セミナーレポート

連携がすすまない医療情報

引き続き標準化が課題

2014/6/9

 遺伝子検査など、病気に関するデータの精度は高まっている。しかし、病院や介護施設をまたいだデータの連携はほとんど進んでいない。2014年5月15日に行われた「MeWCA(ミューカ)シンポジウム」では、医療・介護情報の連携をどう進めるかについて、識者の意見が交わされた。

関連省庁も登壇したMeWCAシンポジウム
関連省庁も登壇したMeWCAシンポジウム

遺伝子情報で病気の確率がわかる時代


 元総務官僚で東京大学特任教授の稲田修一氏は「俳優アンジェリーナ・ジョリーの乳房切除が典型例」と述べ、個人の病気が遺伝子情報によって判明する精度は格段に進歩していることを指摘した。


 2万9800円の検査キットで70項目の発病リスクが判明する遺伝子検査サービスも登場するなど、遺伝子検査は身近になってきている。妊婦の血液だけで、胎児が染色体異常や先天性の疾病にかかっているかどうかを検査する出生前診断もしかりだ。


 データを蓄積すればするほど、病気ごとの治療精度が上がる。「古い薬を処方すれば、『この医師は勉強していない』」(稲田氏)ということがわかってしまうくらい、医療ビッグデータが医療の正確性向上に寄与する可能性がある。


 ただ、患者の病歴や血圧、体温などの履歴は一元化されていない。健康診断の情報も、個人が受診した病院ごとにバラバラになっているのが現状だ。稲田氏は散逸したデータを使えるようにするには「マイナンバー(共通番号)のようなもので1人1人のデータを一元化すべき」と強調した。


データの整備が進まない難病は


 一方で、症例が限られている難病は、一般的な病気に比べてデータがほとんど採れていない。国立保健医療科学院の水島 洋氏は難病の現状について「製薬会社は市場規模がないので開発に手を出さない。現場の医師も、自分が生涯に(症例を)見るかどうかわからないため、対症療法だけの対応になっている」と解説した。


 難病データはどこにあるのか。医療費の補助を目的に1978年から難病患者の登録が始まったが、症例に関する情報は紙ベースでの収集しか行われていない上、病気ごとにフォーマットがまちまち。「A4用紙数ページにわたるので、記入する医師の負担」(水島氏)になっていた。世界的に見ても、国として患者登録を行っているところは、日本以外にフランス、スペイン、イタリアといった国々があるくらいで、非常に少ない。


 こうした課題を解消すべく、2014年5月、参議院で難病医療法が成立した。難病についてのデータベースを構築し、新薬開発の環境を整えるものだ。データベース構築に当たっては、WEB上で医師が入力する際の項目の共通化や、疾病コードの統一、国をまたいだ時の最低限度の標準化などの作業が現在行われている。

難病データについて解説する水島氏   医療データのあり方について議論が交わされた
難病データについて解説する水島氏   医療データのあり方について議論が交わされた

医療と介護のデータ連携も必要


 様々な改善がなされている医療データだが、病院別にスタンドアロンのシステムであることが大半のために、連携は進まない。また、依然として医療に必要な情報は手書きベースで作成されている。


 なおかつ「医療」と「介護」間の連携が取れていない。「厚生労働省内でも医療は医政局、介護は老健局と別れて、それぞれの局が自分たちを中心に政策立案していた」という指摘があった。また、介護現場でも、訪問介護とデイサービス間での情報共有もうまくいっていないことが多いという。


 後半に行われたパネルディスカッションではシステムを使う側の医療、介護の現場から現状が紹介されたが、共通していたのは「患者中心でシステムを作らなければならない」「本人の情報は本人が持つべき」ということだった。


 医療情報の一元化は、医療の発展のみならず、自分の情報をいつでも確認できることで、健康管理や医療機関に提供する情報の取捨選択など「自己情報」のコントロールも可能にするはずだ。


 医療費の増加が確実な日本では、早急な対策が迫られている。介護記録、電子カルテ、お薬手帳など、医療関連データの適切な連携は、誰もが望むところである。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:MeWCAシンポジウム2014
主催   
:医療福祉クラウド協会(MeWCA)
開催日  
:2014年5月15日
開催場所 
:文京シビックホール(東京都文京区)

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