セミナーレポート

実力派の受賞が目立つ文化庁メディア芸術祭

第17回文化庁メディア芸術祭を取材

2014/3/13

 2014年2月5日~16日にかけて、東京都港区にある国立新美術館を中心に「第17回文化庁メディア芸術祭」が開催された。同芸術祭はアート部門、エンターテインメント部門、アニメーション部門、マンガ部門の4部門において作品を表彰し、受賞作品の展示や上映などを行うイベントだ。

アート部門大賞のcrt mgn。巨大な振り子とテレビのモニターを組み合わせた作品だ
アート部門大賞のcrt mgn*1。巨大な 振り子とテレビのモニターを組み合わせた作品だ

振り子とモニターを利用した作品


 今年度の応募作品は前回の3503点を大幅に超える4347点。海外からも84の国と地域から2347点の応募があり、過去最高を記録している。


 今回アート部門大賞に選ばれたのは、『crt mgn』。天井から吊るされた磁石のついた振り子が通過するたびに、電磁波の影響でテレビモニターに映るイメージが変化するというもの。また振り子が揺れるたびに、大きな電磁音が響き渡る仕組みになっている。巨大な振り子の動きやテレビのモニターの存在感は圧倒的で、強烈な印象を残す作品だ。


 このインスタレーションの作者・カールステン・ニコライ氏は、2014年2月4日に行われた記者内覧会で、「今回受賞できたことは大変光栄で、日本での受賞は私にとって意味のあるもの」と喜びを語った。ニコライ氏は作品の制作時に難しかった点について「テレビをたくさん壊し、指を怪我した。また磁石とテレビの間に電流を通す際、身の危険を感じるほど大変だった」と述べた。さらにニコライ氏は「この作品を通じて自然現象に対する人々の好奇心や興味を啓発していきたい」とした。

メディア芸術祭が開催された国立新美術館の会場の様子   作品を説明するcrt mgnの作者カールステン・ニコライ氏
メディア芸術祭が開催された 国立新美術館の会場の様子   作品を説明するcrt mgnの作者 カールステン・ニコライ氏

日本のアニメから受けた影響


 また、アニメーション部門大賞を受賞したのは『はちみつ色のユン』。朝鮮戦争で孤児になった主人公が、ベルギーの一家に家族として迎えられて育つ様子を描いた物語だ。韓国系ベルギー人のユン監督自身の半生を描いた物語で「血のつながりはないものの、慈愛にみちている家庭のあり方とは何か」を問いかけた作品となっている。


 記者内覧会でユン氏は「この作品をつくることで、これまで直視してこなかった『自分が生まれ育ってきた過去』を受け入れるということができ、自信をもつようになった」と説明した。また、ユン氏は影響を受けたアニメーションとして「AKIRA」(大友克洋氏作)を挙げており、日本のアニメーションに自身の作品が大きく影響を受けている点を強調していた。

はちみつ色のユンの展示の様子   ジョジョリオンの作者荒木飛呂彦氏
はちみつ色のユン*2の展示の様子   ジョジョリオン*3の作者荒木飛呂彦氏

マンガ界の巨匠、受賞


 一方、マンガ部門大賞を受賞したのは『ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険 Part8―』。1987年に週刊少年ジャンプで連載を開始した『ジョジョの奇妙な冒険』の第8部となる作品で、絵の緻密さや、読者を引き付けるストーリー構成などが評価された形となった。


 作者の荒木飛呂彦氏は、受賞について「マンガは読者に精神的に何らかの影響を与えていると感じる。そういう意味では『ジョジョリオン』を読んでもらうことで、日本の社会全体が良くなるよう間接的にでも役に立てればうれしい」と喜びを表現した。


 『ジョジョリオン』は震災の内容も、連載に盛り込んでいる。荒木氏は第7部『スティールボールラン』が完成した時に、東日本大震災が発生したことを紹介。「第8部の舞台となった杜王町は、自分が育った場所である仙台市をモデルにしており、震災という出来事を作品の舞台に結び付けることに大きな意義があると感じた」と説明した。


 また荒木氏は「マンガを描くことは農業に似ている。毎朝、畑(仕事場)に行き、土に変化がないか探し、新しい芽を育てていくようなもの。これからも地道に描いていきたい」としている。


 今回、日本のメディア芸術に大きな貢献をした功労賞には、鉄腕アトムの音響効果を担当した柏原満氏など4人が受賞した。柏原氏は機材の少ない時代から音響効果づくりに励み、現実性の高い音響をつくってきたことが評価された。また、同人誌展示即売会「コミティア」の設立に関わり、その後もプロで活躍する漫画家を数多く育てた中村公彦氏も同賞を受賞している。


 年々応募総数が増え、海外アーティストの作品も増えるなど、メディア芸術祭への関心は高まっている。今回アート部門の大賞に選ばれたカールステン・ニコライ氏は世界中の美術館や国際展で高く評価されているアーティストだ。また、荒木飛呂彦氏も日本のマンガ界ではその名をとどろかせる巨匠。今回のメディア芸術祭は確かな実力をもつアーティストの大賞受賞が目立っていた。

(山下雄太郎)

注釈

*1:crt mgn Carsten NICOLAI
©2013 Carsten Nicolai. All rights reserved.

*2:はちみつ色のユン ユン/ローラン・ボアロー
©Mosaïque Films - Artémis Productions - Panda Média - Nadasdy Film - France 3 Cinéma - 2012

*3:ジョジョリオン ―ジョジョの奇妙な冒険 Part8― 荒木 飛呂彦
©LUCKY LAND COMMUNICATIONS/SHUEISHA

【セミナーデータ】

イベント名
:第17回文化庁メディア芸術祭
主催   
:文化庁メディア芸術祭実行委員会
開催日  
:2014年2月5日~16日
開催場所 
:国立新美術館など(東京都港区)

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