セミナーレポート

竹中平蔵氏が語るイノベーションの基本

慶応科学技術展2014で基調講演を取材

2015/2/12

 慶応義塾先端科学技術研究センター(KLL)主催の「慶応科学技術展(KEIO TECHNO-MALL2014)」が12月5日、東京国際フォーラムで開催された。慶応義義塾大学理工学部の創立75周年を記念した特別プログラムでは、同大学総合政策部教授の竹中平蔵氏(元金融担当大臣・経済財政政策担当大臣)が基調講演し、イノベーションの必要性を強調するとともに、「アベノミクス『3本の矢』」についての評価を披露した。

竹中氏は終始ステージ中央に立って講演を行った
竹中氏は終始ステージ中央に立って講演を行った

「結び付き」がイノベーションの基本


 竹中氏は「日本経済の展望」をテーマに基調講演。「日本の経済は今どういう状況にあり、これからどうなっていくのか。キーワードとして、イノベーションと産学の連携がどういう役割を果たしていくのか。問題提起をしたい」と述べた。


 その上で、世界や経済、時代が「変わった」との話をよく聞くが、「何が変わったのか。変化の本質をどう捉えたらいいのか」と提起。本質的には「グローバル化」と「技術体系」が変わったとし、グローバル化については「たくさんのマーケットが拡がったので、非常に大きなチャンスが生まれた。同時にライバルも拡がった」と説明した。一方、技術体系については、「第2の産業革命と言われるようなデジタルな革命が起こっている」とした。


 さらに、英国メディア「ロンドン・エコノミスト」の分析を紹介し、「イノベーションをどのように起こすかが世界の大きな課題になっている」と指摘。イノベーションについて、経済学者のヨーゼフ・シュンペーターは「新しい結びつき、『新結合』という言葉を使っている」が、竹中氏はデジタルと通信が結び付くと「IT革命」になるなどの例を挙げ、「『結び付き』をどのようにつくるかがイノベーションの基本だ」と述べた。


 イノベーションそのものについては、「『決して技術的に新しい』ということではなく、社会の変革を伴ったトータルな社会の変化。結果として社会の進歩が実現されるような、幅広いものでなくてはいけない」と強調した。


竹中氏は「3本の矢」をこう評価


 また、竹中氏はアベノミクス「3本の矢」について持論を展開。デフレ克服に向けた第1の矢「大胆な金融政策」は、株価が57%上昇したことなどから「細かいことはともかく、一応ちゃんと飛んでいる」と評価した。第2の矢「機動的な財政政策」は、昨年10兆円、今年5兆円の補正予算を合計すると「GDPの3%に当たり、相当な財政拡大。今年の4月に消費税を上げる前までは経済は相当良くなっていた」との認識を示した。


 しかし、「2020年に向けて財政再建できるかどうか、まだよくわからない。社会保障の抜本的な改革をやらない限り、少々消費税を上げても無駄だということは比較的簡単な計算でわかる」とし、「第2の矢は、前半はちゃんと飛んだが、後半は残された課題」と述べた。


 第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略」については、イノベーションに対して大学や企業がどのような役割を果たすのかが「この中に含まれている」が、「第3の矢の評判は決してよくない」と指摘。これについては、第1、第2の矢は「経済の需要側の政策。それに対して第3の矢は供給サイドの政策なので、(成果が出るまでに)時間がかかる。同じ次元で比べてはいけない」との考えを示した。


 消費税10%への引き上げ延期と衆議院の解散総選挙については、メディアの「アンケート調査では、消費増税の延期には『賛成』、解散総選挙には『反対』のパターンにだいたいなっているが、世論は矛盾している」と指摘。経済政策の判断として、「デフレマインドが払しょくしていない中で消費税を引き上げることは、できないし、やるべきではない。延期の判断は正しい」との認識を示した。


 併せて、消費税率の引き上げを延期するには、「解散総選挙をやらざるを得ない」と述べるとともに、政治家は「何かあれば政局を起こして総理の足を引っ張ろうと考える。これが日本の政治の現実。一度、公約をして、法律まで通したものを変えることは『大義がない』として安倍降ろしが始まる可能性がある」と解説。このような状況下では「国民の信任を得るしかない。これが日本の政治のリアリズムの問題だ」との認識を示した。

展示ブースには学生のほか、企業の来場者も多く見られた   列ができていた書道ロボットのデモンストレーション
展示ブースには学生のほか、企業の来場者も多く見られた   列ができていた書道ロボットのデモンストレーション

モーションコピーロボットなどを展示


 慶応科学技術展では、70以上の展示ブースで研究成果が披露されていた。システムデザイン工学科准教授の桂誠一郎氏は、人間の動作をロボットで再現する「モーションコピーシステム」を用いた書道ロボットと「ヘルスケアロボット」を展示。書道ロボットは「熟練技能の定量評価やロボットへのスキルの転写、スキルトレーニングへの応用など、革新的な技能伝承の実現が期待される」としている。


 竹中氏の基調講演は、立ち見の入場者が続出するなど依然として多くの人々の注目を集めていた。また、ブースでの展示も実機を用いたデモンストレーションも多く行われていた。企業と研究者の商談風景もあり、産学連携を肌で感じる場面が多くあった。

(高橋 慧)

【セミナーデータ】

イベント名
:第15回慶応科学技術展
主催   
:慶応義塾先端科学技術研究センター(KLL)
開催日  
:2014年12月5日
開催場所 
:東京国際フォーラム(東京都千代田区)

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