セミナーレポート
スパコンを「スマート」に
国立情報学研究所オープンハウス2014 を取材
国立情報学研究所(NII)が2014年5月30日、公開イベント「国立情報学研究所オープンハウス2014」を行った。光無線通信や監視カメラに顔認識をさせないメガネなど、様々な分野での研究発表が行われていた。
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| 大容量通信ができる光無線 |
光無線で「スマートスパコン」
様々な研究室の成果がところ狭しと飾られている中で、注目したのはNIIアーキテクチャ科学研究系に所属する鯉渕道紘氏の研究室。「ランダムな光無線スパコン・データセンターネットワーク」と題して、光無線の展示を行っていた。鯉渕氏が提示する「光無線」とは、通信容量が40Gbpsという大容量無線LANのことだ。通常の無線LANが数10Mbps程度なので、とてつもない容量である。
この技術は、スーパーコンピュータ(スパコン)のマシン同士の接続に活用が期待される。スパコンは、膨大な数のPCがネットワークでつなげて高速な計算を行っている。このネットワークを構築するために、現在のスパコンは1000kmにも及ぶ有線ケーブルを必要としている。これを光無線で接続すれば、有線でのネットワーク構築よりも省ケーブル・省電力化が見込まれるという。
この光無線を使って鯉渕氏が目指すのは、1つのラックをランダムにつなげてスパコンを構築すること。そうすれば、どこかのラックでマシントラブルが発生しても、容易に修理ができる。大規模ゆえに発生する通信の遅延も、ケーブルで規則的につなぐよりも、光無線を利用してランダムに接続した方が少なくなるのだという。「ラックの間だけでなく、CPU間、そしてCPUの中もランダムにつなげば、(スパコンの)プログラムを組むのも簡単になり、高速な通信が望めます」(説明員)。
ランダム、乱暴な言い方をすれば「適当に100万以上あるコア(CPU)を接続する」この研究については、「(ランダムに接続するのは)適当すぎる」という声が、メーカーの事業部から上がっているそうだ。
ただ、かつて「京」が計算速度で世界一を取って以来、スパコンはコスト高や計算速度で、これ以上の開発には頭打ちの感がある。こうした技術があれば、既存のスパコンも「スマートスパコン」として生まれ変わる可能性もある。スパコンまでいかずとも、クラウドを支えるデータセンターの効率化にも寄与するとみられる。
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| シミュレーターの体験デモ | 企業マッチングのプレゼン |
企業と研究者のマッチングイベント
展示のみならず、今回のオープンハウスでは初めての試みとなる企業と研究者のマッチングイベントも行われた。登壇したNIIの准教授陣からは、様々な分野の研究プレゼンが行われた。
NIIの孫媛(そんえん)准教授は、子どもたちの学習ログを活用した学習支援の研究を紹介。タブレットPCや電子黒板の普及で、学校での勉強記録はわかりやすい形で残っている。孫氏はこの情報を元に、学校でのテストを「学習状態の診断」と位置付けた。分数の計算問題ならば、通分・約分など、計算のプロセスを12分割する。これによって、結果的には同じ点数でも「身につけた部分」と「つまずいた部分」がはっきりするので、その後の指導目標がより明確になる、というものだ。
同じくNIIで情報社会相関研究系所属の小林哲郎氏は、フィールド実験による社会の因果関係研究についてプレゼンした。小林氏は「ビッグデータの適切な実験デザインは非常に難しい」と述べ、経済産業省の行ったスマートグリッドの実証実験を例に挙げた。
当初この実験では、ある自治体でスマートグリッドを導入した世帯について、導入の前後で消費電力量を分析し、スマートグリッドの有効性を判断しようとしていた。ただ、「導入の前後で消費電力量」では時系列のみでの判断となり、「導入前の気温が低く、導入後に気温が上がってしまえば、有効性を判断できないデータになってしまう」(小林氏)ことになる。
「この場合、スマートグリッドを導入した世帯と、していない世帯で分けて、初めて適切な実験になる」と小林氏は指摘した。
このほか、基調講演など、イベントが盛りだくさんだったオープンハウス。Googleに買収された東大OBのロボット関連ベンチャー「シャフト」の例にもれず、研究機関にはイノベーションの萌芽が埋もれている。
【セミナーデータ】
- イベント名
- :国立情報学研究所オープンハウス2014
- 主催
- :国立情報学研究所(NII)
- 開催日
- :2014年5月30日~31日
- 開催場所
- :学術総合センター(東京都千代田区)
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