セミナーレポート

クラウド時代のソフトウェア開発

情報処理学会主催のセミナーを取材

2014/11/4

 情報処理学会は2014年9月25日にクラウドを利用したソフトウェア開発に関するシンポジウムを開催した。開発から運用に至る過程で利用する技術について講演があった。

クラウドを利用したソフトウェア開発
に多くの質問が出た会場の様子
クラウドを利用したソフトウェア開発に多くの質問が出た会場の様子

アマゾンの展開するクラウド

 

 アマゾンデータサービスジャパン 公共担当ソリューションアーキテクトの吉荒祐一氏はアマゾンウェブサービス(AWS)について説明を行った。AWSとは同社が展開しているクラウドサービス。仮想サーバやストレージ、データベースなどを利用できるクラウドプラットフォームだ。仮想であるためサーバを増やす、もしくは消すことがローコストでできるという。アマゾンは物流や受発注をする際に、様々な販売業者にクラウドサービスとして利用されるため、より利便性を高めようと同サービスの開始に至った経緯がある。


 吉荒氏は「ハードウェアを購入し、システムを構築するという方法をとると、場合によってはシステム上の無駄なキャパシティを使い、機会損失が生じてしまう」と説明。AWSの場合、例えば、ストレージを実際の容量に応じて、1GBいくらというかたちで課金する手法をとっている。企業は自社の成長に合わせて仮想サーバを拡張し、その分だけキャパシティを追加して使えばよいので、コストなどの無駄が減るとのことだ。


 またアマゾンでは11.6秒ごとにデプロイ(システムを利用可能な状態にすること)を行っている。また、1時間当たり、最高1079のデプロイ回数を記録しているという。吉荒氏は、いつだれがどの環境、どの段階で行うのか、どういったデプロイのパターンがあるのかを考える必要があるとした。

アマゾンデータサービスジャパン 吉荒祐一氏   デンソー 松本直樹氏
アマゾンデータサービスジャパン
吉荒祐一氏
  デンソー 松本直樹氏

リリース回数は試行錯誤の結果


 カイゼンプラットフォームの伊藤直也氏は、WEBサービスの開発プロセスに関する講演を行った。同社はA/Bテスト(異なった2つのパターンのウェブページをつくり、ユーザに利用させて効果を測るテスト)をクラウドで行うサービスを提供する企業だ。従業員50人程だが、昨年年間で最も伸びたスタートアップ企業として注目を集めている。


 伊藤氏はWEBサービスがどの程度の頻度で、アップデートを行っているかについて言及した。例えばフェイスブックは、1週間に1回は確実にリリース(ソフトウェアのアップデートの発表)を行っている。組織が巨大になっており、サーバは何十万台になっているにも関わらずである。またグーグルは2000年頃に、500人程度の規模だったが、今では全世界に何万人という社員がいる。しかしリリース頻度自体は上がっているとのことだ。


 伊藤氏が在籍した「はてな」では、1週間に1度、新機能のリリースを行っていたという。WEBサービスでは、非常に細かい範囲で機能の更新を次々と発表するというのが今や自然な流れになってきている。細目にリリース頻度を上げれば、開発頻度が上がっていることが、誰からもわかるというわけだ。


 最近ではGitHub(ギットハブ)というSNS機能をもった共有ウェブサービスまで出てきている。そのため貯め込んでいつでも出せる状態するのではなく、開発が行われ次第、すぐリリースを出した方が望ましいというわけだ。


 伊藤氏は先人が行った「一番遠くに飛ばせる飛行機をつくるには、何回も試行錯誤を行うことが必須だった」という例を挙げた。そして、リリースの頻度を増やすのは、ユーザに早く届けるだけではなく、試行錯誤したうえでの結果であるとした。


車載システムの動向


 デンソー先行技術開発室室長の松本直樹氏は、車載ソフトウェアについて講演した。車業界では、地球環境(CO2排出量削減)と交通安全がテーマになっており、それに向けた取り組みが行われている。現在の車も高機能化・多機能化に伴い、制御系やボディ系、情報系など、様々なシステムが搭載されており、大規模複雑化している。


 これに伴い、品質・効率の追求、機能連携が必要不可欠となってくる。デンソーでは、車のアーキテクチャ(基本設計)やコンポーネント(車を構成する複数部品のまとまり)、技術や技法をできるだけ再利用できるようにして全体の最適化を目指しているという。また、ソフトウェアの複雑化に伴って、多様な人材のマネジメントを行っていくことなどが業界の課題とのことだ。


 松本氏は今後について、車載システムが、スマートフォンなどの情報端末に、機能がより近づくため、業界内外の連携と、戦略的な標準化が求められるとした。


 クラウドが普及したことにより、ソフトウェア開発もよりスピーディーになってきている。どのクラウドやサービスを使うのかの見極めが非常に重要と痛感した。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:モバイル・クラウド時代のソフトウェア開発技術
主催   
:情報処理学会
開催日  
:2014年9月25日
開催場所 
:化学会館(東京都千代田区)

【関連カテゴリ】

クラウド