セミナーレポート

データを活かすアナリティクスの適用

情報処理学会主催のシンポジウムを取材

2015/1/19

 情報処理学会は2014年12月1日、ビッグデータ解析に関する連続セミナー「アナリティクス適用事例」を開催。ビッグデータに注目が集まる中で、データをどのように活かすことができるのか、またその手法について講演が行われた。

ビッグデータの分析に関する講演が行われた会場。
参加者は真剣に耳を傾けていた
ビッグデータの分析に関する講演が行われた会場。参加者は真剣に耳を傾けていた

意思決定に必要なビッグデータ分析


 情報・システム研究機構の統計数理研究所で副所長を務める丸山宏氏は講演で、まだ分析されていない多くのデータを有効に利用することができれば、ビジネスの価値を創出することができるとした。例えばマッキンゼーGlobal Instituteの2011年発表によるとビッグデータをうまく利用することによって、米国のヘルスケア産業で3000億ドルの価値を生み出すことができるという。


 また丸山氏は現在、IT業界で用いられるビッグデータの解析については、Hadoop(大規模データを効率的に分散処理するためのソフトウェア基盤)のような技術が多く活用されていることに触れた。一方で、ビッグデータ解析しても「何かおもしろいことが見つかった」だけではビジネスにつながらないと指摘。データ分析によって意思決定がなされることが重要な意味をもつとしている。


 近年では、データマイニング(データ群から潜在的な顧客ニーズを掘り起こす手法)という技術があり、「何が起きたか」を知ることで、意思決定につなげることができる。しかしそのためには裏に何が起きているのかというイマジネーション、データをみる力が必要になるとのことだ。


 例えば、ビールとおむつが同時に売れる傾向があることがわかっても、売上増や顧客満足度につながらなければ意味がない。そのため、どのようなシナリオをつくって、パラメータを設定するかがわからなければシミュレーションが成り立たないというわけだ。


 丸山氏はまた、人材の重要性についても強調している。データサイエンティストには基本的なデータ分析技術に加えて、サービスを提供する力、サービスを受け取る能力が必要となる。特にデータ分析サービスの分野では、発注する側にも基本的なリテラシーとして、提供された分析結果をビジネスに生かす能力が求められている。

情報・システム研究機構
丸山宏氏   日本IBM東京基礎研究所
渡辺日出雄氏
情報・システム研究機構 丸山宏氏   日本IBM東京基礎研究所 渡辺日出雄氏

広がる応用


 一方、日本IBM東京基礎研究所の渡辺日出雄氏は、様々なアナリティクス技術の応用事例について解説した。データの増大に伴い、機械学習技術に基づくWEB検索や推薦システムの実用化が進んでいる。クレジットカードの不正検知や銀行の与信業務ではすでに必須の技術となっている。


 渡辺氏によるとIBMの東京基礎研究所では、様々なテキストマイニングの技術を活用しているという。例えば顧客満足度の向上に役立てるために行うサポートセンターの通話記録の分析。さらにソーシャルメディアに投稿された記事を分析することで、発言者の感情や状況について推測を行うことができるという。


 また自然言語処理や機械学習などの技術を組み合わせ、構造化されたデータベースから収集し評価するという複雑な計算メカニズム(Watson)を開発しているという。そのほか、スマートフォンのユーザの操作ログを使い、ユーザのスキルレベルなど分析する手法を開発。また、ドライブレコーダからヒヤリハットのデータ状況を分析に活用することも可能だとしている。


 渡辺氏はこれらの適用事例をふまえ、従来の人間の直観に頼った意思決定から、数理科学的分析に支えられた意思決定が今後の標準となるとしている。


アドネットワークへの応用


 また、ソネット・メディア・ネットワークの磯崎直樹氏は、アドネットワークの手法について紹介した。アドネットワークとは事業者が広告主から広告を一手に引き受け、パッケージ化して広告配信・管理するとサービスのことだ。このアドテクノロジーが普及してきた背景には、ビッグデータは活用が進み、データの紐づけや加工処理速度が上がったことが挙げられる。アドネットワーク広告でも、配信に様々なマッチング技術が提供され、分析とアクションの一体化が容易になってきたという。


 また、アドネットワークの進展によって、従来の広告手法よりも入札の工数を大幅に削減することができるようになった。他にも顧客分析や施策検討の時間が省けるようになるなど、これまで必要だった時間・手間が大幅に改善されたとのことだ。


 ビッグデータの活用は日増しに多くなってきている。それをどのように解析するか、分析手法についても大きな関心が寄せられている。シンポジウムで紹介されたものは今後のビッグデータ解析の方向性を示してくれる内容だった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:アナリティクス適用事例
主催   
:情報処理学会
開催日  
:2014年12月1日
開催場所 
:化学会館(東京都千代田区)

【関連カテゴリ】

IT政策