セミナーレポート

企業のイノベーションを支える仕組み

イノベーション・ジャパン2014を取材

2014/10/23

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、科学技術振興機構(JST)、は2014年9月11日から2日間、イノベーション・ジャパン2014を開催。大学がもつ様々なシーズが展示されたほか、イノベーションを支える仕組みについて講演があった。

大学が持つ様々な技術が展示されていた
イノベーション・ジャパンの様子
大学が持つ様々な技術が展示されていたイノベーション・ジャパンの様子

イノベーションの必要性


 経済産業省産業技術環境局 技術政策企画室長の田中邦典氏は講演で企業におけるイノベーションの必要性について言及。「経済を大きく成長させる」「国際競争力を高めていく」という観点から「技術」に関するイノベーションが重要になってくるとした。


 ただ技術的なイノベーションを起こすことに、日本企業も苦戦している。田中氏は日本における課題についても言及。オープンイノベーション(新技術を開発する際、組織の枠を超え、広く技術を募ること)が日本ではなかなか行われていない点を指摘した。また田中氏は、大企業が新しい技術、事業に消極的である一方、中小、ベンチャー企業の方が積極的であるとしている。


 また優れた技術シーズをしっかり見出すことも非常に大切だ。田中氏は「大学には、しっかりした独創性の高い研究をやっていただきたい」とし、企業がさらにそれを事業化していくことがキモになるとした。


NEDOの取り組み


 NEDOイノベーション推進部長の久木田正次氏はオープンイノベーションとベンチャー企業支援について解説。久木田氏は、国内の新産業をみると、製造業系の開業率、IPO(株式上場)数は他業種と比べて低調だと説明した。


 こうしたなか、NEDOでは研究開発型中小企業・ベンチャー企業が生み出す技術の実用化開発を支援している。例えば、立命館大学発のベンチャー企業で産業ロボットの開発に関わる三次元メディア。NEDOが関わる「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」の支援を受け、成長。第5回ロボット大賞も受賞し、現在は2016年の東証マザーズIPOを目指しているとのことだ。


 NEDOではまた、福祉用具の実用開発を推進する「福祉用具実用化開発推進事業」も行っている。ここではロボット技術を応用した「軽労化シーズ」をもとに北海道大学の研究者が起業した企業・スマートサポートの事例を紹介。この事業に採択されたことも奏功し、重たい荷物を持ち上げるスマートスーツの開発・販売に結びついたという。


 また、企業に寄り添う「起業の専門家」の協力も欠かせない。起業経験やインキュベーター、ベンチャーキャピタルの所属経験があり、起業・事業化に向けた活動、ビジネスプラン構築の指導を行う専門家にアドバイスを求める体制もつくっているとのことだ。

NEDOイノベーション推進部長
久木田正次氏   エッジキャピタル社長
郷治友孝氏
NEDOイノベーション推進部長
久木田正次氏
  エッジキャピタル社長 郷治友孝氏

ベンチャーキャピタルの支援


 ベンチャー企業が成長するには、企業に投資するベンチャーキャピタルが重要になってくる。「大学発」ベンチャーキャピタル・エッジキャピタル社長の郷治友孝氏は、ベンチャーキャピタルについて解説した。ベンチャーキャピタルとは、未上場企業の株式に投資し、上場(株式公開、IPO)やM&A(合併・買収)によって、キャピタルゲイン(株式譲渡益)を目指すファンドのこと。ベンチャー企業にマネーを継続的に還流するためには、資金循環を、投資家・起業家の双方から合理的にしていく必要がある。


 郷治氏は、日本の研究開発投資額は、世界でも最高水準であるにもかかわらず、ベンチャーキャピタルの投資額は、各国でも最低水準であると指摘。特に、起業初期段階の投資が低い。そのため、ベンチャーキャピタルが今後日本で伸びる可能性があるとした。


 さらに郷治氏は、ベンチャー企業の成功のための条件について言及。「たとえ技術力や資金調達力が優れていても、営業や生産、カスタマーサービスなど様々な要素のうち、どれか1つでも劣ることがあれば、事業成功は望めない」としている。


 郷治氏は今後のエッジキャピタルの方向性についても触れている。近年、従来型のベンチャー投資の主流となっていた、比較的少額で短期の回収ができる案件でなく、国際的に優れた科学技術で、中期の回収期間が必要となる燃料電池や抗体医薬など、「ライフ・イノベーション」「グリーン・イノベーション」分野への投資が増加しているとした。


 企業にとってイノベーションを成し遂げるには、確かな技術力と、それを臆せずに実行するマインドが必要だ。しかし、それだけでなく今回の説明に遭ったようなNEDOのプロジェクトやベンチャーキャピタルによる資金援助も重要な要素となる。今回のシンポジウムではそれを改めて痛感することができた。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:イノベーション・ジャパン2014
主催   
:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
  科学技術振興機構(JST)
開催日  
:2014年9月11日~12日
開催場所 
:東京ビッグサイト(東京都江東区)

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