セミナーレポート

大学施設でナノテク利用

ナノ・マイクロビジネス展が開催

2014/5/22

 顕微鏡の先に備え付けられた小さなピンセットが、ミリ単位のマス目へ正確にチップを置く。半導体など細かい組み立て作業に使われる「マイクロマニュピレーター」と呼ばれる装置だ。他にも「ミクロの世界」を操る大小の装置が並ぶ。

 「ナノテクノロジー(ナノテク)」が注目されて久しい。「ナノテク=半導体」のイメージも強いが、実は様々な分野で利用可能性があるという。2014年4月に開催された「ナノ・マイクロビジネス展」には産学のナノテクの展示や発表が行われた。

極小のピンセットが細かい作業をこなす
極小のピンセットが細かい作業をこなす

大学の高性能施設を民間利用する


 会場の一角にあった、文部科学省のプロジェクト「ナノテクノロジープラットフォーム」。このプロジェクトは、国立大学などの研究機関が所持する高性能の装置や人的リソースを利用するためのもの。


 大学にある電子顕微鏡や、薬品の製造などで使われる物質合成の高性能装置、微細加工装置など、これまで研究機関だけで利用していた施設が、民間企業も使えるようになっている。施設の利用は有料だが、「設備をどう使えばよいか」「どうしたら技術開発がうまくいくか」といった相談や、試験的な施設の利用は無料で行っている。


 有料での利用も、単なる施設利用だけでなく、技術支援や技術開発、共同研究などのレベルで区分けされている。2014年で3年目を迎えるこの仕組みだが、実は民間利用は思ったほど進んでいない。「全体の利用者のうち、4分の1程度ですね」と話すのは、物質・材料研究機構の吉原邦夫氏だ。

ナノテク利用は半導体製造以外の分野に広がる
ナノテク利用は半導体製造以外の分野に広がる

ナノテク利用まで発想が回らない


 ナノテクを利用して作られたデバイスをMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)、NEMS(Nano Electro Mechanical Systems)と呼ぶ。1990年代まで「半導体製造装置」のイメージが強かったナノテクが、他分野への技術応用に動き出したのは、日本の半導体業界が落ち込んでからだという。現在では「バイオの分析から、化粧品の開発、マイクで振動を拾うための製品から食料品まで、幅広い分野で活用できるのです」(吉原氏)というくらい、ナノテクは応用範囲が広い。スマートフォンが、傾きに合わせて画面が回転するのも、ナノテクで作られたジャイロセンサーが入っているおかげだ。


 それでも「うちにナノテクは関係ない」という中小企業は多いという。「会場に来た金属加工会社の方の話を聞いてみると、(プラットフォームの)施設を利用してビジネスにつなげられる可能性がありました」(吉原氏)。


 大手企業は、ナノテクを利用する必要性はわかっているものの、自社の製品とどう関わりを持たせるか、というところで攻めあぐねているようだ。


ナノテクのこれから


 「プラットフォームの高性能設備の利用」ではなく、研究ノウハウを持つ人材と企業が連携して研究開発を進める「共同研究」の方が、イノベーションは進みやすい。ただ、民間による大学との共同研究はなかなか進まない。


 まず、「共同研究」を行うに当たっては、企業側での契約関係処理が煩雑になる。加えて特許が絡むとなると、自社で独占しようとする傾向がある。このため、共同研究による「オープン」なイノベーションが起きない。


 また、企業側の研究者にしてみれば、大学との「共同研究」にしてしまうと研究成果を独占できない。このため、せっかくのイノベーションのチャンスを目の前にしながら、共同研究に二の足を踏む結果になってしまうのだという。


 文科省のプラットフォームなど、最先端技術の恩恵を中小企業が受ける素地はだいぶ整ってきているようだ。「立っているものは親でも使う」意気込みでこうした仕組みを使い倒し、イノベーションにつなげる日本企業の姿を期待したい。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:ナノ・マイクロビジネス展
主催   
:マイクロマシンセンター
開催日  
:2014年4月23日~25日
開催場所 
:パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)

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