セミナーレポート
知的資産活用のため人材育成を
東大研究センターが国際シンポジウムを取材
東京大学政策ビジョン研究センター主催の知的資産経営研究講座(新NEDO社会連携講座)国際シンポジウムが都内で開かれ、グローバルな知的資産経営戦略を実践するための人材育成などをテーマにパネルディスカッションや講演が行われた。
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| 開演後も参加者が駆けつけ、会場は満席となった |
社員にはルールより責任ある仕事を
パネル討論では、元Apple社の製品デザイナーらが「グローバル企業が求めるイノベーション・知財戦略人材像」について議論を展開した。元Apple社のBill Dresselhaus氏は、「まず第一に包括的なデザインの教育が必要」と指摘した。その上で、小学校の段階から生涯を通じてデザインを学ぶ必要性などを強調。「子どもたちはチャンスさえあればクリエイティブにものを考え、すばらしいものを発明してくれる。大人以上のケースが多々ある」と述べた。
併せて、「デザインは残念ながら誤解をされ、装飾のように思われている」とし、「時としてそのような要素もあるが、デザインは新しいものを創るというプロセス。技術やノウハウをもとに事業化・製品化するもの」との認識を示した。
さらに、組織内の連携の必要性や縦割りの弊害なども指摘。「お金さえあれば人が働くわけではない」と述べ、「組織の一人ひとりに責任ある仕事を与えるべき。ルールだけでは不十分だ」と提言した。
キヤノン取締役知的財産法務本部長の長澤健一氏は、「世界中にあまたのライバルがいて、特許の数が全然昔と違う。こういう中で、どういうゲームチェンジが起こっていくかを考えられる人材を早くつくらないと会社が沈む」と問題提起。知財は「(法の管理や)法のリスクを回避するためのものではない」とし、かつては「特許法や知的財産法の侵害を最小限に抑えて会社を守るという意識が強かったが、知財は法の管理ではなく経営そのものだと考えて仕事をしなければ、これからはうまくいかない」との考えを示した。
人材育成については、同社では同期同士で「自分たちがほかの同期と比べてどれくらいの力を持っているかを確かめ合うためにワーキンググループをつくり、(課題を与えて)切磋琢磨する」取り組みを行っていることを紹介した。
それらを踏まえて長澤氏は、「日本の企業の知財のポジションは低過ぎる。これでは早い決定もできないし、重要な決定に関わることもできない」と指摘。社内の「知財の立場を向上させたい」と述べ、ポジションが向上すれば「知財は経営に近いところにいける。知財を知る人が経営の力を握る状況がつくれるので、知財で働く人も経営に近い判断ができるようになって、人材育成のためにも良い環境になっていく」との考えを示した。
Nokia TechnologiesのJari Vaario氏は、「(同社は)モバイルビジネスで一番名を馳せていると思われるが、その戦いには敗れた。我々は会社を再発明し、会社・ビジネス・商品を全く新しく刷新した」と、同社の取り組みを紹介。同社のモバイルビジネスをマイクロソフトに完全売却したことについては、「これはユニークなことだった」と説明した。現在は、「全く新しい企業をつくろうとしている。世界の変化を先取りしてどのような製品をつくろうとしているのか提示しようとしている」と述べた。
その上で、モバイルビジネスの売却後に残った「テクノロジーを使って何ができるか、現在検討中だ」とし、成功している事業の拡張などを挙げた。また、「新しい事業や新しいパートナーシップが一番生まれているのはアジアだ」と強調し、「アジアでの活動を再確立させようとしている。(会社をリセットして新しい事業を展開することで)5年経ったら全く違う会社になっているかもしれないというのが我々の戦略だ」と述べた。
研究成果踏まえたリーダー養成プログラム
また、東京大学政策ビジョンセンター教授の渡部俊也氏は、同大学知的資産経営研究講座の3年間の成果概要などを紹介し、人材育成プログラム「戦略タスクフォースリーダー養成プログラム」を提案した。
渡部氏は、「技術はたくさん優れたものがあるのに、それが埋没して、活用できていない。あるいは特許をたくさん持っているのに有効に使えていない」ことが日本では目立っているなどと指摘。例として喘息薬や「羽なし扇風機」を挙げ、もともと特許を持っていた日本のメーカーでは実用化につなげることができず、海外の企業が商品化したケースを紹介した。
渡部氏が提案した戦略タスクフォースリーダー養成プログラムは、知的資産経営研究講座の成果を普及するためのもの。企業の戦略実践では、欧米企業が行っているような手法(経営トップ主導の企画・意思決定、必要な経営資源は買収などで外部調達)は有効だが、日本の製造業は技術に関する経営資源が事業部門にまたがって複雑に存在しているため、欧米のような「アプローチはなかなか難しい」(渡部氏講演資料)。
そのため、「戦略策定の第一歩」として複数部門による「戦略タスクフォース」を組織して経営トップに提言するアプローチが必要とし、タスクフォースを成功させるために必要になるリーダー人材を養成する構想が取りまとめられた。リーダーの候補者は、「大企業の全社企画部門や事業部門におけるミドルマネージャー(役員クラスの参謀役)、研究開発・技術開発リーダークラス、中小企業の社長または社長後継者」などが想定されている。
戦略タスクフォースリーダー養成プログラムは、2015年度から実施される予定だ。知的資産が最大限活用されるためにも、養成プログラムの今後に期待したい。
【セミナーデータ】
- イベント名
- :知的資産経営研究講座(新NEDO社会連携講座)国際シンポジウム
- 主催
- :東京大学政策ビジョン研究センター
- 開催日
- :2014年12月19日
- 開催場所
- :丸ビルホール(東京都千代田区)
【関連カテゴリ】
その他


