セミナーレポート

ウェアラブルデバイスの新境地

情報処理学会主催の連続セミナーを取材

2014/8/7

 情報処理学会は2014年7月15日にウェアラブルデバイスに関するシンポジウムを開催。生体情報をセンシングするものやグラス(眼鏡)タイプのモデルなど最新の端末が紹介された。

ウェアラブルデバイスに関心の高い参加者が集まった会場の様子
ウェアラブルデバイスに関心の高い参加者が集まった会場の様子

生体情報を計測するウェアラブル


 東芝ヘルスケア社ヘルスケア開発センターの大内一成氏は、日本のウェアラブルデバイス黎明期である1999年からウェアラブルデバイスの研究に参画。ライフログを採取するセンシング技術や、音声認識技術などの研究を行ってきた。今でこそクラウドなどのインフラが整っているが、そうした技術は当時まだ存在しなかった。そのため「注目はされたものの当時はまだ普及しなかった」(大内氏)という。


 そのころから大内氏のグループでは、ウェアラブルデバイスで生活習慣病を改善する研究を進めてきた。2002年には「ウェアラブル生活習慣管理システム」を開発。これは人間の脈拍数や動作といった生体情報を、端末を身に着けることでセンシングし、データをPDA(Personal Digital Assistant)などで管理しよういうものだ。ただ当時はPDAが高価だったため、コストの面でなかなか実用化には至らなかったという。しかし今ではスマートフォンが普及したことにより、生体情報を端末でスムーズに確認・管理できるようになったという。


 現在、同社が発表した最新のモデルはウェアラブル生体センサー「Silmee Bar Type」。首からぶら下げることで心電位・皮膚音・脈波など、複数の生体情報を計測。その情報を、Bluetoothを用いてスマートフォンにリアルタイムで送信するというもの。こうしたセンシングで生体情報を端末に蓄積し分析することで、体質改善に役立てることができるという。


MOVERIO BT-200の性能


 こうした生体情報を計測するもののほかに、グーグルグラスのようなグラス型のウェアラブルデバイスの開発も活発に行われている。セイコーエプソンの馬塲宏行氏は同社が2014年6月に発売した「MOVERIO BT-200」を紹介した。


 これは両眼シースルー(ディスプレイが両眼で、映像や背景や周囲の景色が透けて見えるもの)のグラスタイプのウェアラブルデバイス。プロジェクターなどに用いられる同社の光学技術を応用しており、両眼に装着することで様々な映像コンテンツを視聴することができる。


 馬塲氏によると、徹底して小型軽量化に取り組んだとのこと。前回のモデルでは220g程度だったが、現在のモデルは88g。約6割程度軽くなった計算になる。またバッテリーの持ちは前回のものと同程度だが、画面の明るさが2倍にアップ。Wi-Fiを用いた無線技術により、PCやスマートフォンの画面に映像を映すこともできる。さらに専用サイトからアプリをダウンロードすることで様々なコンテンツを視聴することが可能。OSはアンドロイドを採用しているとのことだ。

MOVERIO BT-2000を装着する
セイコーエプソン 馬塲宏行氏   ブリリアントサービス 杉本礼彦氏
MOVERIO BT-2000を装着する
セイコーエプソン 馬塲宏行氏
  ブリリアントサービス 杉本礼彦氏

miramaが目指すAR


 一方、スマートフォンを使ったソリューションを展開するブリリアントサービスの杉本礼彦氏も、同社が開発したグラス型のウェアラブルデバイス「mirama」を紹介。杉本氏は、うつむきながらスマートフォンや携帯ゲーム機を使用するという「没入型のスタイル」が一般的になっていると指摘。このような状況を改善することをコンセプトとしてmiramaの開発に取り組んだという。


 miramaは拡張現実(=AR:現実世界にコンピュータで情報を付加すること)を実践したデバイス。両眼シースル―タイプのHMD(ヘッドマウントディスプレイ)だ。一般のユーザが使えるよう、ジェスチャー入力を可能としている。例えば両手の人指し指と親指でL字をつくるとカメラが起動。右手の指を押すと、シャッターをきることができる。さらにメガネの中央に赤外線カメラを搭載。赤外線の反射時間で対象との距離を測り、ジェスチャー動作の認識に役立てているという。他にも音声入力・傾き・振動などを認知するセンサーを採用し、「直観的なUI」を可能としている。


 このmiramaによって、ユーザは見た風景に「イイネ」をつけたり、搭載したカメラで撮影して画像を友人にメールするなど、「リアルの場所」に対して情報を「残す」あるいは「伝える」ことが可能だ。ほかにもmiramaを装着して見る「リアルな世界」に情報を「加える」ことで、工場での作業を安全にこなすことなどに役立つという。


 杉本氏はmiramaのような“電脳メガネ”を普及させるためには、重さやデザイン、価格面など様々な障壁があるが、それを乗り越えればスマートフォンのように日常的に活用してもらえるようになるはずと説明。ウェアラブルデバイスを社会に広めていくことが使命だとしている。


 今回のシンポジウムでは様々なウェアラブルデバイスが紹介されており、我々が日常的にウェアラブルデバイスを使う未来もそう遠くはないと感じることができた。グーグルグラスの登場でウェアラブルデバイスが注目されているだけに、今後の動きに期待したい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:連続セミナー2014「ウェアラブルが切り開くIT新潮流」
主催   
:情報処理学会
開催日  
:2014年7月15日
開催場所 
:化学会館(東京都千代田区)

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