セミナーレポート

人口減少社会における新聞のあり方

新聞協会主催のシンポジウムを取材

2014/12/22

 日本新聞協会は2014年11月21日、東京都千代田区にある一橋講堂にてシンポジウム「報道とつくる知の空間」を開催した。社会的なテーマとなっている人口減少社会などの課題も触れながら、「信頼性のある情報や知識とは何か」「新聞の役割とは」などについて講演が行われた。

新聞の将来性や、人口減少社会の話題に
関心が集まったシンポジウムの様子
新聞の将来性や、人口減少社会の話題に 関心が集まったシンポジウムの様子

人口減少社会のなかで


 東日本大震災からの復興について話し合う有識者団体・日本創生会議で座長を務める増田寛也氏は、冒頭で人口減少社会について説明した。増田氏は人口減少の要因について、20~39歳の若年女性の減少と地方から大都市圏(東京圏)への若者の流出が原因であると指摘。「ある街で20代~30代のいわゆる『若年女性』が何人いるかということが、その街の将来の人口を決めている大きな要素となる」とし、大学進学や就職のため地方から東京に若者が流出していることが人口減少に直結するとした。


 また推計によると、2040年には、全国896の市区町村が「消滅可能性都市」に該当する。そのうちの523市区町村は人口が1万人未満となり、消滅の可能性が高くなるという。


 2013年の合計特殊出生率は1.43で、2005年で最低の数字となった1.26よりは多少回復したものの、依然低い数字となっている。特に東京が1.13と極端に低い。これについては住宅が狭く、若い人にとっては通勤時間が長いなど様々な要因が考えられるという。増田氏は「県全体の市町村ごとに人口の減る要因が違っている」と発言。対策を市町村ごとに絞る必要があるとした。


 さらに増田氏は人口減少問題と新聞との関係について言及。増田氏は人口減少社会に対して「年齢構成で極めてアンバランスがあり、経済の規模を縮小させる」という認識を持つ。しかし「今の日本に人口が減少することが果たして悪いことなのか、人口が過密な国土で人口が減少することがいいという意見がある」と説明。そして真実を掘り下げるという意味でも、必要な議論をしてもらいたいとしている。

日本創生会議座長 増田寛也氏   二ワンゴ代表取締役 杉本誠司氏
日本創生会議座長 増田寛也氏   二ワンゴ代表取締役 杉本誠司氏

話題となる情報を摂取し続ける現代


 一方、ニコニコ動画などのサービスを手掛ける二ワンゴ代表取締役の杉本誠司氏は、人々を取り巻く情報の劇的な変化について言及。「情報を自分のなかの所有物のような形にしてそれを蓄積するようになっている」と意見を述べた。さらに家で新聞を読んで情報を摂取する必要性がなくなったことが大きいと説明した。手元にある情報端末によって無料で情報が手に入り、それで事が足りるのであれば、新聞を購読する必要性が薄らぐというわけだ。


 またSNSが普及していることが今の時代は大きいと指摘。例えば昭和の時代は情報のベースを担っていた新聞のアップデートは、1日1~2回などと限定的だった。しかし今は、食事中だろうが、トイレに入っていようが、コミュニケーションが発生している。そのため情報を摂取するためには情報のソースが必要となる。


 ところが、新聞やテレビの情報だと、情報のサイクルが追いつかない。そこで「この水飲んでいます」のような、ある種どうでもいい情報が混じる。しかし。その人にとっては、他者とコミュニケーションをとるために重要な情報となるというわけだ。


 もちろんネットにおいても「ジャーナリズム」は必要であるというのが、杉本氏の見解だ。新聞社が担う「事実関係を深く掘り下げていくこと」がネットの世界でも必ず役に立つとしている。しかし、そうした情報を必要としている人は限定的となる。そのため新聞がこれまで行ってきた情報伝達するところを、維持してデジタル空間に持ち込むのであれば、新聞を新聞としてみる空間をデジタル世界でもコミュニティをつくり、そこでサービスを展開する必要があるとしている。


変わる知のあり方


 一方、精神科医で立教大学教授の香山リカ氏は、従来の「知」のあり方が今日では変わってきていると説明。「グーグルスカラー」という論文を主に検索するサイトも出てきており、図書館のような従来型とは違う新しい知の集積であるとしている。


 新聞(紙のもの)は、その日の出来事が書いてあるものの、読者は双方向で意見を言い合うことができない。一方ネットで掲載されている情報の場合、即座に記事に対する意見が書き込めるし、しかも情報を摂取するのは無料。そのため新聞、本など従来のアカデミズム、ジャーナリズムに対する人々の要求・信頼感が変わりつつあると話している。


 人口減少社会で、しかもインターネットが普及し、誰でも情報が手軽に手に入る時代のなか、新聞を取り巻く環境は厳しいことがシンポジウムに参加することで肌に感じることができた。新聞ならでの真実を追求などの特長をネット社会でどう活かしていくか、真価が問われそうだ。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:報道とつくる「知」の空間
主催   
:日本新聞協会
開催日  
:2014年11月21日
開催場所 
:一橋講堂(東京都千代田区)

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