セミナーレポート

6割が気温上昇「2度未満」の法制化支持

地球規模の気候リスクへの対処法を議論

2015/1/15

 地球温暖化や気候変動への対応策を議論するCOP20がペルーでスタートした日、都内では「地球規模の気候リスクにどう対処するか」をテーマにした一般公開シンポジウムが開かれた。気候変動に対する市民の考え方の統計や大気中の二酸化炭素(CO2)を減らす「バイオマスCCS」の研究成果などが報告された。

 特に、「市民の考え方の統計」は、整合的な回答が得られるようシミュレーターを活用するなど従来とは違う手法で進められたものだ。

シンポジウムでは研究者の講演を踏まえたパネル討論も行われた
シンポジウムでは研究者の講演を踏まえたパネル討論も行われた

シミュレーターで整合的な回答を導き統計


 シンポジウムは、環境省が環境保全のための調査研究・技術開発を推進するために創設した「環境研究総合推進費」を活用した「S‐10プロジェクト」の研究活動の一環として行われたもの。会合では、プロジェクトメンバーが研究成果などの情報提供を行った。


 三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の宗像慎太郎氏は、日本や先進国などで実施する「気候変動に対する市民の考え方」の調査について報告した。宗像氏は、調査について、「『温暖化対策をどの程度重視するか』は、社会的な議論とそれに基づく合意形成が必須だ」と指摘。しかし、過去には科学的な説明をした上で実施した調査でも、「目標温度と(CO2の)削減量が不整合」な結果が導き出されるなど「市民間の議論の難しさ」があったとした。そのため今回は、回答の選択肢に応じて気候変動の物理・社会・経済的な影響を示すことができるシミュレーターを使用し、「市民の温暖化意識を確認した」と説明した。


 その上で、これまでに実施した日本と米国での調査結果を紹介した。それによると、気温上昇の国際目標値については、日本の6割が法制化を支持しているが、米国では7割が法制化に反対。「実施すべき対策」では、日本は「火力発電所の改善」や「原発拡大」、省エネ、再生エネルギーの拡大など「どの分野でも、『途上国の対策より先進国の対策を優先すべき』を支持」していた。しかし、米国では、「途上国と先進国の間に差をつけない」傾向がみられた。


 さらに、上記の調査で異なる回答傾向を示した4名を対象にグループインタビューを実施。インタビューでは、自身の関心の高い分野では社会的意思決定に強い参画を希望する一方、関心の低い分野では「社会的意思決定を他者へゆだねる傾向が示唆された」と分析した。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 宗像慎太郎氏   国立環境研究所地球環境研究センター主任研究員 山形与志樹氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 宗像慎太郎氏   国立環境研究所地球環境研究センター主任研究員 山形与志樹氏

「最も潜在能力ある」バイオマスCCS


 続いて、国立環境研究所地球環境研究センターの山形与志樹氏が、「大気中CO2を減らすことは可能か?」をテーマに「バイオマスCCS」について発表した。


 バイオマスCCSは、大気中のCO2を吸収・除去することで積算のCO2排出量を抑制する「ネガティブ・エミッション」技術の一種で、バイオマス発電で発生したCO2を回収して海底等に貯留するもの。植林もネガティブ・エミッションの一類だが、バイオマスCCSは食用作物の成長などバイオマスエネルギーを生成しながらネガティブ・エミッションを行うことができるため、近い将来の利用について「コスト・技術的な面で最も潜在能力がある技術」とされている。


 専門家による地球温暖化についての政府間パネル“IPCC”は、地球温暖化を2度以下に抑制するシナリオを報告している。このことに関連して山形氏は、2度目標達成に必要なCO2排出量について、「2080年以降の化石燃料からのCO2排出を正味で負にする必要性がある」と分析。世界各国の研究モデルの多くが「大気中のCO2を減らすため、世界規模でのネガティブ・エミッション技術の実施を想定している」と報告した。


 さらに、トウモロコシやサトウキビなど「第1世代」のバイオマスでは、シナリオ達成に必要な量の68%しか回収できず「間に合わない」と指摘。食用ではなくバイオマスエネルギー専用として育てる「第2世代」については肥料を大量に使った上で、「バイオマスをつくる段階でもCO2を回収し、燃料として利用した場合にもCO2の回収を最大限に行えば、ぎりぎり期待されているネガティブ・エミッションを実現できる」と説明した。


 一方、今後の課題として、大規模なバイオマスCCSの実施は、現時点ではバイオマス燃料の種類や利用・貯蔵場所、コストなどを考えると「不確実性が大きい」と強調。「木質バイオマスがどこまで使えるのか」は、土地利用や生物多様性、水資源利用、食糧生産との競合などについて「さらに研究を深めなければならないと語った。


 シンポジウムが開催された日にペルーで始まったCOP20では、2020年以降の地球温暖化対策に関する国際的な枠組みが議論され、すべての国が共通ルールで温暖化ガスの削減目標を定めることを決めた。温暖化対策を巡っては、これまでに大量のCO2を排出して発展してきた先進国と途上国の対立が続いている。また、日本は、各国の環境NGOが温暖化対策に前向きではない国に贈る「化石賞」を複数回受賞するなど国際的に厳しい視線が注がれている。全5年度のS‐10プロジェクトは3年度目に入っているが、今後どのような「人類の選択肢」を取りまとめ世界に貢献していくのか、注視したい。

(高橋 慧)

【セミナーデータ】

イベント名
:環境研究総合推進費S‐10一般公開シンポジウム
主催   
:環境研究総合推進費戦略研究プロジェクトS‐10
開催日  
:2014年12月1日
開催場所 
:東京大学伊藤国際学術センター伊藤謝恩ホール(東京都文京区)

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