セミナーレポート

地球環境と都市の理想の関係

地球研主催のシンポジウムを取材

2014/2/20

 地球研(人間文化研究機構総合地球環境学研究所)は2014年1月24日、有楽町朝日ホールで「都市は地球の友達か!? 地球環境とメガシティの過去・現在・未来」を開催した。

 都市は発展する一方で、環境汚染や食料資源の大量消費など、多くの課題を抱えている。人が都市に住み、かつ“地球と共生”するためには、家などの環境づくりをどのようにしていけばよいのかシンポジウムで話し合われた。

環境に配慮した都市・建築について議論された会場の様子
環境に配慮した都市・建築について議論された会場の様子

家は様々な産業の交差点


 武蔵野美術大学教授でデザイナーの原研哉氏は、都市を形成する「家」について言及。家は、個々のライフスタイルに合ったものが要求される傾向が強まっており、電力などのエネルギーとは切っても切り離せない関係であると指摘した。


 近年建てられた家は電気を消費するというだけでなく太陽光発電やバッテリーを備えることでエネルギーを貯蓄・循環することが可能だ。原氏は「家は様々な産業の交差点」と定義。家は家電とリンクし、居住者のライフログと連動するところまで発展してきており、「炊飯器でどの程度炊くのが好みか、どんなテレビをみるのか」など、居住者について様々な分析も可能になってきているとした。


建築家と企業のコラボ


 また原氏は、住宅建築メーカーではない企業と建築家がコラボレーションし、家を一般向けに提案した「HOUSE VISION」(2013年3月にお台場で実施)というイベントを紹介した。


 同イベントでは、例えばHONDAと建築家の藤本壮介氏が「移動とエネルギー」をテーマとしたスマートハウスを提案。コージェネレーション(家庭用発電機関)で太陽熱を電気に変え、発電・蓄電を行う。さらに、UNI-CUBという1人の乗りの椅子型車を使えるようにスペースを配慮。部屋を三層のレイヤーで分けて、敷居の外と内を自由に行き来できるようになっている。


 一方、無印良品と建築家の坂茂氏は「家具の家」を提案。これは家具が家を支えて柱などを極力なくす構造にすれば、家の中をより無駄なく使うことができるという発想から生まれたもの。無印良品の収納のノウハウを用いることで、例えばスプーンの収納1つとっても、家の構造と密接に関わっているコンセプトになっている。


 原氏は都市が計画的につくられるものではなく、人々の欲望が形を成したものとなっていると指摘。そのため、家をつくる側として人間が正しい知性を身につけること(=欲望のエデュケーション)が必要であるとした。原氏は「HOUSE VISION」の取り組みのように住む人のニーズを突き詰めて、身近な家に可視化することで、家をつくる側の“住宅リテラシー”を高めていくことを提案。こうした提案をアジアの各地でも行っていく構えだ。

武蔵野美術大学教授 原研哉氏   千葉大学教授 岡部明子氏
武蔵野美術大学教授 原研哉氏   千葉大学教授 岡部明子氏

ジャカルタ・チキニの事例


 千葉大学工学部教授の岡部明子氏は、チキニというジャカルタのスラムにおける建築プロジェクトについて紹介した。これはジャカルタの現地に住まう人やインドネシア大学と協力し、研究室の学生が実際に現地で建物を建てて住むというもの。日本人の学生が実体験として建築物をつくることが、建築を学ぶ上で大きな意味を持つとしている。


 当初はブランコを住民と学生が協力してつくるなど部分的な介入に留まっていたが、どうすればより住みやすくできるか提案し、実際に建築物をつくるまでに発展していったとのこと。ジャカルタは高密度化した都市内集落(カンポン)があるという特色をもつ。岡部氏のグループはこのカンポンをいかしつつ、「環境への負担を低く保ちながら、生活の質を上げる」ことに取り組んだ。


 まず、カンポンにある火事で焼失した跡地に、図書室兼子どもの勉強部屋に使うため、小さい家を建てた。さらにカンポンを形成する家の壁を白く塗り、建物と建物の間にわずかな隙間をあけた。ジャカルタは南中高度が高いためわずかな光でも部屋の中が明るくなる。また隙間を作ることで通風も確保できる。さらに屋根のこう配を利用し、雨水を利用できるような工夫もこらした。こうした取り組みを隣から隣へと認めてもらい、一軒の家から街全体へと広がるよう働きかけた。


 岡部氏はジャカルタの事例のように取り組めば、都市の形は大きく変えずに、コミュニティが維持され、環境にも配慮できると説明。環境負荷を増やさずに生活の質を上げることを、人口密度の高い巨大都市で成し遂げられれば、「都市が地球の友達になる」ことの1つの解決策につながるとした。


 家のつくり方に住む人が積極的に関わることで、そうした家々が形成する都市までも変えていくことができる。また、岡部氏の事例のように、環境の負荷を変えずに生活の質を上げるかことが重要な意味を持つ。次の世代にとって住みよい都市としていくためにも、このシンポジウムがもつ意味は大きい。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:都市は地球の友達か!? 地球環境とメガシティの過去・現在・未来
主催   
:人間文化研究機構総合地球環境学研究所(地球研)
開催日  
:2014年1月24日
開催場所 
:有楽町朝日ホール(東京都千代田区)

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