が現在推進中のLED照明関連施策として「明日の安心と成長のための緊急経済対策」(2009年12月8日閣議決定)の内容について解説した。
 特に「戦略的な国際標準化」として、LED照明の測光方法の標準化を進めることが重要であることを強調。消費電力量と明るさの相関を示す「発光効率」は、省エネ性能を示す上で重要な数値であるが、パッケージに表示されている数値を、実際には満たさない海外製品もあるという。吉本氏は「LED照明は性能評価方法が確立されないため、どの製品が本当に良いものか分からず、日本製品の強みである高い省エネ性能等が世界市場において正しく評価されない現状がある」と説明した。
1000人収容の会場は多くの来場者で埋まり、注目の高さがうかがえた
1000人収容の会場は多くの来場者で埋まり、注目の高さがうかがえた
 LEDの市場拡大を見越して、韓国、台湾、中国をはじめとする国々では積極的な研究開発や普及促進策が展開されており、さらに近年は大規模投資によりその生産能力を大幅に増強してきている。吉本氏は「日本で生まれた技術であり、日本国内のみならず世界に大きな飛躍のチャンスのあるマーケットを目の前にしながら、他国の技術が市場のルールとなりゆく状況を打破しなければならない」と、LEDの普及発展に向け、意欲的な態度を示した。

 最新事例として、「東京スカイツリーにおけるLED化への挑戦」と題し、ライティングデザインを担当したシリウスライティングオフィス代表取締役の戸恒浩人氏が登壇。従来の高圧放電灯からLED照明にシフトし、600メートルを超えるタワーを照らすことを可能にした、その設計プロセスを紹介した。

 ライティング設計が開始された2007年、戸恒氏は地球環境を考えたソフト面(デザイン)とハード面(技術)の両方の取り組みを行わなければならないと提案したという。 「ソフト面では“デザインのエコ”と称し、省エネルギーと美しさを両立させるデザインを追求すること、これが今後デザイナーの使命であると感じていた」と語った。タワーのすべてを照らすのではなく、照らさない暗い部分も光のひとつとして扱う。あえて曖昧な光の中間領域を使うことが、“陰翳礼讃”という言葉で表される本来的な日本人の感性と考えたという。
「東京スカイツリーにおけるLED化への挑戦」と題し講演を行う、シリウスライティングオフィス 代表取締役 戸恒浩人氏
「東京スカイツリーにおけるLED化への挑戦」と題し講演を行う、シリウスライティングオフィス 代表取締役 戸恒浩人氏
 ハード面の取り組みについては、現在オールLED化が大々的にうたわれているが、2008年時点の提案では、LED照明は部分的な起用であり、大部分は他のライトを使う予定でスタートしていたという。しかし、実現が難しいとされた“江戸紫”の発色成功をはじめ、メーカー技術の躍進によりオールLED化が可能になった。
 戸恒氏は、「当初は、LEDでここまでの大型ライトアップが可能になるとは考えていなかった。東京スカイツリーがLED普及の牽引になるとともに、日本のLED技術のレベルの高さを世界にアピールされることを期待したい」と語った。
 低炭素社会の実現と、経済成長というふたつの要素のキーとなるLED技術。今後の動向にも注目したい。


※この講演とセキュリティプラットフォームは一切関係ありません。



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