セミナーレポート
NICT、オープンハウスを開催
東大総長顧問の小宮山氏も登壇
2013年11月28日から29日にかけて、NICT(情報通信研究機構)が「オープンハウス」を開催。有識者による講演が行われた。そのほか、ネットワークの仮想化、光ファイバーのマルチコア化など、いわゆる「スマート」な社会の構築と不可分である、技術開発の最前線も紹介された。
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| 「プラチナ社会」構想を語る小宮山氏 |
「小宮山エコハウス」
オープンハウスの講演で先陣を切ったのは東大総長顧問の小宮山宏氏だ。小宮山氏は「産業革命の飽和」と「長寿化する人類」の次のステップである「プラチナ社会」の到来が必須である、という持論を展開した。
1人あたりの自動車保有台数が日本や米国で0.45、フランスでは2人に1人が持っている。この状況を小宮山氏は「産業革命以来の人工物が飽和状態にある」としている。平均寿命も産業革命前と現代では、ほぼ倍に伸びている。先進国で一般市民が豊かになり、21世紀前半でこれが世界に行きわたる。
「プラチナ社会」は、上記のように物質が満たされた次のステップ、「質」を上げる社会のことである。
小宮山氏はセメント1トン当たりの生産に必要なエネルギー量を例に挙げ、1960年から現在にかけてほぼ半減していることを指摘。さらに、ITを利用した電力制御システムであるスマートグリッドで効率的なエネルギー利用ができるとした。
家庭についても、「使用エネルギーをかなり削減できる」と訴えた。小宮山氏の自宅は「スマートハウス」にふさわしい造りになっている。外気の取り込みを工夫した高断熱の家「小宮山ハウス」で、光熱使用の80%削減を可能にしたという。
こうした無駄をなくした使い方によって「2050年には日本でもエネルギーの自給ができる」と述べ、効率的なエネルギー利用には、ITが欠かせないと結論付けた。
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| 髪の毛ほどの細さに19本の線が入るマルチコアファイバー | NICT職員の解説を受ける見学者 |
NICTの研究
小宮山氏による壮大な未来設計図は、果たして実現可能なのだろうか。理想を現実に近付ける、NICTの様々な分野の研究者が登壇した。
ネットワークシステム統合研究室の中内清秀氏は「M2M」、機械同士の通信について講演した。工場やスマートフォンのセンサーによって、「大気汚染のリアルタイム把握」などは、現在ある技術では可能だという。
ただ、目的が異なる多数のセンサーがネットワークにつながるために出てくる問題もある。単純にネットワーク上のトラフィックが増えるだけでなく、工場のセンサー、スマートフォンなど、それぞれで異なるネットワークの管理者と整合性をつける必要も出てくる。
これを解決するための方策として中内氏はSCN(Service-Controlled Networking)と呼ばれる、大規模センサーネットワーク制御の構築を研究している。また、遠方に分散している無線センサーから、必要なデータを効率よく収集するネットワークの構築技術も実現しているという。
加えて「ネットワーク自体の仮想化」も必要だ。実際には分散しているネットワークの基地局を仮想化でつなげる。これによってネットワークのつながりやすさを確保するのである。
髪の毛に19本の線を通す「マルチコアファイバー」
複雑な制御に加えて、増大するトラフィックも無視できない。これについてフォトニックネットワークシステム研究室の淡路祥成氏は光通信インフラの研究状況を講演した。現在、ネットワークをつないでいる光ファイバーは、「1本に1線(コア)」が通っている状態だ。これを「1本に複数コア増やす」べく、「マルチコアファイバー」と呼ばれる研究開発がNICTで行われている。
光通信には、通信制御するための電子技術、そして光技術の双方が必要になってくるため、難易度も高い。送信レーザーを強くすれば、コアが溶けてしまうため、緻密な制御が必要になる。その中で現在、7コアのファイバーは1秒間に100TB(テラバイト、1000ギガバイト)以上の通信に成功した。
淡路氏は「動画などWEB上のリッチコンテンツを利用したマーケットが広がる可能性を持つ」と、マルチコアファイバーのもたらす利点を述べた。
スマートフォンの簡単なGUIで見落としがちだが、私たちを取り囲むデジタルツールは高精密なものばかりである。「数字に弱いから」という理由で技術を敬遠せず、少しでも理解を深めれば、より一層便利に使うことができる。こうした研究施設の見学、1度はしておくべきだろう。
【セミナーデータ】
- イベント名
- :NICTオープンハウス
- 主催
- :NICT(情報通信研究機構)
- 開催日
- :2013年11月28日~29日
- 開催場所
- :NICT本部(東京都小金井市)
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