セミナーレポート

データ活用の壁を突破し、世界の潮流に

Japan IT Week 秋 2014を取材

2014/11/17

 7つの専門展で構成するJapan IT Week 秋 2014が2014年10月29日から3日間開催された。ビッグデータ活用展の特別講演では、政府がビッグデータやオープンデータの今後の展望を語った。

Japan IT Weekの会場。7つの専門展を同時開催した
Japan IT Weekの会場。7つの専門展を同時開催した

米国では製品・サービスの改善に関心


 「ビッグデータ」と「オープンデータ」の両キーワードは、以前と比べると“ブーム”は落ち着きつつある。政府からは、IT投資に対する姿勢について、先進国の米国とは異なる結果が出たアンケート調査が報告され、実証実験結果の普及展開などさらなる取り組みの必要性も示された。


 特別講演ではまず、経済産業省商務情報政策局情報経済課で課長補佐を務める佐々木紀子氏が、「既にデータ利活用は世界の潮流になっている」と指摘し、海外のビジネス事例を紹介。最近では、Googleが「データが資産であるということに気付き始めている」とし、Nestを買収した例を挙げた。Nestは、暖房をコントロールする「スマートサーモスタット」などスマートホーム関連製品などを扱っている企業。買収額は32億ドルと「かなり高いと思われる値段」だが、それはGoogleが「データの重要性に気が付いているから」との認識を示し、今後も注視していくとした。


 佐々木氏は、2013年に日本と米国を対象に行ったリサーチ結果も報告。調査はアンケート形式で、「IT投資に対する姿勢」などについて回答を求めた。それによると、「IT投資によってもたらされた効果」では、日本は「社内業務の効率化・労働時間の減少」が最も多く、次いで「社内情報の共有化」が続いた。ところが米国では、「製品・サービス提供の迅速化・効率化」などが多くの回答を集めており、このことについて佐々木氏は「製品・サービスを改善することに注視している」と分析した。


 併せて、経産省が取り組む「データ駆動型(ドリブン)イノベーション」についても解説した。データ駆動型(ドリブン)イノベーションは、「企業が壁を超えてデータを共有・活用し、新たな付加価値を生む」というもの。同省は、データの利活用による新ビジネス創出や社会課題の解決を実現するため、多種多様な企業や団体、大学などが参加する協議会を2014年6月に設置した。佐々木氏は、同協議会で近く中間取りまとめが行われることなどを説明した。

経済産業省商務情報政策局 佐々木紀子氏   総務省情報流通行政局 堀口裕記氏
経済産業省商務情報政策局
佐々木紀子氏
  総務省情報流通行政局 堀口裕記氏

11都道府県・39市町村が取り組みを宣言


 総務省情報流通行政局情報流通振興課で課長補佐を務める堀口裕記氏は、最新のオープンデータ戦略をテーマに講演。米国や英国、福井県鯖江市などのオープンデータの取り組み事例などを紹介した。それによると、現在、日本の地方自治体では都道府県で11団体、市町村で39団体がオープンデータに取り組んでいることを宣言しているという。


 例えば静岡県は、都道府県では初のオープンデータカタログサイトを開設。千葉市は、オープンデータを活用して地域課題を解決する「ちばレポ」を実施している。ちばレポは、市民が道路や公園の遊具の損傷などをPCやスマートフォンで投稿(レポート)し、市が課題の分析・解決を図るもの。市民と行政が課題を共有し、協働で課題解決に取り組むことが評価されている。


 国内の取り組み事例を紹介した上で堀口氏は、「いまひとつオープンデータがブレイクスルーしていない」との懸念を示し、課題解決に向けたヒントを提言。現在、国や先進的な一部の自治体で取り組みがみられるものの、「オープンデータの利活用を進めるには、一部の自治体だけではなく全国的な普及展開が重要」と強調した。


 また、オープンデータを活用して経済活性化につなげるビジネスモデルの創出は、海外も含め「まだまだの状況だ」と指摘。国は実証実験などのこれまでの成果を普及展開するとともに、各地域の情報システム事業者等がオープンデータを活用した新ビジネスを行える環境整備に取り組む考えを示した。


 ビッグデータやオープンデータは、新たな価値を創るための「手段」であって、「目的」ではない。特にビッグデータは、2013年の新語・流行語大賞の候補語に選ばれていたが、そもそも「流行」という言葉もそぐわない。データを分析するデータサイエンティストや統計に注目が集まっているのは、ビッグデータの取り組みが、データの提供方法からデータの活用方法を考える段階に移行していることを示しているのかもしれない。新ビジネスモデルが、世界に先駆けて国内で創出されることを期待したい。

(高橋 慧)

【セミナーデータ】

イベント名
:Japan IT Week 秋 2014
主催   
:リード エグジビジョン ジャパン
開催日  
:2014年10月29日~31日
開催場所 
:幕張メッセ(千葉県千葉市)

【関連カテゴリ】

トレンド