セミナーレポート

NICTが進める価値ある研究

自動車に関するセキュリティ、音声翻訳技術などを紹介

2014/12/25

 NICT(情報通信研究機構)は2014年11月27日から28日までの2日間にかけてNICTオープンハウス2014を開催した。NICTが取り組む各研究について、一般の人々に公開。さらに個々の研究についてそれぞれの研究者が講演を行った。

様々な研究成果が公開されたNICTオープン
ハウス2014の会場の様子
様々な研究成果が公開されたNICTオープンハウス2014の会場の様子

人間の生体に関する研究


 脳情報通信融合研究センターでセンター長を務める柳田敏雄氏は講演で、人間の脳や筋肉の動きの解析について説明した。


 柳田氏は「生体は複雑であるのに、省エネである」と述べた。例えばヒトの大脳は、140億の神経細胞をもつ巨大な“システム”で、10の14乗の神経細胞における結合の組み合わせをもつほど、複雑だ。もしスーパーコンピュータでこの結合の組み合わせ(10の14乗)を厳密に計算すると、10の14乗ワットもの電力が必要となり、原子力発電機が何億基あってもなりないということになるという。


 また脳は記憶容量の大きさも特筆すべきだ。映画『レインマン』のモデルになった発達障害をもつキム・ピークは7600冊の本を丸暗記し、米国内すべての市外局番や高速道路や郵便番号などを記憶したという逸話も残されている。


 柳田氏の研究室ではこのように驚くべきパフォーマンスをもつ、脳や生体のメカニズムを解析する研究を行っている。例えば心臓に関しては、心臓拍動や、力学測定、筋肉繊維の力学測定などを解析することができる。柳田氏は心臓拡張症などの病気にこうした解析を役立たせようという試みを紹介した。


 また、柳田氏は脳活動や視覚認知における解析の最先端についても言及。人間が見ている画像から、脳がどう認識するのか、脳活動から推定することができるとしている。

脳情報通信融合研究センター センター長 
柳田敏雄氏   ネットワークシステム研究本部室長
西永望氏
脳情報通信融合研究センター センター長
柳田敏雄氏
  ネットワークシステム研究本部室長
西永望氏

自動車の匿名性を確保する研究


 一方、自動車・ITSへの情報セキュリティ対策について、ネットワークセキュリティシステム研究所の盛合志保氏が講演した。盛合氏は自動車制御に関わるセキュリティ対策について触れた。


 近年では、自動車部品全体における電子部品の割合がおよそ40%にまで高まるほどになっている。その結果、ソフトウェアの開発工数が非常に膨大になってきている状況だ。また自動車に組み込まれる部品のなかには、外部のネットワークにつながっているものも多く存在する。スマートフォンを活用した情報サービスも次々と車のなかに組み込まれており、USBをつなぐのももはや日常化している。


 こうしたなか、盛合氏は車がネットワークにつながることで、脅威も増えている点を指摘。さらに自動車関連のビッグデータを利活用する際には、ネットワーク上を流通するデータのプライバシー保護技術の確立が必要となっている点を解説した。


 盛合氏の研究グループでは自動車の匿名性を確保する研究を行っている。渋滞情報や道路情報、経路情報などを車から取得する際に、暗号技術を用いようという取り組みだ。NICTではこれからも、自動車に関するセキュリティ技術の研究開発や普及を目指していく方針だ。

音声翻訳技術を活用


 また、NICT ネットワークシステム研究本部室長の西永望氏は、多言語音声翻訳システムについて説明した。西永氏は自動翻訳のメリットを紹介。コンピュータに関する自動翻訳は、コストパフォーマンスが良い、24時間365日利用可能という特長があるという。


 さらに国内では2020年に東京でオリンピックが開催されることもあり、多くの外国人観光客が訪れている。アジアだけでも韓国、台湾、香港、シンガポールなどからの観光客も多く、自動翻訳にニーズも益々高まっているという。


 こうしたニーズを受け、NICTではすでに会話する人の音声を認識し、話した内容を翻訳するスマートフォン用アプリ「VoiceTra4U」をリリースしている。同アプリは、27言語に対応しており、シンプルな操作で使いやすいことが売り。現在100万ダウンロードだが、NICTでは本格的な普及に向けた体制を整えているという。


 具体的には、NICTの新しい研究センター・研究開発室をつくり、2014年10月からスタートするなど体制を強化している。また民間の研究機関や研究員(パナソニックやソニーなど)との協力を強めるなど、今後に向けて手綱を引き締めていくとのことだ。


 人間の脳や筋肉の動きの解析、自動車に関するセキュリティ、音声翻訳技術など、NICTの研究では様々な研究が進められている。どの技術も将来性の高いものが多く、魅力も大きい。今後の研究成果に注目していきたい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:NICTオープンハウス2014
主催   
:NICT(情報通信研究機構)
開催日  
:2014年11月27日~28日
開催場所 
:NICT本部(東京都小金井市)

【関連カテゴリ】

情報セキュリティIT政策