セミナーレポート

IPv6導入、待ったなしでも渋る企業

Internet Week 2013が開催

2013/12/26

 「今でしょ!」と言いたくなるような状態が続いている。2011年5月に「インターネット上の住所」であるIPv4が枯渇してから2年。IPv6への移行はまだまだ進んでいない。

 2013年11月25日から11月29日まで、東京・秋葉原で恒例の「Internet Week 2013」が開催された。25日のイベント「IPv6 Summit in TOKYO 2013」では、IPv6の現状について意見が交わされた。

産業のデジタル化を解説する今井氏
産業のデジタル化を解説する今井氏

現在はデジタル化の歴史「第3段階」


 郵政省が日本でのインターネット商用利用を許可した1993年から20年経った。現在、インターネットを巡るサービスは、どのように変わってきたのだろうか。


 シスコシステムズの今井俊宏氏は、「デジタル化の過程」を4段階に分けて解説。メールやブログなどで1対Nのコミュニケーションが可能となった情報自体のデジタル化を第1段階、Eコマースなど、ビジネスプロセスのデジタル化が第2段階とした。


 現在は「インタラクションのデジタル化」された第3段階にあるという。スマートフォンとTwitter、Facebook、LINEなどのSNSの連携に見られるような、ユーザ同士のコミュニケーションがより便利になった状態のことである。理想は第4段階、あらゆる機器が通信機能を持つ「産業全体のデジタル化」にあると述べた。


 今井氏は1人当たりのデバイス量も、かつてに比べて急激に増えていると指摘。シスコ関連会社の調査によれば、2003年の時点で世界の1人当たりのデバイスが0.08台だったのが、2010年には人口68億人に対してデバイス数は125億台。1人当たり1.84台と急激に増えている。


 その上で今井氏は「デバイスの現場からあがってくるデータをインテリジェンス、『使える情報』にする。このプロセスが重要だ」と述べ、その情報から行動を起こすことによってイノベーションが出てくると主張した。


 ただ、「あらゆる機器がネットワークに参加する」と言っても、PCではなくICカードに搭載されているチップのような小さい機器が双方向に通信する場合は、ひと筋縄に行かない。


 小さいが故に大きなバッテリーは載せられない。そのため、省電力性や低クロックで起動するCPU、低速度の通信能力が求められる。こうしたワイヤレス機器はIEEE(米国の電子機器標準を策定する学会)の規格「IEEE802.15.4」で策定されている。また、この規格でIPv6を使った通信は、Wi-FiやBluetoothと連動する「6LoWPAN(シックスロウパン)」と呼ばれるプロトコルで行われる。

IPv6の普及率を解説する小林氏   エンタープライズでのIPv6移行について議論された
IPv6の普及率を解説する小林氏   エンタープライズでのIPv6移行について議論された

実はクラウド側の導入が進まないIPv6


 一方、IPv4アドレスが枯渇しているにもかかわらず、IPv6アドレスへの移行はなかなか進んでいない。日本ネットワークイネイブラーの小林昌宏氏によれば、GoogleにIPv6でアクセスしているユーザは全世界の2%だという。


 ただ、海外での取り組みはかなり積極的である。中国は2015年までに2500万人をIPv6ユーザにする計画を打ち出している。ベトナムも2013年5月6日を「ベトナムにおけるIPv6デー」として国を挙げて盛り上げているという。香港ではエンドユーザ向けのプロモーション活動が行われている。


 一方の日本。企業側では、M&Aでグローバル化をしている企業以外ではIPv6導入に消極的な姿勢が目立つ。楽天の赤桐壮人氏は、IPv6でのサービス提供が進まないのは、コストメリットや売上との兼ね合いだという。「IPv6への移行リスクも考えられる。実際のコンテンツに反映するための説得材料がない」と述べている。


 「IPv6にしなくても何とかやっていけている」というのが、企業がIPv6移行を渋る本音であろう。ただ、デバイスが増えていく中で、IPv4の在庫をやりくりするのには限界がある。


 IPv6によって、ネットワークでM2M(Machine to Machine)が行われ、なんでもつながるインターネット(Internet of Everything)と呼ばれる環境は整いつつある。


 一方で既存のクラウドサービスでのIPv6移行は、実際にサービスインしている実環境に手を加える必要があり、なかなか進まない。どこかで区切りをつけなければ、目指すべき「スマート」な環境の構築には至らないだろう。

(中西 啓)

【セミナーデータ】

イベント名
:Internet Week 2013
主催   
:JPNIC(日本ネットワークインフォメーションセンター)
開催日  
:2013年11月25日~29日
開催場所 
:富士ソフトアキバプラザ(東京都千代田区)

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