セミナーレポート

地方自治体のICT活用事例を紹介

地方自治情報化推進フェア2013を取材

2013/12/16

 地方自治情報化推進フェア2013が2013年11月13日から14日にかけて、東京ビッグサイトで行われた。地域の課題を解決するために地方自治体が取り組むICTの活用について、展示や講演が行われた。

会場で展示していた災害対策支援システム
会場で展示していた災害対策支援システム

教育にICTを活用するつくば市


 会場では災害など緊急時にも活用できるシステムが展示されていた。NTTコムウェアは、災害情報について「どこで」「何が」起きているのかをデジタルシート(タッチパネル)上にデジタルペンで直接書き込むことで、自治体がリアルタイムに意思決定を行える災害対策支援システムを展示。端末を複数台連携すれば遠隔地でも情報共有ができるというものだ。


 シンポジウムでは、自治体のICT活用事例が紹介された。つくば市の市原健一市長は、同市でのICT活用について講演した。


 つくば市は約300の研究機関があり、学位の所有者が約2万人もいる研究学園都市。つくば市では地域特有の科学技術の集積を利用し、地域の活性化を図るため、いくつかの特区を設けている。その1つが「ロボット特区」だ。セグウェイに代表されるようなモビリティロボットの実証実験を行えるように推進。さらに、障害者やお年寄りの身体機能を補助するロボットスーツ「HAL」の研究支援を行うなど、自治体が研究機関と常日頃から連携をとっている。


 また、つくば市では1977年からICT教育に着手しており、30年以上も歴史があるのが特長。「スタディノート」と呼ばれる電子黒板やテレビ会議システムを利用した家庭学習システムを普及させてきた。また家庭でもeラーニングを使って学習するシステムを導入し、入院中の子どもや不登校児のために活用している。

つくば市長 市原健一氏   富山市長 森雅志氏
つくば市長 市原健一氏   富山市長 森雅志氏

GISを活用した富山市の事例


 一方、富山市長の森雅志氏は富山市におけるICT活用例を挙げた。富山市は18万人が住んでおり、富山県の行政の中核を担う重要な都市だが、人口が減少し、行政のサービスが届きにくい地域も増えている。そのため富山市では「公共交通を活性化させる」「沿線に徐々に誘導する」「中心部を魅力的なものにする」という施策を同時に進めている。市が推奨する居住エリアに補助金を出しながら緩やかに人を誘導し、住みやすいまちづくりを目指している。


 富山市はこうした施策をスムーズに進め、住民の理解が得られるよう、ICTを活用したデータを用いた情報開示を行っている。住民基本台帳や、都市施設、地価調査などのデータを地理情報システム(GIS)上に表示することで詳細な人口分布や人口移動・高齢化などの可視化を行った。森氏は「科学的な根拠を加味すれば政策にも役立つし、市民にも説得力を持って話ができる」とした。


 こうしたGISを用いたデータは様々なところで活用されている。高齢者や障害者が自宅のような生活を送ることができる施設「富山型デイサービス」についてもGIS上に表示することで、どこの地域が手薄なのかを把握した。その結果、2012年度には富山型デイサービスが47か所もありながら、市の中心部には一か所もないことがわかった。そこで補助金を増加し、施設を中心部につくるなどの施策につなげられたという。


 また富山市は総務省の「ICT街づくり推進事業」を受託。駅や街中でデジタルサイネージなどのICTを活用したインフラを用いて市民に役立つ情報を配信し、歩行者の動態情報を収集・分析して活用している。森氏はこうした取り組みにこれからも一層力を入れていきたいとしている。


高齢者を支えるICT・三鷹市の事例


 地方の都市だけでなく、東京の自治体でもICTはまちづくりに生かされている。三鷹市は、高齢化比率が全国を下回っているものの、1人暮らしの高齢者が多いという特長をもつ。そのため地域の住民同士が支え合うため、市民が市内をパトロールしたり、高齢者を地域住民が見守っていく「コミュニティ創生事業」を展開したりしている。


 三鷹市長の清原慶子氏はこうして地域で築かれる「リアルなコミュニティ」が、ICTの活用でより強固なものにできると指摘した。三鷹市では非常時における帰宅困難者の支援のため、駅前Wi-Fiを利用したサービスの検証を実施。また1人暮らしの高齢者とケアマネージャー・介護福祉士をタブレット型端末でつなぎ、安否が確認できるよう実証実験を行っている。


 さらに清原氏は社会保障と税に関する共通番号制度の導入について言及した。共通番号制度の導入で、税や国民健康保険、介護保険などの手続きが住民にとってより使いやすくなることに期待が集まっている。これらの個人情報を有効に活用し、サービスの向上や事務の効率化を実現するため、三鷹市では災害時の事業継続計画(ICT-BCP)の策定や、個人情報保護の強化、ヒューマンエラーを防ぐための仕組みづくりを行っている段階だ。


 つくば市・富山市など、地方の都市におけるICTを活かした取り組みを把握することができた今回の地方自治情報化推進フェア。地方の都市がICTを活用し、地域の活性化につなげていく可能性を肌で感じることができた。

(山下雄太郎)

【セミナーデータ】

イベント名
:地方自治情報化推進フェア2013
主催   
:財団法人地方自治情報センター
開催日  
:2012年11月13日~14日
開催場所 
:東京ビッグサイト(東京都江東区)

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