セミナーレポート

日本化学連合シンポジウムが開催

シェールガスの活用方法を模索

2014/4/21

 現在のエネルギーは、過去の遺産である化石燃料がほとんどを占めている。この埋蔵資源をギリギリまで「燃費の良い」使い方を模索している。

 2014年3月17日に開催された第7回日本化学連合シンポジウムでは、近年採掘が始まったシェールガスを中心とした講演が行われた。

講演する北野 大氏
講演する北野 大氏

シェールガスが量産されるまで


 1億5000万年ほど前の海洋植物の死がいが、地下約3000メートルに堆積してできたのが「シェール」という岩石である。シェールにはナノメートル(10のマイナス9乗メートル)というごく小さな隙間に、石油や天然ガスが埋まっている。これまでは、採掘コストがかかりすぎるため、資源にはならないとされていた。


 このシェールからガスを取り出す効率を高めたのが3つの技術だ。1つ目は「水平坑井(こうせい)掘削」技術。シェール層まで縦に掘り進めた井戸を、シェール層から水平に掘るもの。2つ目はシェール層へ水圧を使ってひび割れを作ってガスを噴出させる「水圧破砕」技術だ。そして3つ目は、シェールのひび割れの範囲を観測する「マイクロサイミックス」技術。これらの技術の組み合わせによって、シェールガスが採掘コストに見合う資源となった。


 現在、米国で生産されている天然ガスのうち、シェールガスなど「非在来型」の割合は50%になっているという。

化石資源について講演する関根氏   化学コミュニケーション賞の授与式
化石資源について講演する関根氏   化学コミュニケーション賞の授与式

シェールガス採掘の副産物


 日本の天然ガスは、発電と都市ガスでほぼすべてが消費されている。早稲田大学教授の関根 泰氏は、シェールガスを含めた化石資源利用について講演した。


 シェールガスは90%がメタンで構成されている。関根氏によれば、メタンを付加価値の高い化合物に変換しようという研究は30年前から行われていたという。しかし「誰1人商業ベースに乗せられるような成績を残せていない」(関根氏)まま、今に至っている。


 日本での天然ガスの価格は、1立方メートルあたり約60円。対して、ドイツは30円、米国は10円程度だ。関根氏は「高額な燃料を使い、高い電気を使って産業を回しているのが現状。単なる燃料としてメタンを使うだけでなく、変換して化学物質として使うこと」が化学の役割であるとした。


 関根氏は「100年先か、500年先になるかわからないが、いずれは太陽光を資源として利用する時が来る。その間、残っている化石資源をどうやってクリーンに、高効率に使っていくかが重要」と述べ、化石資源の利用意義を訴えた。


化学とコミュニケーション


 シェールガスの採掘や加工などでは、化学的な知識が不可欠である。しかし、化学について一般人の知識では「何の実験をやっているのか」と、近寄りがたい雰囲気もある。液体や気体がどんな性質を持っているのか、化学災害が起こった場合はどんな影響が出るのか、ということに不案内な人が大多数を占める。


 淑徳大学教授の北野 大氏は、こうしたインシデント時のリスクコミュニケーションについて講演した。北野氏は、自身のテレビメディア経験を元に、テレビ報道の特徴を「恣意的で、善悪二元論になってしまう」と指摘した。


 情報発信媒体としては、インターネット上のやり取りもあるが、プッシュ型で、80万人が視聴するテレビは影響力が強い。北野氏は事故の当事者等になった場合は「相手がすでに理解している言葉や概念を用いた、わかりやすい表現をすべき」と述べた。


 シェールガスの量産化は、日本や諸外国のエネルギー政策を変えていく、という社会の「化学反応」を起こしつつある。こうした政治的な現象や、化学的な観点を、専門外の人でも理解しやすく語ることも、これからの研究者には必要になってくるだろう。今回のシンポジウムでは、化学と人をつなげる活動を賞する「化学コミュニケーション賞」の授与も行われたが、研究活動のみならず、こうした草の根活動も継続されることが望ましい。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:第7回日本化学連合シンポジウム
主催   
:日本化学連合
開催日  
:2014年3月17日
開催場所 
:化学会館(東京都千代田区)

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