セミナーレポート

宇宙科学分野に触れる絶好の機会

JAXAの公開キャンパスを取材

2014/8/18

 はやぶさの偉業以来、宇宙事業は特に注目を集めている。しかし、宇宙航空研究開発機構(JAXA)では、はやぶさに始まる小惑星探査のみならず、様々な幅広い宇宙航空分野に関して研究開発を続けている。2014年7月25日、26日にかけてJAXAは相模原キャンパスを一般公開した。夏休みという時期もあり、親子連れや中高生のグループも数多く集まり、大盛況だった。

開場を待つ長蛇の列
開場を待つ長蛇の列

はやぶさの偉業とJAXAの幅広い研究分野


 小惑星探査機はやぶさは、地球の重力圏外にある惑星のサンプルリターンに世界で初めて成功するという偉業を打ち立てた。予定通りであれば本年中にはやぶさ2が打ち上げられる。こうした華やかで一般の目につく成果がある一方で、ほかにもJAXAでは様々な研究開発が進められている。


 太陽観測衛星ひので、金星探査機あかつき、はやぶさのように小惑星探査を行うプロジェクトから、次世代ロケットや太陽光で推進するソーラー電力セイル、宇宙空間での厳しい環境に耐える熱制御といった基礎的な研究、宇宙の生命を探すアストロバイオロジーという新しい学問分野まで、その分野の範囲は広い。しかし、はやぶさが帰還する前の宇宙事業について一般の人々が注目する機会が少なかったように、JAXAが行っている幅広い研究成果について目にする機会は限られている。


 夏休みに行われる公開キャンパスは、こうした研究を目にする絶好の機会だ。JAXAの研究は非常に高度で難しい専門分野だが、多数の図や写真、パネルの前に多数配置された解説員の丁寧な解説により、主な層である小中高生でも理解が進むような展示になっていた。


90気圧を目の前で再現!


 宇宙の環境を疑似的に再現するような体験型の展示は子どもからの人気が高かった。例えば疑似的に金星の90気圧を体験するコーナーでは、紙コップを水槽に入れた後、水槽を密閉して、水圧を加えることで驚異的な気圧を再現していた。水槽に入れたコップが、眼の前で半分程度の大きさまで縮小していく様子に子どもたちからも歓声が上がった。


 はやぶさが小惑星イトカワから持ち帰った粒子も展示されていた。大きさは髪の毛の太さの半分程度。視認するのは困難なため、顕微鏡を使っての見学となった(写真はモニターで表示されたものを撮影した)。地球の外から採取した物質を目にする機会はめったにあるものではない。午前10時の開場とともに、顕微鏡で見るための整理券を真っ先に取りに行く見学者も多数いた。

左が加圧前、右が加圧後の紙コップ。90気圧の強さがわかる   小惑星イトカワの粒子
左が加圧前、右が加圧後の紙コップ。90気圧の強さがわかる   小惑星イトカワの粒子

月面基地への第一歩


 ほかにも興味深い展示は無数にあった。例えば、月で発見された縦穴を探査する「UZUME計画」は、縦穴とそこから続くと予想される地下道に月面基地をつくるというもの。月面は大気が非常に薄いため、放射線や隕石が絶え間なく降り注ぎ、温度もマイナス150℃から120℃と激変する。


 しかし、地下ならば隕石や放射線からも守られ、温度もマイナス20度付近で安定しているという。また穴の表面はガラス質で覆われており、空洞は密閉性も高い。そのため入口にシャッターをして内部を空気で満たすことで容易に人間が住める環境を作り出すことが可能では、と考えられている。まずはロボット使っての空洞探査から進めていくとのことだ。


 宇宙科学分野は、好奇心を強くひき、そしてロマンあふれる分野ではあるが、実際の益というと疑問視されることが多い。2010年にはやぶさが帰還するまでは、いわゆる事業仕分けの対象でもあった。確かに月面に基地を作ることで、すぐに目の前の社会的な問題が解決するわけではない。しかし、地球外の資源開発や、地球に人口が収まらなくなった場合の移住など、現在では途方なくとも、いつかは行う日がくるだろう事業は、その時になって始めては間に合わない。将来を見越した「超長期」な研究は実用的な面からも必要になるだろう。


 また各種研究された分野は民間へ払い下げられることも多い。例えば我々が携帯電話などで使っている電波帯域はかつて宇宙科学分野で開発されたものだ。こうした分野に人材がいきわたるためにも、公開キャンパスで多くの人が宇宙分野に触れる貴重な機会だと感じた。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:JAXA相模原キャンパス特別公開
主催   
:宇宙航空研究開発機構
開催日  
:2014年7月25~26日
開催場所 
:JAXA相模原キャンパス(神奈川県相模原市)

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【キーワード解説】アストロバイオロジー

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