セミナーレポート

女性の理系進学を考える

シンポジウム「女性の理系進学」を取材

2014/5/8

 2014年4月8日、東京大学小柴ホールにて、シンポジウム「女性の理系進学―家庭・学校・社会のあり方―」が行われた。理系に進学する女子学生に対し東大が行う取り組みなどについて講演があった。

会場には、東大の新入生や保護者をはじめ、女性の参加者が目立った
会場には、東大の新入生や保護者をはじめ、女性の参加者が目立った

日本における男女格差と東大の事例


 東京大学大学院理学系研究科教授の佐藤 薫氏は、東大理学部における男女参画への取り組みについて講演した。佐藤氏は女性の社会進出に関する指標で日本が135か国中101位となっている点に触れ、日本では男女格差があることを指摘した。さらに東京大学の学部学生数に占める女子学生の割合は8.3%と、大学平均(国内)の43.0%を大きく下回っている点を紹介。学部レベルでみると理学部、工学部が他の学部に比べて低いことも付け加えた。


 また東大の理学部の学生にアンケートをとったところ、「就職や進学に性別が影響するか」という問いに対し、女子学生の50%が「影響する」と回答するなど、性別が就職に影響すると不安視している女子学生が少なくないことがわかったという。

東京大学大学院理学系研究科教授
佐藤 薫氏   SLAC国立加速器研究所名誉教授
ヘレン・クイン氏
東京大学大学院理学系研究科教授
佐藤 薫氏
  SLAC国立加速器研究所名誉教授
ヘレン・クイン氏

男女共同参画推進室の取り組み


 こうした状況を改善するため、東京大学では男女共同参画推進室を設け、女子学生がのびのびと勉強や研究に打ち込むことができる環境づくりを行っている。例えば駒場・本郷の両キャンパスで実施している理学部主催の女子学生懇談会。これは専攻を超えた女子学生同志が知り合う機会を提供し“横のつながり”を築こうというものだ。


 東大大学院理学系研究科には育児支援室・保育園も設置されており、子育てのサポートも行われている。育児支援室には赤ちゃん用のベビーベッドやおむつ替え用のベッドが設けられ、子育てと研究の両立を目指す女性研究者への配慮がなされている。


 こうした環境面の充実に加え、理学部はキャリア支援室、就職ガイダンス、企業説明会など就職支援も充実させている。佐藤氏は理学部卒業生・理学系研究科修了生の就職希望者ほぼ100%が就職している点を強調。「理学部は自分が面白そうだと思う研究ができ、雰囲気も明るく楽しい。理学は評価が客観的でフェアなのが大きな魅力」と述べ、会場の女子学生に進学を勧めた。


米国の科学教育の手法


 またシンポジウムではこれからの科学教育の在り方についても触れられていた。米国で素粒子などの研究を行っているSLAC国立加速器研究所の名誉教授 ヘレン・クイン氏は講演で、様々な仕事で数多くのデータを扱い、判断しなければならない機会が増えていると説明。気候変動やエネルギーや水不足のような世界的な問題が起きている中、学校教育の現場でも学生の科学的な関心やものの考え方を養っていく必要性も高まっているとした。


 米国の学校教育では、こうした科学における関心や考え方を育むため、いくつかのグループに分かれ、科学実験を行う授業に力を入れている。この際、教師は進行役にまわり、現象を調べる学生をサポートし、科学実験に引き込むように努めているという。また、学生が主体となって現象を調べ、観察したことについて議論し自分の言葉で表現するのを重要視しているとのこと。


 ヘレン氏は「学生が単に科学者の理論を学ぶのだけではなく、自分自身の仮説をたてることに挑戦させるべき」と主張。学生が自分の仮説を実際の現象と突き合わせることで、自分の考えを修正する経験が大切だとした。


 一方、ヘレン氏は女子学生に接する教員の役割について触れ、「キャリア指導の際、女子学生がやりたいことに対して、それを支援する姿勢が極めて重要である」という意見を述べた。


 安倍政権が女性活用戦略に取り組むなど、女性の活躍が大きな関心を集めている。理系分野においても志ある女性の選択肢を増やすような、積極的な大学の取り組みに期待したい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:女性の理系進学―家庭・学校・社会のあり方―
主催   
:高エネルギー加速器研究機構
開催日  
:2014年4月8日
開催場所 
:東京大学小柴ホール(東京都文京区)

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