セミナーレポート

進む環境情報の収集・データ活用

位置情報の活用や衛星からの観測データを紹介

2014/9/16

 環境に関する情報の活用・データ統合に関するシンポジウムが2014年7月31日に東京大学本郷キャンパス浅野地区にある武田ホールで開催された。災害対策や気候変動、エネルギー分野など様々な分野に用いられる環境に関するデータが重宝されている。

 文部科学省は現在、環境に関するデータ統合プロジェクト(DIAS-P)、環境情報分野におけるプログラム(GRENE-ei)、を進めており、東京大学でもその一翼を担っている。シンポジウムでは現在、東大が取り組むデータ収集・構築、分野間連携について講演が行われた。

位置情報の活用をはじめ、環境に関する
情報の収集・運用に関心が集まった会場の様子
位置情報の活用をはじめ、環境に関する
情報の収集・運用に関心が集まった会場の様子

位置情報の活用

 

 東京大学教授の柴崎亮介氏は、携帯端末などから得られる位置情報を様々な分野に応用する研究を行っている。例えば、ケニアにおけるマラリアの感染拡大の分析。移動労働者の傾向とマラリア感染者のホットスポットを組み合わせることで、マラリア感染の地理的トレンドの分析が可能。それによって医療施設の検査活動の戦略が立てられるという。


 位置情報は、GPSデータのように携帯のGPSや車載のGPS機器などから今や容易に得られることのできる「人の流れを表すデータ」。需要もあり、活用も進む情報だ。こうした「人の流れを表すデータ」にはパーソントリップ調査のように、都市交通計画の調査時に行われる、平常時1日分の移動に関するアンケート調査も含まれる。


 ほかにもCDRs(Call Detail Records)とよばれる携帯端末(スマホなど)の利用時に基地局に記録される基地局の通信実績情報もある。柴崎氏によるとCDRsの属性(性別・職業・年齢層)を匿名にして活用することで、特定の人口層に対する政策に役立てることができ、データの利用価値が上がるとのことだ。


衛星を利用した観測


 一方、JAXA(宇宙航空研究開発機構)の島田政信氏は衛星を利用した様々なデータの採集について講演した。JAXAでは地球温暖化などをテーマに、様々なデータを集める事業を進めている。


 例えばJAXAではだいち2号(AROS-2)を利用して、防災機関のための被災地の詳細な情報の把握や、国土情報の継続的な蓄積や更新、農作地の面積の効率化を目的とした情報収集を行っている。このだいち2号が2014年6月21日にブラジルのロライマ州東部の写真を撮影。同じ森林減少が2009年と比べてどのように変化したか、画像データで比較。約25km2の森林減少がみられることがわかった。このように森林(ここでは人が入ったことがない自然林を指す)の減少の推移もしっかりと把握することもできる。


 だいち2号が観測した地理情報は、東日本大震災の際にも利用されている。内閣官房、内閣府をはじめとする機関に情報を提供。その他、津波による浸水面積の解析、地殻変動につながる土地の変動量の推計も行っているとのとだ。


 島田氏は他の衛星の役割についても解説。「しずく」(GCOM-W)は地球規模の水循環の変動を割り出し、農作物の生育に関する被害の推定が可能。世界の気象庁の予報などに利用されている。他にも「いぶき」(GOSAT)は温室効果ガスの量を観測して、地球全体の濃度分布を測定。先進国の排出削減に貢献しているとのことだ。

東京大学教授 柴崎亮介氏   JAXA 島田政信氏
東京大学教授 柴崎亮介氏   JAXA 島田政信氏

大気観測に関するデータ観測


 こうした衛星を使った観測にも象徴されるように、大気のデータは様々なところで計測されている。国立環境研究所の野尻幸宏氏は、1990年ころから同研究所で行われていた「データを継続的にとることで世界全体を把握しよう」という取り組みが実になってきていると説明した。


 例えば、波照間島や富士山頂などで、大気中の酸素濃度を精密に測定。これを13年間続けることでグローバルな炭素収支がわかってきたという。また貨物船を用いた海洋CO2の観測を実行。それにより、エルニーニョの時期には赤道付近の海面のCO2の濃度が全体的に変わるといったことがつかめたとのことだ。


 また個々の観測データと世界のデータがどう付け合わさるかは大きなテーマだ。すでに大気温室効果ガスについてはWDCGG(World Date Center for Greenhouse Gases)、海洋のCO2についてはSOCAT(Surface Ocean CO2 Atlas)という世界的なデータベースが作られており、日本からは気象庁、国立環境研究所がデータを提供している。


 野尻氏は地球観測関連のデータベースが単なるデータの置き場にとどまらず、観測データをユーザに使いやすいよう共通のフォーマットに落とし込むことや、データの見せ方などに工夫を凝らす必要があるとした。


 ビッグデータという言葉が言われるようになる以前から、気象に関する様々なデータが収集されており、それらを分野横断的に使いこなそうという取り組みが進んでいる。また、柴崎教授の取り組む位置情報の活用に関する研究も重要性が高まるばかりだ。文部科学省・東大が取り組むプロジェクトの可能性を感じるシンポジウムだった。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:第4回DIAS-GRENE 環境情報統融合フォーラム 
主催   
:DIAS(地球環境情報融合プログラム)
  GRENE-ei(環境情報分野におけるプログラム)
開催日  
:2014年7月31日
開催場所 
:東京大学(東京都文京区)

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