セミナーレポート

位置情報解析、選手の給料にも反映

スポーツや観光など「人の動き」とG空間

2014/12/8

 最先端の地理空間情報技術にふれることができる「G空間EXPO2014」が都内の日本科学未来館で、11月13~15日の3日間にわたって開催された。高度で専門的な展示などはビジネス層のニーズに応えるだけでなく、常設展示を鑑賞しに訪れていた一般来場者の関心も強くひきつけていた。

未来館の一般来場者も見学していた企画展示ゾーン
未来館の一般来場者も見学していた企画展示ゾーン

試合中の位置情報活用へ人材育成が急務

 

 G空間社会への理解を深めるための講演・シンポジウムでは、東京大学空間情報科学研究センター(CSIS)が初日に、「人のうごき」に着目したプログラムを展開。スポーツや観光、健康などをテーマにした研究が報告された。


 慶応義塾大学総合政策学部准教授の古谷知之氏は、スポーツのデータ解析の現状やデータ収集方法などを解説した。データ解析は4大スポーツの野球、サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールをはじめ「ほとんど全ての種目で使われている」が、「国や種目によってデータ解析のレベルやポリシーが異なる」と指摘。フィールド上の選手の位置情報などのデータ収集については、競技場の全体像を撮影しながら行う「ビデオトラッキングシステム」やGPSなどの使用例を説明した。


 ビデオトラッキングシステムは2015年から、JリーグがJ1の全試合で導入し、解析を行う予定だ。


 野球のデータ解析については、メジャーリーグが先進的とし、ピッチャーの場合には、フィールドのどこに打球を飛ばされたかなどのデータを蓄積して給料に反映している例を挙げた。さらに、「野球だけでなくアメフト、ラグビー、サッカーもデータで給料が決まる世界になっている」と説明。その上で、スポーツの分野でもデータは貴重との認識を示し、データを活用するための「アナリストの人材育成が急務だ」と強調した。

慶応義塾大学総合政策学部准教授 古谷知之氏   首都大学東京都市環境学部准教授 倉田陽平氏
慶応義塾大学総合政策学部准教授 
古谷知之氏
  首都大学東京都市環境学部准教授 
倉田陽平氏

SNS位置情報からポテンシャルマップ作成


 首都大学東京都市環境学部准教授の倉田陽平氏は、日本に来る外国人の観光行動を分析した研究を紹介した。観光行動を精度高く知る方法には、ウェアラブルカメラを装着して観光してもらうなどの手法が考えられるが、これではコストや旅行者へのストレスが高いと指摘。一方、SNSから「膨大で低コストなデータが得られる」としたほか、“Suica”などの乗車券のデータも有効な手法との考えを示した。


 その上で、実際に行った動物園でのGPS行動調査などを報告。SNSの投稿を活用した観光行動の分析については、「旅行者がネットにあげている情報を使わない手はない」とし、Facebook等の投稿に付属した位置情報を取得して投稿が集中している場所を地図上に表す「観光ポテンシャルマップ」などを紹介した。


 併せて、倉田氏は旅行プラン作成支援ツール“CT Planner”を紹介した。同ツールは、「検討してみたい観光地は?」「あなたの旅行スタイルは?」などの質問に回答し条件を入力していくと「自分好みの旅行プラン」が作成できるもの。倉田氏は、IPアドレスを取得することで各国の人々が組むプランから行動予定を知ることができるとの考えを示した。


 このほか、国土地理院が新たな位置情報基盤として提唱・推進する「場所情報コード」をテーマにしたシンポジウムも初日には開催された。場所情報コードは、ネットワーク上でモノを識別するためのコード“ucode”に位置による分類を加えたもので、固定された特定の地点を識別し、その地点に関する情報を呼び出すことができるもの。


 シンポジウムでは、国土地理院が場所情報コードを解説するとともに、事業者が研究成果を報告。屋内ナビゲーションを研究したエル・エス・アイ ジャパン株式会社は、道路に埋設した場所情報コードを発信するICタグ付きの点字ブロックで、視覚障害者らを正確・安全に誘導しようとする取り組みを紹介した。


 テレビでスポーツ中継を観ると、画面上に様々な分析データが表示されることがある。慶応大准教授の古谷氏はデータ解析が進むと、人工知能による「予測」の段階に移行するとの認識を示していた。競技を行うのは人間なので、「試合終了まで何が起こるかわからない」などといったスポーツの醍醐味は残り続けるだろうが、データ分析はスポーツ中継に大きな影響を与えそうだ。

(高橋 慧)

【セミナーデータ】

イベント名
:G空間EXPO2014
主催   
:G空間EXPO2014運営協議会
開催日  
:2014年11月13日~15日
開催場所 
:日本科学未来館(東京都江東区)

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