セミナーレポート

復興を目指す福島と産総研の取り組み

シンポジウム「福島から世界へ」を取材

2014/5/19

 2014年4月18日、産業技術総合研究所(産総研)は、シンポジウム「福島から世界へ」を開催。福島県の復興に向けた取り組みや産総研が郡山市に新しくオープンした福島再生可能エネルギー研究所に関する講演が行われた。

福島の復興に向けた取り組み
に関心が集まった会場の様子
福島の復興に向けた取り組みに関心が集まった会場の様子

災害復興に向けた福島県の取り組み


 福島県知事の佐藤雄平氏は、福島県の再生可能エネルギーに関する取り組みについて講演した。東日本大震災で福島は未曽有の危機に見舞われた。福島第一原発事故により、農林水産業や観光業などあらゆる産業が風評被害を受けるなど、大きな打撃を受けている。


 福島県ではこうした災害からの復興を進めるために2011年8月に「福島復興ビジョン」を策定。原子力に依存せずに安全で継続的に発展する社会を目指すとした。その取り組みの1つとして進められているのが「再生可能エネルギー推進プロジェクト」だ。


 このプロジェクトでは、2030年度までに県内の一次エネルギー供給に占める再生可能エネルギーの割合を60%まで高めることを目標とし、達成に向けた取り組みが行われている。具体的には県が出資して発電会社を設立し、福島空港のそばの敷地にメガソーラー事業を展開するなどの施策が進められている。2014年4月には産総研が「福島再生可能エネルギー研究所」を福島県郡山市にオープンするなど着々とプロジェクトが進行中だ。


 県内の各市との産官連携も積極的に行われている。いわき市はクレラップなどの家庭用品や工業品を開発・販売するクレハと太陽光発電に利用する高い発電効率をもった素材の開発を実施。伊達市とアサヒ電子は太陽光発電のコストを測定する安価なシステムの研究を行っている。また福島県の再生可能エネルギーの取り組みを全国に発信し、県内の企業と関連企業の商談の場となるシンポジウム「再生エネルギー産業フェア(リーフふくしま)」を定期的に開催している。


 佐藤氏によるとこうした取り組みが奏功し、県内の製造業が活気を取り戻しつつあるという。震災が起きた2011年は、県内企業の工場の新設・増設の届け出が52件だった。しかし翌年2012年には一気に102件と倍増、2013年にも前年と同じ102件をキープし、復興への歩みは着実だ。


産総研の新しい研究所


 産総研 福島再生可能エネルギー研究所長の大和田芳郎氏は講演で、同研究所の取り組みを紹介した。研究所では再生可能エネルギーの大量導入を支える技術の開発を行い、復興に貢献することを目標に掲げている。


 太陽光発電や風力発電から得たエネルギーをICT技術などの制御と組み合わせて最大限に利用するため、ネットワーク技術の開発・実証などが行われている。また地元の大学や企業と共に、次世代の太陽電池や太陽光パネルの開発も進められている。


 その他、産総研では、県内の大学から学生を受け入れて研究・開発することで、再生可能エネルギーに関わる人材の育成も行っている。大和田氏は「被災地企業の支援や人材育成を通じて復興に貢献していくことができれば」と意気込みを語った。

福島県知事 佐藤雄平氏   産総研 福島再生可能エネルギー研究所長
大和田芳郎氏
福島県知事 佐藤雄平氏   産総研 福島再生可能エネルギー研究所長 大和田芳郎氏

除染が進む郡山市


 シンポジウムでは研究所が置かれる郡山市についても触れられていた。郡山市長の品川萬里氏は、市の交通の利便性を強調。郡山市は東京から新幹線で約80分と比較的近く、東北自動車道、磐越自動車が通るなどアクセスもしやすい。また、企業の誘致も盛んで、482にものぼる製造業の事業所が集積している。医療機器の開発から事業化まで一貫して支援する「福島医療機器開発・安全センター(仮称)」の建設も決定。医療機器の安全評価を行うことで、医療機器製造の中核拠点を目指すという。


 また、郡山市は誘致した企業の従業員が安心して暮らしていけるよう、放射線の除染に力を入れている。原発の被害を受けた直後の4か月間、郡山市中心部の放射線量は1時間に0.8~0.9マイクロシーベルトと高かったものの、その後は徹底的に除染を慣行。2014年3月には国の基準を大幅に下回る毎時0.2マイクロシーベルトに改善されているという。震災直後から市役所のHP上に放射線量のグラフを表示して事細かに更新するなど情報開示にも積極的だ。今後も除染の手を緩めず、市民が安心して暮らせるまちづくりを行う構えだ。


 福島県の取り組みから復興に向けた確かな足取りを感じた。また産総研が新しくオープンした福島再生可能エネルギー研究所の先進的な研究・開発は復興の新たな起爆剤となっていくだろう。様々な研究の成果に今後も注目していきたい。

(山下雄太郎)

注釈

*:一次エネルギー
石油や石炭、水力など自然から直接得ることができるエネルギーのこと。

【セミナーデータ】

イベント名
:日本を元気にする産業技術会議シンポジウム「福島から世界へ」
主催   
:産業技術総合研究所
開催日  
:2014年4月18日
開催場所 
:日経ホール(東京都千代田区)

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