セミナーレポート

デジタル印刷の現状と最新電子写真技術

2014日本画像学会シンポジウムを取材

2015/2/5

 デジタル印刷の現状と最新電子写真技術と銘打って、日本画像学会2014年度シンポジウムが2014年12月5日に虎ノ門の発明会館で開催された。オフセット印刷やコピー機の仕組み、画質や用紙などに関する講演が行われた。

発表者に直接質問できるこの時間は熱心な質問者が列を作っていた
発表者に直接質問できるこの時間は熱心な質問者が列を作っていた

オフセット印刷とは


 シンポジウムではオフセット印刷の概略を版画で説明していた。彫刻刀で彫った版木の溝を水で濡らしておく。油性のインクを版木に塗る。すると水が滲みている溝にはインクが付かない。版木にゴム版を重ねると、版木に付いたインクだけがゴム版に付く。そこでゴム版に紙を乗せると印刷できる。


 ゴム版にインクを移すことをオフ、ゴム版のインクを紙に転写することをセット。だからオフセット印刷という。オフセット印刷は平版印刷なので版に凹凸がない。アルミ版上で、水とインク(油)が反撥し合う性質を利用して、インクがのる部分とのらない部分とを分けている。


コピー機の仕組み


 コピー機の仕組みをおさらいしてみる。原稿のコピーができるまでには、1.帯電、2.露光、3.現像、4.転写、5.定着、6.後処理の6工程がある。帯電はドラムと呼ばれる円柱状の感光体表面をマイナスに帯電させる。版画で言うと板の状態。露光とは、印刷されるマイナスの電荷部分とそれ以外の部分を決定することで、版画では彫りの段階。現像はマイナス電荷の部分にプラスに帯電させたトナーをくっつけることで、版画ではインクを塗る工程だ。


 一方、転写はトナーを紙に移すことで、このときトナーは粉状だ。定着は、トナーの付いた紙に熱と圧力をかけトナーを液状にして紙に定着させる。版画でいうとインキをつけた版木に紙を乗せてバレンでこする工程。後処理は、感光体ドラムに残ったトナーを落とすこと。この工程により原稿はコピーされている。

キャノン 映像事務機事業本部
冨澤岳志氏   富士ゼロックス デバイス開発本部
林良宏氏
キャノン 映像事務機事業本部
冨澤岳志氏
  富士ゼロックス デバイス開発本部
林良宏氏

画質・用紙対応力要求との両立


 「従来機のサイズを40%、重量で55%、価格で35%、毎分80ページの速度の機器を開発した。高画質とダウンサイジングを両立した技術は2つある」とリコー 画像エンジン開発本部の吉田健氏は言う。


 まず、カラーPxP-EQトナーは、定着延展性を向上し、色再現領域を拡大した。また、低温定着化により、定着装置の省サイズ化に成功したとのこと。次に、面内濃度ムラ補正技術は、印刷物の画像濃度ムラを低減するだけでなく、高精度化に伴う装置のサイズ、コスト増を回避することができた。


 ドラム類は回転運動をしているため、ミクロで見ると軸がブレている。このため周期的な色ムラが生じる。回転周期に合わせ現像と帯電の電圧を調整することで色ムラを最小限に抑えた。


 トナーを紙に転写する時、トナーは紛体なので紙の凹凸によってムラができる。これをAC転写という技術によって転写効率を高めている。


高品位な印刷と多彩なメディア対応力を実現


 「省スペース、高画質、生産性、対応力、安定性をもった機種をMidやLightマーケットをターゲットに開発した」と語るのはキャノン 映像事務機事業本部の冨澤岳志氏だ。CVトナーはトナー表面がすべすべした球状にちかい形をしている。材料微分散により高画質に、溶融特性により生産性向上を、表面形状により多様な紙質への対応力、表面性により安定性が増した。このことによりエンボス紙、封筒などの凸凹のあるメディアにも対応することができた。


 一方、「二成分逆転現像の改良、中間転写ベルト材料特性の見直し、デジタルトナーの採用によって画質が向上した」と語るのはコニカミノルタ 開発本部PP製品開発センターの石塚一輝氏。二成分逆転現像の改良によりトナーの粒状性が改善された。中間転写ベルト材料特性の見直しにより文字再現性が向上。デジタルトナーの採用により鮮やかな赤が再現できるようになった。


高生産性をコンパクトに実現


 新しいイメージング、デジタル処理技術、定着器の小型化、冷却装置の小型化などにより高生産性をコンパクトに実現、と富士ゼロックス デバイス開発本部の林良宏氏は語る。 イメージング、デジタル処理技術を刷新し、新規開発のコントローラ、高速シリアル伝送、新規開発画像処理ASIC(application specific integrated circuit、特定用途向け集積回路)により、処理の高速化、伝送能力の強化、高画質出力が実現。定着器を見なおし小型化を実現し、体積、質量を前任機の約半分にすることができた。


 印刷と言っても個人使用ではインクジェットの普及機で充分であり、インクが高すぎるくらいしか考えていなかった。今ではコンビニにも当たり前のようにコピー機が設置されている。だからコピー技術は完成し進化の終わったもの、従来の印刷とは別のセグメントにあるものだと思っていた。ところが、コピー技術つまりデジタル印刷は進化途上にあり、精密化、高画質化、小型化の最前線で改良や新開発に取り組んでいるエンジニアがいることに新鮮な驚きを感じた。


 それはオーサーズインタビューにも現れていた。発表者に直接質問できるこの時間に熱心な質問者が列を作っているだけでなく、発表者は熱心かつ楽しそうに応えている姿が印象的だった。現在のデジタル印刷技術が何年か後に個人利用の分野に入ってくることを想像するだけで楽しくなる。

(石丸隆雄)

【セミナーデータ】

イベント名
:2014日本画像学会シンポジウム
主催   
:日本画像学会
開催日  
:2014年12月5日
開催場所 
:発明会館(東京都港区)

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