セミナーレポート

進む農工連携とICT化

海外の農業製品に勝つための研究と現状

2013/12/12

 TPPを目前にして、日本の農業界は様々な選択を迫られている。その中で、日本の持つ高い機械技術、ICT技術を農業に生かすことで、競争力を高める試みが近年、進められている。2013年11月8日に東京ビッグサイトで、第6回テクノフォーラム「オーダーメイド農業技術の生産技術開発」が行われ、一般財団法人の機械振興協会技術研究所主催の元、農業法人からの実例紹介があった。

現在の農業分野には機械やバイオなど他業種から参入した法人が複数ある
現在の農業分野には機械やバイオなど他業種から参入した法人が複数ある

他分野からアプローチするベンチャー企業


 熊本県で大規模のベビーリーフ栽培、販売を行っている果実堂の栽培管理部部長・高瀬貴文氏は、自社で行っているベビーリーフ栽培の取り組みについて紹介した。


 近年、スーパーなどの食料品店で頻繁に見かけるようになったベビーリーフ。特定の野菜の種類を指す言葉ではなく、発芽後10日~30日程度で本葉が生え始めたばかりの野菜の若い芽全般を指している。


 バイオベンチャーとしての起業した同社は、ベビーリーフの栄養価や健康への作用まで踏みこんだ研究も進めつつ、最適な条件を科学的に分析することでベビーリーフ生産の効率化を目指している。例えば、これまで経験則や勘で語られていた土壌の質や肥料の濃度についても、最適な土壌pHや硝酸窒素の濃度といった条件を調査することで、科学的によい条件の土地づくりを進めている。さらに、こうした生産工程における効率化だけでなく、パッキング工場なども自動化、機械化を徹底することで、土地面積当たりの生産性を最大限高める手法も行われている。


 こうした機械化・科学的な分析による技術の集積は、オランダが非常に先進的だ。オランダは、日本と比較して土壌の質も悪く、曇天が多いにも関わらず、世界有数の農産物輸出国である。オランダの農業はIT化・機械化が非常に進んでおり、先進的な農業で高効率の農作物を生産することで、農産物輸出第1位である米国に対抗できる農業立国を可能にしている。


 高瀬氏は「農業はものづくりである限り、技術力が一番重要だ」と話し、「これからの日本の農業が勝てる農業になるには、機械化やビッグデータ解析、農地の集約化が求められる」として、技術における改革が求められると話した。

果実堂栽培管理部部長 高瀬貴文氏   ドラム式栽培機械によるスプラウト栽培の様子。土地面積当たりの収穫量が高い
果実堂栽培管理部部長 高瀬貴文氏   ドラム式栽培機械によるスプラウト栽培の様子。土地面積当たりの収穫量が高い

IT・機械と農業の融合


 植物生産機械の開発などを行っているオズスペック代表取締役の津田晴樹氏は、発芽したばかりの新芽「スプラウト」の生産品質管理を行う機械について紹介した。スプラウトとは、食用の植物のうち発芽したばかりの芽や茎のこと。有名なスプラウトと言えば「もやし」がある。もやしは緑豆のスプラウトにあたる。


 スプラウトは育成のサイクルがとても短い。種子を洗浄して、発芽条件を整えてから収穫・洗浄するまで、栽培期間を含めてもわずかに2~7日。大量に栽培して出荷するためにはこれらの工程を効率的に行い、年間に何サイクルも回せるようにする必要がある。


 津田氏は「スプラウトの生産品質管理では栽培前の種子の洗浄・除菌や実際の栽培方法、また収穫後の洗浄などの技術が求められる。こうして培われた技術は、栽培日数の短縮や生産量の増加、食中毒の対策など、スプラウト生産以外の品質管理にも応用できる」と話す。津田氏は機械工業などの分野出身であり、今後さらに農業機械の改良を進めていくことで「スプラウトよりも栽培期間の長いベビーリーフなどサラダ菜全般の生産システムを構築していきたい」と展望を話した。


 最後に今回のシンポジウムを主催している機械振興協会技術研究所から、技術開発センターの飯塚保氏が登壇した。飯塚氏は講演の中で、研究所が進める農工連携と、ものづくり企業の支援活動について解説した。機械振興協会技術研究所は、農業分野に限らず、材料技術、装置技術、加工技術やシステム技術など幅広く、ものづくりを行っている企業の支援をしている。


 研究所では、農と工の連携を進めるために、農業法人の現場を観察して工業側の視点から現状の問題点の分析と抽出を行う。一方で、機械関連企業の保有技術とのマッチングと実際に農業へ応用するために、研究所の敷地で実施可能な実験農場、栽培収穫装置の開発、製品の展示を行っている。


 飯塚氏は、さらに工のみならずIT分野との連携も視野に入れており「経験と勘からの脱却するためのデータ蓄積、生産管理するためのソフトウェア、オープンイノベーションによる技術開発ロボット技術のITC化など2次産業の技術を生かして1次産業の農業を発展させていきたい」とした。


 日本の農業には高品質の農産物を育てるノウハウがある。こうした機械化・自動化による効率向上と高品質のノウハウが融合することで、競争力の高い日本の農業基盤が作り上げられていくことに期待したい。

(井上宇紀)

【セミナーデータ】

イベント名
:テクノフォーラム オーダーメイド農業の生産技術開発
主催   
:機械振興協会技術研究所
開催日  
:2013年11月8日
開催場所 
:東京ビッグサイト会議棟(東京都江東区)

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